第13話 施設探索

「はしゃぎすぎてしまった」


 大神泉でかれこれ2時間程泳いでしまった。

 滝のところまで泳ごうとして、熱くて我慢出来なくなったら、ぬるいところへ引き返して、身体が冷めたら、さっきより滝の近くまで泳ぐ。

と繰り返していたら2時間もたっていた。


 ステータスを確認すると体力と魔力が20ずつ上昇していたのとずっと泳いでいたので筋力と敏捷も少し上がっていた。

そして新しく〈熱耐性〉と〈水泳〉というスキルを覚えていた。



〈熱耐性〉Slv1

熱気によるダメージを緩和する。

スキルレベルが上がると緩和するダメージ量が増える。


 滝の近くが熱かったけどそれを我慢して滝に近づいていたから覚えたのか



〈水泳〉Slv1

水中での行動がしやすくなる。

スキルレベルが上がると水中での行動がよりスムーズになり、息が長続きするようになる。


 泳いだから覚えたんだな、分かりやすい。


 脱衣場から出てロビーに戻って回りを見る。

 入ってきたときは魔力切れの症状が辛かったのでじっくり見れなかったのでひとつひとつ確認していくとしよう。


「女湯は入れないから向かいの暖簾を見ていこう」


 スライムはロビーにいない、まだ女湯に入っているのだろうか?


 男風呂の向かいにはいくつかの暖簾がかかった入り口があり、それぞれの暖簾には岩、雪、砂、霧、日、溶、毒のと書かれている。

 それぞれの暖簾の隣に中の特徴が書かれた看板が立ってあるので中に入らずに内容を知ることができた。


 岩と書かれたところはいわゆる岩盤浴、暖かい床の上に寝転び身体の芯まで温めるという風呂。


 雪のところは雪に埋もれて身体を冷やすという、夏に嬉しそうな風呂だった、寒いところに住んでいる種族やモンスター用でもあるのかな?


 砂のお風呂はそのまま砂風呂だった、前世では入ったこと無いので少し気になる。


 霧の暖簾のところはミストサウナだ、温かい霧が充満しているのでその中で身体を温める。この霧にも回復効果は含まれているようだ。


 日とは日光浴のことを指していた。芝生の上に寝転がって柔らかな日差しを浴びるらしい。よく寝れそうだ。


 溶の看板には真っ赤な液体がぼこぼこと煮たっているところが写っている。正直溶岩にしかみえない、たぶん溶岩浴と言いたいのだろう、火属性のモンスターが喜ぶかもしれない。


 毒と書かれたところは紫色のお湯に入る風呂と紫色をした砂に埋まる風呂の2種類が写っていたが、入りたいとは思えない、毒を持ったモンスター用かな?


 色々な特徴があるお風呂ばかりだが、一部のお風呂は入ると体力回復どころかダメージを受けそうだ。

 試しに各お風呂の暖簾をくぐってみたところ暖簾をくぐった先は短い通路と浴室しかない。

更衣室はなく、その代わりに暖簾をくぐったタイミングで着ていた服が岩盤浴施設でよくある館内着のようなものに入れ替わっていた、お風呂の種類によって館内着の材質も違っていたので溶岩で燃えたりしないのだろう、服は。


 ある程度特殊風呂コーナーは見終わったので、次はロビーの入り口から見て奥にも何かあったはずなので、そちらを見に行くことにする。


 ロビーの奥側は休憩スペースになっているようだった。特殊風呂側から見ていくと、まず卓球台が並んでいる。

10台程並んでいて、その上にはそれぞれラケットとピン球が入ったカゴが置いてある。

 壁際に卓球のルール説明が書かれた看板と自販機がある、自販機では色々なラケットが売られている。どれも卓球台の上に置いてあるものより良さそうなものばかりだ、ラケットのしたには3000G等の値段が書かれているがぴんからきりまであって素人の俺には値段の差がわからない、ちなみにGはゴールドと読むようだ。

 ラケットはDPでも買えるようになっておりゴールドとの比率は大体100G=1DPになっている。

 マイラケットを欲しい人はここからどうぞってことかな?


 その隣には畳が敷かれたスペースがある、い草の匂いが心地いい。

 スライムがここで転がっていた、そこにいるという意味での、転がっているではなく、コロコロと転がりながら畳の上を移動している、畳の感触が気に入ったようだ。

畳スペースの端には本棚があった、中に本は入っていなかったが自分で持ってきた本をここで読んで置いていけるのだろう。


 次のスペースにはチェスやリバーシ等のボードゲームがおかれた机が並んでいる。中にはチェスと双六が合わさったような見たことの無いものもある。

 それぞれ説明書が机の上におかれているが、対戦形式のものが多く、ひとりでは遊べない。

モンスターが増えたら相手してもらおうか?


 その隣は食事スペースのようなところだ。

4人がけのテーブルと椅子のセットがいくつか並んでいて隅にはカウンターがある。

 カウンターの隣には食券用の自販機と水が入っているであろうポットが並んでいる。

 カウンターの奥にスペースがあったが調理場のようだ。

 調理場には食器も一通りあるし水やガス?は通っていて調理機器は問題なく動くが人もいなければ食材も無いので食券を買ったら自動でカウンターから料理が出てくるような夢のような機能はついていなかった、食券自販機のボタンも全て白紙だ。

結構立派な調理場だったので夢を見すぎたようだ。


「残念だな、大神泉でも空腹は回復してくれなかったんだよな、泳いだ分余計にお腹すいたし」


 材料を持ってきて自分で作るという選択肢もあるが、温泉には食べ物が入ったリュックサックは邪魔になると思い持ってきていない、わざわざ取りに戻るのも面倒だ。


「DPを消費して出すか」


 メニューを操作してダンジョンメニュー中からDPメニューを選択する。

ここではDPに関する物事を操作出来る、他人へのDP譲渡や魔力、素材のDP変換、そしてアイテムのDP交換も出来る。


「色々あるけど、前世に関係するものはちょっと高いな」


 DPで交換できる食べ物でパンや串焼き等の食べ物は安く、寿司やコンビニおにぎり、チョコレートは高い。

安いものは1DPから高いものは150000DPのものまである、

一番高いのは高級チョコファウンテンというものだ。

 意外とステーキや海鮮盛り合わせよりコンビニおにぎりやお子さまランチの方が高い。カレーは安めだったのでこの世界でもあるのかもしれない。

それと全体的にしょっぱいものよい甘いものが高いようだ。


 俺は泳いでお腹がすごく空いていたので、10DPのざる蕎麦を2つ出した。

 するとスライムが片方を自分の分だと思ったようで、こちらに来た。そばは下手にアレルギーだときついので5DPのパン盛り合わせAを出して渡した、惣菜パンや菓子パンが5つトレイに乗ったものだ。

 スライムがどれだけ食べるかわからないか、身体の大きさから判断するなら十分なはずだ。


 飲み物もほしかったので、カウンターの隣にあったポットを持ってきた、ダンジョンの中なら自由に持ち運んでいいらしい。


 そしてそのポットには神泉水と書かれたプレートが貼り付いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る