第13話 予想外の結末2


「ま、まぁ何事もなく逮捕されてよかったじゃない」



 脱力して座り込む俺に向かって服部さんが力なく笑う。昨日あれだけ作戦練ったのに……準備とか頑張ったのにこれで終わり?

 いや葛森が逮捕されて良かったけどさ、俺もしかしたら死ぬかもって思って凄い悲壮な覚悟決めたんだよ?貞代たちの前でも結構カッコつけちゃったし……あ、そういえば貞代たちはどこだ?

 ふと気配を感じて視線を上にあげるとマンションの天井に貞代たちが張り付いていた。その顔はニマニマと嗜虐的な笑みを浮かべている。

 弄るネタを見つけたと言わんばかりなその姿は実に悪魔的であった。



『あれれ~? そういえば玲也さん昨日なんて言ってましたっけ? 二人とも覚えてます?』


『なんか中二病の子がメッチャ格好つけてる感じだったの。あれ絶対自分に酔いしれてる感じだったの』


『再発……中二病の再発……不治の病……』



 思い出した瞬間恥ずかしさが込み上げてきた。うわぁ……めっちゃ恥ずいわこれ。

 俺もうお婿に行けない……。



『ふっ……、今まで俺に解決できなかった心霊事件はない。だがさすがの今回は俺もヤバいかもな』


『この事件にはきっと何か裏があるに違いない。だが安心しろ、この俺が必ず真相を突き止めてみせるぜ。神社生まれの名に懸けて!』


「お、お前ら……!」



 俺が昨日の事を思い出して羞恥で悶絶していると、貞代たちはニヤつきながらなんと服部さんの前で昨日の俺の言動を実演し始めたのだ。

 しかも俺が言っていたポーズと表情を完璧に再現している。こいつら悪魔か!?



「おい止めろぉ!! 死にたくなるだろうがっ!!! 」


「鳥塚君、そんなこと言ってたのか! 面白い子だねぇ。ああ、おじさんもそんな時代があったから気にしない方がいいよ」



 俺の目の前で貞代たちだけでなく、服部さんまでもが腹を抱えて笑い始めた。

 くっそぉ……他人だからって容赦ないなこいつら。まあいいか、辛気臭いツラされるよりも笑顔ばかりの方が100倍いい。

 俺が諦めの境地に達していると、貞代はひとしきり笑って満足したのか、息を整える。その顔はどこかスッキリしていた。



 どうやら俺を弄るのに飽きたみたいだ。よかった、これ以上弄られたら本当に死んでいたかもしれない。

 俺が安堵の息を吐いていると、貞代は笑顔で手を差し伸べてくる。

 少し不貞腐れてその手を掴んで立ち上がると、貞代は俺をまっすぐに見つめて来た。その瞳には強い意志を感じる。

 そして力強く、それでいて爽やかな声色で言うのだ。


 ―――玲也さん、私達を助けてくれてありがとう


 それを聞いて、俺の心の中に何か温かいものが広がるのを感じた。

 全ての苦労が報われたような気がして、助けて良かったと心の底から思える。

 そう言えば俺って心霊関係で誰かを助けても感謝されたことって今までほとんどなかったなぁ。そうか、感謝されるってこんな気持ちになるのか……。



「お、おう……」


 つーかさ、急にお礼言われると照れるじゃねーか。

 俺は顔を赤らめてると、貞代たちがからかってくる。



『あれあれ~照れてるんですかぁ?』


『童貞……女慣れしてない……圧倒的童貞力……!』


『童貞乙! なの』



 うるせえ、お前らは黙ってろ。

 ちくしょう、こいつらやっぱり苦手だ。さっさと成仏しやがれ!

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