第12話 予想外の結末


 翌日、夕暮れで茜色に染まるマンションの前には大量のマスコミと警官が押し寄せていた。理由は簡単で、俺が昨日のうちに服部さんを通じて警察に『人骨が見つかった』と通報したからだ。

 地下ピットの床蓋は専門工具が無ければ開かないので入り口を貞代たちに開けてもらって、彼女らに人骨を回収してもらう。

 それを開いた地下ピットの入り口に置いて服部さんに通報してもらったのだ。



 人骨が見つかれば警察も動かざるをえまい。もちろんこの程度で葛森が終わると思っていない。あれだけ得体の知れない怨念を纏い、警察にバレないように連続殺人を続けているのだ。一筋縄ではいかないだろう。

 なので俺は次の手を打つために行動しようとマンションのエントランスを出ようとした時、服部さんが慌てた様子で走ってきた。

 その顔は青ざめており、足下もふらついている。どうしたんだ? 

 まさか葛森が何か仕掛けてきたのか!?



「服部さん。大丈夫ですか!?」



 俺は慌てて服部さんの肩を掴んで引き寄せると、少し落ち着いたのか服部さんは深呼吸をして口を開く。



「た、大変だ……鳥塚君!」


「落ち着いて! 一体何があったんです?」



 服部さんを落ち着かせるように語り掛けると服部さんは一呼吸おいて、そして震える声でぽつりと呟く。



「葛森が……逮捕された。なんかその……すっごいあっさり捕まったらしい」


「え……?」



 あれ、あれだけヤバそうな邪念を纏ってた葛森があっさり捕まった? 

 あいつ最低でも10人は殺している連続殺人鬼だぞ?

 今まで見つからなかったということは相当用心深いと思ってたんだが……これはどういうことだ?  俺が首を傾げていると、服部さんはさらに続ける。



「なんか地下ピットって空間に地面が一部剥き出しの所があって、そこに遺体が埋められたらしいんだけどさ。そばに人骨を使った祭壇みたいなのがあってそこに葛森の指紋が残ってたらしいんだよ」


「え、マジっすか」



 証拠を残すなんて随分と杜撰だな。今まで良く捕まらなかったもんだ。

 いや、ちょっと待て。服部さんは今何と言った? 



「服部さん、さっき人骨を使った祭壇があったと?」


「ああ、友人に警察とズブズブの関係の……いや、仲のいい記者がいてね。そいつから教えてもらったんだ」



 人骨を使った祭壇……気になるな。それが葛森の妙な気配の原因か? 

 しかしちゃんとした呪いなら俺が気づくはずなんだけどな。

 とにかくあの葛森がこれで終わるとは思えない。気を引き締めねば!

 そう決意してると服部さんの握りしめていたスマホが鳴る。誰かからメールが来たようだ。服部さんがスマホを確認すると、俺に何とも言えない表情を見せる。

 なんだ? 一体何が……?



「……さっき警察が家宅捜査したら葛森の部屋から凶器や被害者の一部が見つかったらしい。逮捕は確定っぽいよ。なんかその……今まで奴が捕まらなかったの、用心深いんじゃなくてただ悪運が強かっただけなんじゃないかな?」


「嘘ぉぉっっ!?」


 予想外の結末に俺は立ち尽くすしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る