第14話 祭壇の秘密
後日、ニュースでは葛森が逮捕されたことが大々的に報道されていた。葛森は犯行を否認しており、警察が調査を進めているらしい。
また葛森の住んでいたマンションの一室からも被害者の骨が発見されたらしく、警察は連続殺人事件の犯人として葛森を疑っているようだ。
まぁここから逆転なんてさすがに不可能だろう。
俺は来週から始める大学生活に心を馳せていた。今度こそは真面目に勉学に励みたいものだ。そう思いながら窓の外を見ると、そこには雲一つない青空が広がっていた。
空を見上げると、そこには一羽の鳥が飛んでいた。それはまるで俺の輝かしい未来を象徴するかのように悠々と空を飛んでいる。
「よし、もうちょっと予習がんばるか!」
空を見上げて気分が良くなった俺はちゃぶ台の上に広げたままの参考書に再び目を落とした。
◇葛森side
「なんで俺がこんな目に……」
ここは留置場で俺は一人項垂れていた。
取り調べはとうに終わっている。殺人容疑ではなく傷害罪で逮捕されており、既に検察は起訴の手続きを進めているらしい。
なぜだ!? なぜこうなった! 俺は守られてるんじゃなかったのか!?
アレのおかげで今までうまくいきっぱなしだっとのによ!
いや、うまくいくなら俺が捕まるわけがない。つまりアレは欠陥品てことだろ?
何だよあれ、全然使えねぇじゃないかよ
俺の中で使えないアレに対する怒りと憎しみが葛森の中で渦巻く。
アレとは実家でやってる妙な祭壇をパクったモノのことだ。
俺の一族は今までの人生において、自分の都合のいいように物事を運んできた。
地元じゃ金と権力を唸るほど持ってる名士ってやつだ。
親父や祖父曰く、すべては祭壇のおかげらしい。初めて俺が祭壇を見たのは小学生に入ってからで、当時は薄気味悪いって思ったもんだ。
なにせその祭壇は動物の骨で組まれてんだからよ。
おまけに年末年始に親族総出で祭壇を囲んで動物を捧げ、感謝の言葉を送るのだ。
まさにカルト教団みたいだろ?
アホみたいだから親族が止めるのも無視して俺は東京に出てきた。
俺には1人でやっていけるだけの自信があったからだ。
だが地元を離れてからは何故か苦労の連続だった。
今まで簡単に出来たはずの事が出来ないのだ。
身体や頭の動きが妙に鈍く、求めていた結果が手に入らないことに俺は苛立ちを募らせていた。
ある日のことだった。
適当に付き合っていた1人の女と揉め事になり、そいつは階段から転がり落ちて
死んでしまったのだ。もちろんワザとじゃない。
なんで俺がこんな目に……。
死体の前でそう考えていた俺の脳裏に祭壇の事が浮かび上がったのだ。
おそらく当時の俺はおかしかったのだろう。かなり酒も飲んでいたしな。
俺は酔っぱらった頭で死体を担ぐと、ガレージへと移動して、彼女の死体で祭壇を作った。
故郷で見た祭壇を思い出し、再現したモノはかなり禍々しかった。
殺人に死体損壊、刑務所行きは免れないだろう。自棄になった当時の俺は家で酒を飲みまくってたな。
だが不思議と騒ぎにならず、それどころかそれ以来良いこと尽くめだった。
頭脳は冴えわたり、幸運に恵まれ、全てが思った通りに行く。
まるで何かに守られているようだった。
その時になって俺は祭壇の力を信じ始めたのだ。地元の家族の言ってたことは本当かもしれないと。
数か月ほど全てが順調でサイコーな毎日が続いていたが、ある日何かが切れた気がした。直感で分かった。祭壇の守りが尽きたのだと。
どうするか考えた俺の脳裏に親族と行う年末年始の光景がよみがえる。
動物を捧げていたあの儀式だ。
その時俺は思ったのだ。
――動物を捧げてあれなら人を捧げた方がリターンがデカいんじゃないか?
そう思った俺は目についた女を殺すようになった。
狩りみたいでスリルがあって楽しかったのを覚えている。最初は面倒がなければ誰でも良かったが、次第に俺好みの美人をハントする楽しみに目覚めたなぁ。
殺した女性で祭壇を作ると、全てが思い通りに上手くいった。
マジでサイコーの気分だったな。
企業した会社も順風満帆で、俺は祭壇に守られた状態を無敵モードと呼んでいた。
だが無敵モードが崩れるとすべてがうまくいかなくなる。
それが分かってからは俺は定期的に人を生贄に捧げることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます