第15話 依頼



俺はそれを見ながら少し考えていた。

いったいなんだろう?

トラのような人?

人のようなトラ?

う~ん・・わからないな。

テレビ画面で映像が流れるわけもないし・・。

そう思っていると、すぐに次のニュースを言っていた。

このキャスターたち、切り替えが早いな。

俺はそこに感心した。

やはり新型コロナウイルスが依然として収まる気配はなく、世界では広がる一方だという。

経済の流れとの関連もあり、今後の状況をみながら対処していくそうだ。

悠長な話だな。

ガツンと確実にお金を度外視して、完全に抑え込まなきゃ無理だろう。

少し成功しかけていたのに、種火が残る状態で通常の社会活動を再開させたからな。


俺は今日のゲスな奴等の死亡事件が流れないか見ていたが、しばらくして流れた。

全国版トップでは流れなかった。

なるほど、それほど大きく扱われているわけではないようだ。

死亡事件が発生し、心臓が破裂していたというニュースだった。

それに医者が自分の研究室で死んでいたというのが、少し長く配信された程度だ。

ただ、医者が銃を持っていたことは流れていないな。

また明日から大きく騒がれるかもしれない。

俺はそう思い、就寝。


しばらくするとフト目が覚めた。

目が覚めたと思う。

身体は動かない。

これって、金縛りか?

確か金縛りって、脳が覚醒して身体は寝ている状態だよな?

誰かが言ってたぞ。

そして、考えが脳の中だけでグルグル回るから怖いイメージを連想して、それが拡大されて怖い体験をしたような錯覚受けると・・。

しかし、怖くはないよな?

俺がそんなことを思っていると、俺の視界に白い物体が見えたような気がした。

!!

やはり、違うのか?

ちょっと怖いな。

幽霊ならあっちへ行ってくれ~!

声にならない声を頭の中で叫びながら、俺は動けない身体を動かそうとしていた。

白いフードを被ったものが近づいて来る。

『だ、誰だ?』

俺はそう言葉にならないが、言ったような気がする。

『君は、私のデス・ソードをうまく使えているようだね。 何よりだ』

!!

何? 

私のデス・ソードだと?

そうか・・あの死神だか天使だか言ってた人だな。

前は黒いフードだったような気がしたが、忘れたな。

俺はそんなことを思ってみた。


『君に頼みがある』

白いフードを被った人は言う。

俺はその言葉を聞きながら、考えてみれば俺の望みを叶えてくれた恩人みたいな人だ。

断る理由がない。

『どんな頼みなのでしょう?』

俺は聞いてみた。

『うむ。 君たちの言葉でいえばイギリスという国だ。 この国でもう一人、デス・ソードを持った人間がいる。 この人物を消して欲しいのだ』

『俺に・・倒せというわけですか?』

『そうだ。 私が行ってもいいのだが、君にやってもらいたいのだ。 頼めるだろうか?』

白いフードを被った人は言う。


俺は少し考えていた。

まずは現状。

こんなもの凄い能力を得られたのはすごくうれしい。

そして、その代償を今まで請求されていなかった。

無条件でこんな能力はないだろう。

ゲームじゃない。

あまり深くは考えないまでも、そんなことを考え答える。

『・・わかりました。 やってみます』

『そうか。 よろしく頼む・・君は、何も聞かないのだな。 理不尽な要求だとは思わないのか?』

白いフードを被った人は言う。

『よくわかりませんね。 ただ、こんな能力をもらったのです。 今の私は普通ではありません。 まぁ、いろいろ考えてみてもわからないし、それにあなたがこの能力をくれたのは間違いない。 あなたが困っているようですし、このイギリスですが、おそらく斬り裂きジャックと呼ばれている人物でしょう。 私と同等の能力となると脅威を感じますが、やってみます』

『・・・』

白いフードの人は何も言わずに、そのまま消える。

ただ、消えながらデス・ソードが導いてくれるだろうということだった。


その消えるのと同じくして、空間に音が戻ったような感じがした。

時間を見る。

午前5時だ。


さて、起きるか。

早速イギリスに行かなければいけないな。

俺はそう思い、軽く身支度をする。

食事もそこそこにして、関空へ向かった。

電車での移動はスムースに進む。

新型コロナウイルスのニュースは、頻繁に耳にするが交通状況はそれほど変化しているような感じはない。

超満員というのはないが、相変わらず人は多い。

これで爆発感染していないところを見ると、何か抑制的に働いている因子があるのだろう。

それは専門家に任せればいい。

自分はできることをするだけだ。

関空に到着。


ネットで予約してあり、すぐに乗り場まで移動できる。

出発まで2時間ほどだ。

俺はロビーで待っている間、流れている映像モニターを見ていた。

ニュースが流れている。

海外のニュースやら日本のニュースやらが矢継ぎ早に配信されていた。

そんな中、臨時ニュース速報が入った。

警報音のような音が流れて、待合室の人たちが画面を注目する。

ピコーン! ピコーン!

『・・ニュース速報をお知らせします。 先ほど入った情報に寄りますと、中国チベットの辺りで武力衝突が発生しました。 それに伴って香港、インド国境でも未確認情報ながらも、武力衝突が発生したとの情報があります。 この方面へお出かけの方は十分に注意してください。 繰り返します・・・』


俺はニュースを聞いていて、お出かけの方って、行くのかよと突っ込んでしまった。

普通の会社なら行かせないし、現地にいる邦人は即時帰国だろうと思っていた。

それに政府がすぐに声明を発表するだろうと思いながら見ていた。

5分もせずに、政府からの発表があった。

早い対応だなと感心しながら見ている。

ニュース速報と同じ内容を繰り返して、渡航制限を発動すると言っていた。

おぉ、まともな対応だなと感じた。

・・・

・・

そんなニュースで時間が費やされ、俺のイギリス行きの搭乗手続きが開始されるようだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る