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「いいよ。今言ったのは、最後になるに連れて確定に近い。これは予め計画されたもので、日本人を含めた東アジア系の指名手配であり、犯人は女、というのはほぼ百パーセント。


 まず検問についてだけど、これは抜き打ちで行わななけば意味が無い。

 情報漏洩によって犯人を逃がさない為。

 犯人に逃がす猶予を与えない為。

 何より最大の目的は、犯人を孤立させる為。

 犯人への協力が、直接その幇助者を追い詰める環境を作る事で、足を奪う。また、そこからの情報提供を狙う。

 

 でも、だったら犯人逮捕の為と公表してしまっても構わない。


 これだけ大規模にやっているんだから、世間の混乱するのは予想できていたわけで、ならば、世間全てを監視者に作り替えた方が事件は早期解決に結びつく。


 なぜ、そうしないのか?


 犯人が、誰でも捕まえる事ができる可能性があるから。


 屈強な殺人鬼じゃない。銃器くらいは持っているのかもしれないけど、女。

 

 ついでに、一般の日本人が見て『不穏』で『近づきそう』な人種は、日本人だけ。

 不穏な黒人男性を見て近づく日本人なんか、酔狂な奴だけでしょ。そんなごく少数の国民にあてた会見を、政府は行わない。


 ただ、今の会見で最も重要なのは、計画性、について。


 検問の性質上、内容を語る事が出来ないのは当然として、なぜ、最後の文を付け足したのか? あんな文は余計に混乱を招くだけで、必要性が皆無。

 

 それでも、付け足した。なぜか? 


 この包囲戦は、不本意だったから」


「包囲戦? 脱走じゃないの?」


「あり得ない。脱走なんて、警察の恥。警察の威信にかけるのであれば、そもそも検問なんかやらないし、仮に囚人脱走であれば目撃者の検討はつくし、捜査班も追走中。捜査班の邪魔になるような世間の混乱、検問は不要。

 

 ターゲットの検討がつかないから、検問が必要なんだよ。


 後、これだけの規模とは言え、都内に限定している。


 例えば普通の殺人犯なら、数時間もあれば都内から逃げているだろうから、こういう検問封鎖は効果が薄い。世間の混乱を考えればデメリットしかない。


 つまり、ターゲットの所在をある程度特定した上での、包囲戦。


 だったら、そう伝えればいい。


 なぜ、伝えられない?」


 正子は、なるほど、と首肯した。

「公表して欲しくない人がいるから」


「うん。それに対し、日本政府は反発している。最低でも警察サイドに反発がある。

 故に、最後の文章がつけたされた。

 国を動かすほどの凶悪犯ならば、日本にだけ留まっている可能性は低い。

 何も、日本でやらなくても良かった。

 それでも、舞台に選ばれてしまった。


 故に、国民にだけは被害にあって欲しくない。


 そう、考えると辻褄が合ったりもする。……ま、この辺りは推測だけど、余計にターゲットが日系人である可能性は高まる」


「……なるほど」


「じゃあ、そういう事で」


 聖は立ち上がり、パソコンを鞄に入れた。


「ちょ、聖? まさか」


「面白いから、探ってみる」


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