第51話 たまにはこんな休日も
19階のモンスターはハンマーグリ。
人の頭サイズの空飛ぶ蛤で突進と貝殻で挟むの2種類の攻撃をしてくる、弱点は貝殻を開いた際に見える中身で、ここは貝殻に比べると非常にやわらかいので俺なら爪を立てるだけで、他のメンバーなら刃物を刺すだけであっさり倒せるのだが……
騎士3人を除き未だ甲冑に慣れていない4人は、視界の悪さや甲冑の重さ、バランスの悪さや倒れると1人では起き上がれない等の理由があって、戦闘も移動も満足に行えていない。
それでも18階までの事を思えばかなり進歩しているので、ここで甲冑で最低限自衛可能なまで動けるようになって欲しい。
転倒して兜が外れた事はないが、万が一頭部が露出してく日から上を食われて死んだなんて事にはなって欲しくないからな。
そんなこんなで騎士3人を抜けたハンマーグリは中衛のミツミに攻撃したり、ミツミすら飛び越えて後衛の3人を襲ったりして、ブラックマのメンバーはハンマーグリの攻略にてんやわんやしていた。
俺は当然変身して6腕の黒熊になっているので甲冑は着てない、だからみんなのもたつきには何も言うつもりはない。
例えるなら自分よりテニスが下手なクラスメイトが、横から後ろからいちいち毎回違うこうだろう、あーしろこーしろと言ってくるようなものだ。
俺より下手なテメーがいちいち口出しすんじゃねえよ、クソボケが死ねよ。
学生ならそんな感想を持ったり実際口に出したりするかもしれない。
有象無象に嫌われようと気にならないが、流石に彼女達に対しては気を使うし、男には理解できないだろう事でも理解しようと努力していきたい。
イライラしているところに応援されても余計にイライラしてしまうと思うと、下手に応援もできなくて口数少なく転倒前に支える等のサポートに従事している。
最近は午前はダンジョンのソロ周回で食料等を集め、午後はブラックマの一員としてサポートの日々が続いている。
△△▽▽◁▷◁▷
ダンジョン19階で停滞しているある休日、剣銃一体の試作武器の開発は刻紋師を得た事により格段に進んだ。
ルーン文字のように一文字で意味のある紋様の知識が入ってきたので、それを組み合わせて回路やプログラミングのように配置する事で、弱いながらも魔力による射撃が成功したのだ。
例えば魔力、集める、貯める、念、放つ、といった紋様を柄後部の発射機構を刻印する。
すると周囲や持ち主から魔力を集めて貯めるの紋様付近に魔力を集めて貯めておく、そして……発射じゃなくても使用者が何か考えただけで魔力が銃口から飛び出す欠陥品になった。
おかげて小屋の天井は全損、試作品も8割り方壊れたなんて事があった。
なので今日は試作品作りは禁止されてアマルディアとデートの予定だ。
曰く、働き過ぎである。
なのでアマルディアと釣りデートに行って1日ボーっとしてくるように、だそうだ。
最近は基本的に週休2日だったし、回復術もあるのに変身までできるようになって体力オバケなってからは、肉体的に疲れるなんてまずなかったから自覚していなかったらしいが、休日でも武器の試作やトロッコとレールの調整等、娯楽がないから手元でできる事をしていたらみんなの目には働いていると映ったらしい。
なので今日はアマルディアと海岸で海釣りデートと相成った。
釣り具リズリーのドロップアイテムは生の餌以外はほぼ全ての釣り具をドロップする。
釣り竿、釣り針、釣り糸、リール、
そのほとんどが別の用途でも使えるので、村でも人気のアイテムとなっている。
縫うのに適さない釣り糸は編めば頑丈で水に浸けても腐らないロープになるし、リールは釣り糸以外でも使える糸巻き機になったりと疑似餌以外は大人気だったりする。
疑似餌だけは針が金属として求められるくらいだが金属なら村の保管庫に大量にあるし、針を外された疑似餌は燃やすくらいしか用途がないが、指で摘めるサイズなので薪にもならないと人気がなかったりする。
今日もアマルディアはマグロやカジキマグロでも釣るのかってくらい太く頑丈な、愛用の釣り具セットを持って海岸に来ている。
「血抜きに使ってた物干し台みたいなのは持ってこなかったのか?」
「あれを使うと直ぐに腐るから、釣ったら直ぐに冷やして家で血抜きする方がいい」
「なるほど、どうりで釣った数より食卓に並ぶ量が少ないと思った」
釣り具にウェアや長靴、帽子にサングラスに指ぬきグローブまでドロップするので、今日のアマルディアはアングラーファッションにライフジャケットで身を固めている。
ライフジャケットが邪魔でジッパー付き胸ポケットが沢山あるベストはあまり役立って居ないようだったが、代わりに工具箱のような針や錘等が山ほど入った箱も持ってきている。
釣り具リズリーのドロップアイテムを全部渡しただけなのだが、自力でここまで辿り着いたのだろうか?
ファッションといい道具の使い方といい。
人生経験もそれに伴った知識も豊富だろうから、物の考え方を理解していて答えの出し方を知っているとか?
そんなのがあるなら、まだまだ理解できない境地なんですけどあのその。
「私は準備できたけど、シバは釣らないの?」
「ずぶの素人が参加すると2人の竿の釣り糸が絡まったりしそうだし、そうならないようにするなら離れて釣らなきゃダメだろ? 今日はデートなんだから一緒に居たいから隣で見てるよ」
「そう……なら隣よりも真後ろに座った方がいい」
今のセリフを聞いてちょっと恥ずかしかったらしい、彼女の顔が少し赤くなってる。
「しかしなんで、隣じゃなくて真後ろなんだ?」
「針に魚がひっかかったら合わせるのに竿を上に振り上げるけど、そのあとは魚の動きに合わせて左右に振るから斜め後ろまでは竿がぶつかって危ない」
「なるほどね、了解」
イスを設置してリールのロックを外し、竿を大きく後ろに振りかぶり振り下ろししかけ(針や錘等のセット)を飛ばすアマルディア。
しかけが着水して……めっちゃ飛んででまだ着水しない。
リールに巻かれていた糸がかなり減ったてからようやく糸の動きが止まり、リールをロックし直してイスまで戻って座った。
「めちゃくちゃ飛ばしたなー」
「だいたいこのくらい」
いつもの事だったらしい。
アマルディアは竿を持ったまま、ボーっと竿の先か海を見ている。
俺はその後ろで木材を2人がけのソファーに加工して、革と羽毛で柔らかなシートを作りソファーを覆うと完成。
「アマルディア、一緒にこれに座らないか」
「ん」
右利きの彼女が竿を扱いやすいよう左に座り、ソファーの右側のシートをポムポムと叩いて合図してみる。
それから夕方前まで、魚が食いつくのを待つ時間は2人寄り添って穏やかな雰囲気の中で過ごせた。
家に帰ったら、潮風でめっちゃベタベタしてた。
総職系男子 天神 運徳 @amezingdragon831
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