7-6 調教済みの俺様w

 そっと口を着ける。……ちょっと変な感触だ。目を開けると、野花の人差し指が、ふたりの唇の間にあった。瞳がいたずらっぽく輝いている。


「……はい、ここまでね」


 俺の腕の中から、ゆっくり体を離した。


「お姉さん、ちょっとびっくりしちゃった。なおくん、本当におとなになったのね。私よりずっと」

「のんちゃん……」

「だめだよ、なおくん。だってまだお風呂にも入ってないから恥ずかしいし」


 すっかり冷えてしまったお茶を口に運んだ。


「……」


 やっぱダメかw 煩悩消化に最高だと思ったんだが。


「……続き、したいの?」


 黙って首を縦に振る。そらしたいだろ。俺も(死んでるとはいえw)男だ。


「そう、したいの……。じゃあねえ……期末テストでいい点取ったらね。そうしたら続きをしましょう」


 にっこり微笑んだ。


「美咲先生みたいなこと言うなあ……。中間テストの結果がわかったばかりなのに、もうか」

「ふふっ。その先生とタッグを組もうかなあ。『なおくん向上委員会』」

「お姉ちゃん……」

「……そんな泣きそうな顔しないで」


 俺の頭を撫で始めた。しばらく無言で撫で続ける。


「まだだめなの? 仕方のない子ね」


 俺が黙っていると、溜息をついて手を取った。それを静かに自分の胸に置く。


「いーち、にーい……」


 数を数え始めた。なんやこのチャンスタイム。とりあえず優しく触ってみるわ。


「さーん。はい終わり」


 手を外し、俺の太ももに、そっと置いた。


「誰にも触らせてないんだからね。大サービスだよ」

「お姉ちゃん……」

「これで思い出になったでしょ、今晩の」

「う、うん」

「なら頑張りなさい、勉強。……はい」


 直哉にも湯呑みを渡した。


「あ、ありがとう……」


 なんだか野花には頭が上がらない。なんや俺、「調教済み」じゃんw 古海に笑われるがな、こんなん。


「それに……本当のことを言えば……」


 野花の頬が熱くなった。


「私にも思い出になった」


 物言いたげに、俺を瞳に捉えている。


「今晩のこと、忘れないよ……。なおくん」

「のんちゃん……」


 その頬に、おずおずと触れた。野花は瞳を閉じ、俺の指がからかうように動くがままにさせている。


「はあー、ただいまー」


 古海が玄関を開けた。瞬時にテレポーテーションの謎異能を発揮した俺は、一気に離れたw


「なんか今日は、アイス、死ぬほどおいしかった。味覚が変わったのかな、あたし」

「お、おう……」

「あら。……なんか空気がヘンね、ここ」


 古海は首を傾げた。


「い、いや別に……」

「こら奴隷。あんた、あたしの大事な友達に粗相しなかったでしょうね。お茶こぼしたりとか」

「するわけないだろ」

「そう……。ならいいけど」


 おいしかったーと言いながら、ティラやミントも入ってきた。猫がにゃあと鳴くと、ミントが頷いている。


「では次のスケジュールね。一時間くらいずれちゃったけどさ。……次はなんだったっけ」

「お風呂。それからパジャマパーティーかな」

「ありがと野花。さっそくお風呂にしましょ。男湯と女湯があるから同時に入ってもいいんだけど、このアパート、服脱ぐところがここしかないし……」


 俺をじっと見据えている。


「……わかってるよ、ほら、やれ」


 手錠をかけられるときのような形で、手を前に差し出す。


「わかってきたじゃない。さすがはしもべ。生来の奴婢体質だわ。調教して使役しがいがあるわね」


 S体質の古海が瞳を輝かせた。直哉がぐるぐる巻きに縛られ目隠しされてベッドの足に固定されると、女子ははしゃぎながら服を脱ぎ始めた。衣擦れの音がぱさぱさと聞こえる。


「どう直哉。このご褒美の音。ほら」

「あっ」

「今、野花の裸の胸を揉んだわよ。大きいわよお……。ティラとそう変わらないくらい。へへへっ。あんたも一度くらい触ってみたいでしょ。禁止だからね、それ」


 ――いやさっき触らせてくれたし。


 心の中でツッコんだ。柔らかく温かく、どこまでも俺を受け入れてくれるような胸を、たった数秒とはいえ、たしかにこの手で制覇した。


 感慨に浸りながら、風呂からの嬌声を聴いた。まだ夜は早い。今晩は全員でじっくり遊び通すのだ。明日は昼まで寝て、それから――。

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