5-3 キャミソール妄想はかどるw

 さんざん遊んでホテルに戻ると、豪華な夕食が待っていた。


「これがグルクンの唐揚げね。頭から骨まで、まるごと食べられるっていう」


 古海もすっかり機嫌が直っている。


「こっちの角煮とかもうまいし」


「はあ、もずくって言うんでしょうか。これ甘酸っぱくておいしい」


 俺達は、会話も忘れてむしゃぶりついた。なんといっても育ち盛りだし(天使は知らんが)、昼間遊びに遊んだので腹が減っている。レストランのテーブルを、しばらく沈黙が支配した。スピーカーから沖縄民謡が流れている。


「明日はいよいよ当選ツアーの目玉、美ら海水族館だからな」


 満腹になった俺が告げると、古海の頬が緩んだ。


「楽しみね。世界最大級の水槽があるんでしょ。マンタとかが泳いでて」

「はあ、割れないんでしょうか」

「なんでも積層アクリル製で、とんでもなく頑丈らしいぞ」

「人魚もいるらしいわね」

「へえー。私、人魚って見たことないんです。楽しみですねえ」


 期待に瞳を輝かせている。


「冗談よ」

「ふん。古海が人魚役になって水槽に入ればいいじゃないか。さっきみたいに胸丸出しにして……って、えと冗談です」


 古海の目がマジだ。もうやめとこうw


「最初から言わなきゃいいのに……」


 ティラがあきれている。


「むかつく死体ね。今晩あたしとティラの部屋に呼んで夜通しトランプでもしようと思ってたけど、やめるわ。――あーあ、せっかく色っぽいルームウェア持ってきたのに」

「色っぽい?」


 この野郎。俺のエロセンサーをストレートに刺激しやがる。


「そうよ。体の線がモロに出るキャミソール。露出度の高い奴。下はフレアのキュロットで」

「キャミソールって、なんだ……」


 古海はニヤニヤしだした。


「知らないの? キャミソール。下着も同然よ。下には当然ブラなんてしないから、胸がポチッと出るわね」

「ポチッと……」

「そうそう。脇もすごく開いてるから、トランプしてるとき、横から胸が全部見えちゃうかも」

「むねが……ぜんぶ……」


 古海が笑い出した。


「ほらやっぱり鼻血噴いた」

「面白いですねえ。この死体」

「……くそっ」


 これは恥づいw


「こんなに煩悩まみれで、あんた本当に成仏できるの?」

「……自信ない。俺、もうあのナイフ地獄に落ちるしかないかも。何百年も拷問されるんだ……」


 ほんとにこれ、どうしよ俺。


「あっでも平気よ。いざとなればあたしが蘇生して使役してあげるから。そしたら地獄には行かずに済むわ。現世に留まることになるわけで」


 やばいと思ったのか、古海がフォローしてきた。


「ありがと。……お前、優しいんだな、けっこう」

「あっあのっ。け、けっこうってなによ」


 なんか知らんが、赤くなってるな。


「あ、あたしは優しいわよ。隅から隅まで。だ、だからもっとあたしにも……優しくしてよ……ティラみたいに……」


 恥ずかしさのあまり思わぬことまで口走ってしまい、かえって傷口を広げている気もするが。


「うん。ごめんな。俺、気が利かないからさ」

「わ、わかればいいのよ、わかれば」


 上気し発熱した頬で、古海は立ち上がった。


「さっ部屋に行きましょ。キャミソールに着替えてあげるから、三人でしっぽり話しましょうよ。せっかくの沖縄の夜なんだから」

「わあ。楽しみですねえ」


 ティラは屈託なく微笑んだ。

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