エピローグ 転生
「あれ?」
目覚めると、視界いっぱいに白色が飛び込んで来る。
首を上げて視線を巡らせると、白亜の建造物の中だと気づく。
私はその床に寝ころがっていた。
起き上って口元の涎を拭い。
改めて周囲を見回すと、突然空間が歪み、そこから白い布を身に着けた男性が姿を現した。
その顔は……なんだかよくわからない。
顔である事は分かるのだが、何故かぼやけて上手く把握できないのだ。
雑多な色の絵具をぶちまけた様な、そういうぐにゃりとした印象だった。
「感謝する。君のお陰で、あの世界はもう大丈夫だろう」
威厳のある低い声が響く。
私は声を聴いて、それが誰だかを思い出した。
「神様……」
「本当にご苦労だった」
神様がいると言う事は、やはり私は死んだのだろう。
まああの状況で助かる訳は無いので、当然と言えば当然だが。
「細やかなお礼として、君の願いを叶えておいた」
「願い?」
「アーニュと王子との恋だ。神託を通じて、二人が結ばれるよう誘導しておいた。ハイネの方は放っておいても大丈夫そうなので、其方は代わりにレアをクローネの次期女王になるよう手配しておいたぞ。彼女達はきっと、幸福な人生を歩む事だろう」
「ありがとうございます 」
至れり尽くせり、中々に気の利いた配慮だ。
神様に太鼓判を貰えたのなら、アーニュ達は大丈夫だろう。
だけど――
「そういう事が出来るなら、魔王と戦う前にやって欲しかったんですけど?」
神託を自在に出せるのなら、もっと楽に事を運べたはずだ。
そもそも魔王を倒したかったのなら、自分でやればいいだけの筈。
何故わざわざ私に押し付けた?
「したくても出来なかったのだよ。魔王と言う存在は、世界とこの神界との繋がりを妨げる病原体の様な物だったからな。だから君を頼ったんだ」
「それなら、せめて事前に説明してくれても良かったのでは?」
私は何も知らされずに異世界に放り込まれた。
魔王を倒したかったのなら、ちゃんと説明して欲しかった物だ。
「異世界人である君にあの世界の存在を殺してくれとは、神としては流石に口に出来なくてね。神とは言え、何でもかんでも好き放題という訳には行かないんだよ」
どうやら神様にも色々ある様だ。
「さて、そこで相談なんだが?」
「相談?なんです?」
「もう一度転生するつもりはないか?実は別の世界でも、とんでもないのが暴れまわっててね。おっと、それを倒して欲しいなんて口が裂けても言うつもりはないよ。転生先では好きに生きてくれればいいさ」
回りくどい建前である。
だが提案事態は魅力的だ。
やり切った感のある最後だったが、実は一つやり残した事があった。
それは恋だ。
正直な所、私はアーニュやハイネが羨ましくて仕方なかった。
だからもう一度やり直せるなら、今度こそ素敵な恋がしたい。
「無理強いはしないがね」
「お受けします」
私は二つ返事で神様からの依頼を引き受ける。
次こそは素敵な恋をして、女の幸せを掴みたい。
その為には魔王だろうが何だろうが、ぶちのめしてやろうじゃないの。
こうして私は新たな世界へと旅立つ。
今度こそ、自分が幸せになる為に。
~FIN~
死に戻り聖女は魔女の烙印を押され国を追われる~え?魔王の封印が解けた?そんなの自分達で何とかしてください~ まんじ @11922960
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