第29話 無価値な鉱石

今日俺はザークの依頼でエヴェルティア(未確宙領域)で発見した未開惑星の探索している。ネテリークの謹慎処分がやっと解かれ。つまらない薬草積みからおさらばになったのである。これを本人前では言えない。言ったらまたつまらない薬草積みに逆戻りにされるからである。だから絶対言えないしネテリークが機嫌を損ねることは絶対にしてはいけないとしみじみ感じる。大好きな豚骨ラーメンを没収されたし。

地球から遙々やってきた火鉢愛音だが。俺を視察にきたアースエジュケイション(地球教育機関)にほぼ連行当然で連れていかれた。どうやら火鉢愛音のやったことはアースエジュケイションにとっては大問題のようであり。アポ無し手続き無しでほぼ自力で保護観察対象である俺に逢いにきたことが大問題のようだ。まあ実質刑務所にいる人間に一般人が逢いに来るようなものである。問題になると言えば問題にはなるな。故にアースエジュケイションの視察官に愛音はこっぴどく叱られていた。当の本人は何処ふく風の様子で何か考えごとをしていたようだったが。


ザークがエヴェルティア(未確宙領域)で発見した未開惑星は先住民などはいない荒れた小惑星である。

そこに価値がある資源がないかと俺とムムとザークが一緒になって手伝い探索しているのだ。


宇宙服を着たまま未開惑星を探索する。

どうやらこのザークが発見した小惑星は酸素がないようだ。

当然だろう。この惑星には海も水も森も生物さえもいないのだ。空気がないのは当たり前である。

ザークは金属探知機を使って資源はないかを探している。

俺はスキャンサー(走査機)を使ってこの荒れた惑星で一つ一つ目ぼしいものがないかと石を拾ったり。岩を削ったりして調べている。

生物もいなく植物も遺跡の類いもないから実質この惑星(ホシ)では鉱石しか採取するものがない。


「やっぱこの惑星はハズレかねえ。こう目ぼしいものはないと。諦めるしかないか。まあ、最初から海も山も森林さえも無かったから諦めておったが。」


ザークは残念そうにため息を吐く。

エヴェルティア(未確宙領域)で惑星を発見したら宇宙冒険者ギルドに報告し。この惑星の所有権を得る。ただし発見した惑星一つ一つに当たりハズレもあるのも確かである。資源や遺跡、生物、植物など文化的、生物的、生産性的な価値があるものは発見されないことはただある。故に資源が採れない無価値な惑星もまた存在する。宇宙冒険者としての職業柄仕方ないことである。こう言う日もあると諦めるしかないのだ。


「キィ·······。」


白い小さな獣耳をたて。コジョ族のムムは倒立したまま何かを感じ取るような素振りをする。


「どうしたんだ?。ムム。」


コジョ族は特殊な能力があるという。未開惑星に連れていくとそこで遺跡や鉱物などを探した出したときいている。もしかしたらコジョ族であるムムこの未解惑星で何かを発見したのだろうか?。



「大翔、こっち、こっち。」


トタタタタ

ムムの脚幅のない白い足を脱兎の如くかけていく。大翔はそれについていく。

ムムについていくと荒れ地の地面に裂け目の出来た場所に到着する。


「この下に降りる。」

「この下にか?。」


空気はないが一応重力はある。

落ちるということはないが。用心に越したことはないか。

携帯用ワイヤーの支柱となりそうな場所を探す。と言ってもこの未開惑星には木一本も生えてないから実質硬い地面に打ち込むしかない

裂け目近くのなるべく崩れそうもない地面を探し。携帯用ワイヤーの支柱となる杭を打ち込む。

バシュ!


ザークから貸して貰った携帯用ワイヤーはちょっとやそっとじゃ千切れることはない優れ物である。支柱となる場所を打ち込む杭もただの杭ではなく。打ち込んだら結して離れない特別製である。なんでも杭の空間だけ特殊な力場を発生させ。重力と引っぱる力を無効化させるのだ。ザークから聞いた話だと1000t位は耐えるそうだ。1000tってどのくらいだ?。1tが人間の17人分だとすると1000tは17000人?。まあ、打ち込んだらそう簡単に離れないということは理解した。

するすると裂け目の崖をワイヤーを辿って降りていく。

そう深くなくほんの五キロメートル位であった。大翔は裂け目の最終地点に降りる。

特に何もない。

生物もサーチ機能で0と判断されたので危険な生物に襲われる心配もない。それはそれでスリルがなくて残念だが。


トタタタタ

ムムはキョロキョロと辺りを見回した後、何か発見した駆けていく。


「どうした?ムム。」


ムムは何か白っぽい霞みのかかった石を拾う。俺はムムの元に駆け寄る。

石はキラキラ輝いていなかったが。それは他の岩石や石とは違い霞んだ白っぽい色をした石だったので何かの鉱石であると俺は確信する。


「この小惑星にも鉱石はあったんだな。でも何の鉱石だ?。」


俺はスキャンサー(走査機)取り出し。ムムが手に持つ白く霞かかった鉱石に当てる。


びぃーーー


「えっと····この鉱石の成分は····とC。炭素。炭素だけということは純粋な炭素。つまり·····ダイヤモンド。」


大翔は一瞬思考が真っ白に停止する。

この白っぽい霞みかかった鉱石がダイヤモンドだと解った時。大翔の思考が少し吹っ飛んだ。ダイヤモンドは宝石では定番である。工業用でも切る・削る・磨くに特化しており。研磨や硬いものを切る為にも活用される。万能的な鉱石である。


「でかしたぞ!。ムム。これでザークも喜ぶだろう!。」

「キィ?。」


ムムは不思議そうに首を傾げる。

ザークは完全に諦めていたけど。ダイヤモンド鉱石があると知れば大層喜ぶであろう。

大翔はザークがダイヤモンド鉱石を発見を知ったときの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。


「カスじゃな·······。」


ザークは手に持ったダイヤモンド鉱石を冷ややかな顔色で大翔にそう告げる。


「カスっ·····て·····。ダイヤモンドだぞ!。宝石や工業用にも使われる!。万能鉱石だろうが!!。」


大翔はザークのあまりにも冷ややかな冷めた態度に憤慨する。


「おめぇの銀河じゃどうかは知らねえが。ここのヘクサーギャラクシィ(六角銀河)内ではこのダイヤモンドつう鉱石は価値もない売り物にもならない。ここの宇宙冒険者圏内ではカス石と呼ばれているんだ。」

「売り物にならないって····。宝石としての価値は充分にあるだろうが!。」


ダイヤモンドは宝石で定番だ。不良な俺でも婚約指輪になっているくらいは常識的に知っている。


「はあ?、宝石。何処にこんな輝いてもいない綺麗でもない宝石があるんだ?。誰もこんな白っぽくて靄のかかった石なんて誰も買わねえよ。」


ザークは不機嫌そうに反論する。


「いや、だって、研磨したり加工すれば綺麗に輝くだろうが?。」


確かににこのままでは宝石としての価値はないが。研磨や加工すれば宝石として充分にやっていける。


「研磨?加工?大翔、あのなあ〰️。宝石と言うものは元々キラキラ輝いているものだ。なんでわざわざ研磨したり加工したりして手間隙かけなきゃいけないんだ。そんな面倒臭いことするくらいなら既にキラキラ輝いている石を加工すればいいだけの話だろうに?。」


ザークはこいつ大丈夫か?と本当に大翔のことを心配された。


「まじか········。」


大翔は唖然とする。

そしてあることに気付く。

ここのヘクサーギャラクシィ内の宝石の価値観と地球との宝石の価値観がまるで違うと言うことに。

地球では鉱石を研磨し加工することでより綺麗にみせる宝石とする。

しかしこのヘクサーギャラクシィ(六角銀河)内では既にキラキラ綺麗に輝いている石を加工して宝石とする。しかも鉱石の中で研磨、加工してまで綺麗にするという考えはないのだ。ヘクサーギャラクシィ内ではそこまで手間隙かけてまで宝石にしないと言うことである。

科学技術はすこぶる発展しているのにここの部野だけ発展していない。いや、娯楽の分野だけが劣化しているのか?。大翔はヘクサーギャラクシィ(六角銀河)内で文明レベルにメリハリがあることに気付く。そういえばヘクサーギャラクシィは数々の惑星人(ネヴィト)が集まって6つある銀河の星ぼしに国やら町やら村を作ったり建てたりしたときいている。そのヘクサーギャラクシィ内でその種族に長い歴史があるというわけではないのだ。文明レベルにメリハリがあってもおかしくはない。


「じゃ、工業用としてはどうなんだ?。ダイヤモンドは鉱石の中で最も硬いとされる鉱物だ。工業用や兵器用として転用できないのか?。」


別にダイヤモンドの使用用途が宝石だけとは限らない。硬い特性を生かして工業用としても活躍している筈だ。


「はあ?何言ってんだ。カス石よりも硬い鉱石なんてこのヘクサーギャラクシィ内では幾らであるぞ。例えばオリハルコンやアダマンタイトとかミスリルとかな。」


オリハルコンやアダマンタイトやミスリルがこの銀河にあるのかよ!。空想上が産物が普通にここの銀河に現存することに大翔は絶句する。


「あ〰️あ、どうっすかなあ〰️。カス石が見つかると言うことはこれ以上期待出来ねえな。」


ザークは頭をカリカリとかいで大いに落胆する。

地球の惑星人(ネヴィト)としてはダイヤモンドがカス石と言われるのは正直納得出来ない。確かに俺は不良として宝石に全く興味はねえが。価値あるものが価値ないと言われることに関して少し腹正しいと思う。例えそれが別の銀河、別の宇宙、別の種族、別の文明であったとしてでもだ。


「···········。」

「そうだ!?。ここで妙案だ!。おめぇはよく頑張ってくれてるからなあ。だからお礼と言わんがここのカス石を全部おめぇにくれてやるよ!。」

「はあ?くれるって·····。」


突然のザークの申し出に大翔は目が点になる。ザークはこの小惑星をまるごと俺に譲渡するというのだ。ダイヤモンド鉱石が採れるこの小惑星をだ。ふとっ腹にも程がある。普通小惑星をまるごとくれる奴なんていない。


「どうせ何処にも買い手がつかないカス石が採れる小惑星だ。持っていてもしょうがない。だから毎日手伝って貰っている大翔にせめてのプレゼントだ。もしそのダイヤモンドと言う鉱石を買うと言う物好きな惑星人(ネヴィト)がいたらそのままおめえの収入しても構わねえからよ~。」


「まじかよ·······!?。」


ザークの妙案に俺は目を見開き絶句する。


ザークはニンマリとした爽快な笑みを浮かべる。

ザークはこの未開の小惑星の所有権を俺に譲渡するというのだ。


·········

正直嬉しい筈なのに嬉しくない。

つまりこの銀河内で売れない鉱石の出る小惑星の所有権を俺に押し付けたということでもある。


·········

大翔は少し考える。

だが、これはチャンスかもしれない?。

宇宙冒険者として旅立つにもどうしても資金はいる。船のメンテや物質、武器、弾薬、食料、サバイバル用具など宇宙冒険者では必需品である。数十万数百万円単位で買えるような代物ではない筈だ。もし、もしこの小惑星から採れるダイヤモンド鉱石を他の惑星人(ネヴィト)に売りつけることができたならそれなりの足しになるかもしれない。

今後の宇宙冒険者の活動資金として有用であろう。

大翔はニヤリと不適な笑みがもれる。


「キィ、大翔?。」


ムムは不思議そうに白い首を傾げる。


「良いスリルだ·······。」


大翔はにやけながらも強い決意を固める。


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


宇宙冒険者ザークの妙案で発見した未開の小惑星を大翔に譲渡することになった。しかしヘクサーギャラクシィ内で買い手がつかないダイヤモンド鉱石を買って貰える惑星人(ネヴィト)をヘクサーギャラクシィ内で探さなくてはならない。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第30話

     『買い手』


    不良少年は荒波の海へと飛び込む······

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