第28話 やりたいこと

ぷちぷち ぷちぷち


「·······。」


大翔に誘われ。一緒に薬草積みを手伝うことになった火鉢愛音は無言で赤い実を実らせる膝しかない木々から赤い実を取る。


ぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷちぷち


「··········。」


火鉢愛音は内心不満であった。何で地球から宇宙遥々彼に逢いにきて。農作業紛いなことを手伝さわされなければならないのかと。それ以上に余計に不満なのは誰にもゆうことも聞かず。我が道を突き進んでいたあの不良の大翔が従順に農作ではなく薬草積みの手伝いをしているのだ。強い奴にたいして何度も喧嘩吹っ掛けては問題起こし。補導された経験が何度もたるあの大翔が今は従順に薬草積みなどという手伝いをしているのだ。普通にあり得ないことであり。納得できない。


「大翔·····。」


愛音は薬草積みに勤しむ大翔に声をかける。

隣では白い毛むくじゃらがしゃーと猫ように威嚇する。


「ん?何だ。」


ぷちぷちぷちぷち

大翔は赤い実をを取る手を止めない。


「何であんたこんなに従順に手伝っているのよ。あんたそんなことする玉じゃないでしょ?。」


愛音の視点からしても大翔が真面目に薬草積みすることじたいおかしかった。

興味を持たないことに関して一切見向きもしない彼の性格である。どうみても薬草積みのようなつまらない作業を進んでやるような人間ではない。


「やりたいことができたんだよ。」

「やりたいこと?。」

「ああ、この宇宙には宇宙冒険者っていう職業があるみたいなんだ。俺はそれになることを決めた。そのために今はネテリークから色々学んでいるんだ。ある程度学んだらこの惑星をいつか出ていくつもりだ。」

「出ていくって·····。宇宙船はどうするつもりなのよ?。」


こんな航路もない未開惑星に宇宙船がなければ出ることさえ無理な話である。

そういえば火鉢愛音も帰りの船のことを全く考えていなかった。


「宇宙船は既に手にいれている。後は宇宙冒険者としての知識を身に付けることと。宇宙冒険者のライセンスを手に入れるだけだな。」


火鉢愛音は絶句する。

宇宙船を既に入手していると大翔は言ったのだ。あんな値段が馬鹿高いとされる宇宙船を大翔はたった1人で何の金もコネもなく入手したと言ったのだ。

流石はヤス大総長は見込んだだけの男である。

喧嘩が強いだけではなく先の先を見据えている。

私もまけられない·····

火鉢愛音も本気でそう思った。薔薇野囗亜のレディースの総長になるまで幾つもの修羅場を潜り抜けてきた。結してコネとかで総長の座を手にいれたわけではない。暴走族の総長になるにも努力と労力が必要である。ただ喧嘩が強ければ言い訳ではない。仲間からの信頼、統率力、それらがないと総長は務まらないのである。ヤス大総長はそれらを全て持っていた。舎弟に慕われ。関東や関西にある幾つもの族の組織に喧嘩を吹っ掛けては仲間にしていったのだ。それだけのカリスマ性があった。

ヤス大総長が大翔を人目置いていたことが解ったような気がする。

だからこそ私も遥々ここまでやってきたのだ·····。


「ま、まあ、が、頑張ってね。道のりは遠そうだけど。応援してるわ!。」

「あ、ああ······。」


火鉢愛音は恥ずかしそうに視線を逸らす。

大翔は少し困惑しながらも返事を返す。


「キィ········。」


ムムは警戒満ちた視線を火鉢愛音に向ける。


わ、私の馬鹿ーーーーーーー!

私の馬鹿!馬鹿!馬鹿!馬鹿あああーーー!

そんな世間話をしにわざわざ地球遥々来たわけじゃないでしょう!。

私、もっとしっかりして!


火鉢愛音遥々地球から遥々やってきたのは大翔に逢いにきたためだけではない。

彼女にとって一世一代の大勝負にしようとしていた。

ぞう愛の告白である。

ただ彼女は色恋沙汰に関してはまるっきし駄目駄目であった。

何度も地球では彼に告白するチャンスはあったが。ことごとく失敗しているのである。

レディース薔薇野囗亜(ばらのいあ)総長、火鉢愛音は色恋沙汰に関してはまるっきしのヘタレであった。


「は、大翔。あっちにも薬草生えているわよ。」

「ん?ああ·····。」


火鉢愛音の指示に大翔は地面に生える薬草

その様子をムムは注意深く目を光らせる。


「さあ、夕飯用意したぞ。」


ネテリークが呼んでいる。

もうそんな時間か。大翔は薬草積みの作業を止める。と言っても夕飯に関してまるっきし期待していない。何故なら料理が植物のオンパレードだからだ。客人が来ているから特別メニューに変わらないかなあ?。特別メニューと言っても食材が植物であることに変わらないんだが。

愛音をネテリークの家に招き入れるとテーブルの上に用意された料理に俺は絶句する。


「はっ?。」


テーブルの上にあったのは俺が惑星レイケットで買いだめしといた豚楽亭の豚骨ラーメンである。帰ってきたときコールドタイムストレージ(時間凍結保管庫)のボックスをネテリークに没収されたのだ

何でこんな日に限って豚楽亭の豚骨ラーメンをだすんだよ。

大翔は口元は引きつく。

いつも植物だらけのメニューなのに。

いつもはありとあらゆる植物(ほぼ草)をメニューにしているこき。

客人(火鉢愛音)が来る今日に限って何故か俺が調達した豚骨ラーメンを出している。

どうみても遠回しの嫌がらせでしかない。


「わあ~~!。夕飯に本格的なラーメンなんて変わっているわねえ。それにこの宇宙にもラーメンあるのねえ。」


火鉢愛音は夕方にラーメン出てきたことに驚く。


「ああ、北西銀河ラビンクのレイケットという惑星に豚楽亭という上手いラーメン屋があるんだよ。」

「へえ~、私もいつか行ってみようかしら?。て、何でそのラーメンがここにあるのよ!。出前?。」

「買いだめしといたのさ。コールドタイムストレージていう時間を凍結する特殊な保管庫があって。それに入れて持ってきたんだ。その保管庫の中身だけは時間が凍結しているから食材が腐る心配も傷む心配もないんだ。」


大翔は火鉢愛音にコールドタイムストレージの機能を説明する。


「へえ~、流石は別の宇宙ねえ。何もかも地球より遥かに進んでいるわ。」


愛音は素直に感心する。


「さあ、じゃんじゃん食べるといい。まだまだ沢山あるからな。」

「ありがとうございます!。」


愛音は嬉しそうにネテリークにお礼を言う。


俺のラーメンなんだが?と内心ネテリークに言いたかったが。残念ながらそう言える空気でもない。


ずるずるずるずる


ラーメンを啜る。




ぷいーーーー

ネテリークの家の中で変なブザー音が鳴る。ブザーを鳴らしていたのは耳に取り付ける小型通信機である。ネテリークの知り合いと瞬時に繋ぐことができる特殊な通信機である。宇宙空間の何万億光年離れようとも同じ通信機を所持しているならば通信が可能なんだそうだ。

なんでもエディト空間という別次元の空間利用して繋げるているそうだ。そのため時間や距離はあまり関係なく。本人の都合通りに相手に繋げることが可能なんだそうだ。エディト空間はヘクサーギャラクシィしか存在せず。未だ謎が多い空間でもある。あのミスティックファイブ(五つの謎)の一つエネルギーでもる無限回路メビウスのエネルギーもエディト空間を通して流れているとネテリークから教わった。エディト空間の何処かにエネルギーを流している施設があるのではないかとヘクサーギャラクシィの学者がにわかに推察しているそうだ。

エディト空間はヘクサーギャラクシィの銀河内しか存在しないためヘクサーギャラクシィ内から発信できてもヘクサーギャラクシィ圏外の銀河から発信、返信は不可能なのである。

ネテリークは食卓の席を離れ。小型通信機を手に取り。耳に装着する。


「もしもしネテリークだ。はあ、そうか、了解した····。」


ネテリークが耳つけ用小型通信機で話終えると食卓の席に戻ってくる。


「誰からだったんだ?。」

「アースエジュケイション(地球教育機関)だ。明日視察にくるそうだ。」

「うげぇ。」


大翔は嫌そうに顔をしかめる。


「アースエジュケイションがここに来るのね。」


愛音が大翔に問う。

愛音もアースエジュケイションには良い印象を持っていない。何故なら大翔の面会することを断われたからだ。なので仕方なく自力でこの辺境の銀河であるヘクサーギャラクシィまで遥々大翔に逢いに行く羽目になったのである。


「ああ、嫌味たらたらの視察官がきてはほぼ罵倒や野次の嵐だよ。」

「はあ~何それ?。そんな奴らさっさとぶっ飛ばしなさいよ!。」


そんな奴らはたいていぶん殴れば黙るものである。口でペラペラいう奴はほぼ口だけと相場が決まっている。

レディース総長の経験として間違いない。


「そうしたいのも山々だが。それをしたら問題になるし。ネテリークの元にいられなくなるかからなあ。俺は宇宙冒険者になりたいんだ。その為なら多少の我慢もするさ。」

「そうなの·······。」



火鉢愛音は大翔の決意の言葉にぎゅっと胸が締め付けられる想いがした。大翔は何処か遠く行ってしまうそんな気がしたのだ。


「にしても億劫だよ。また視察かよ。」


大翔は悪態をつく。

本当にアースエジュケイションの視察は視察ではなくほぼ冷やかし嫌がらせでしかない。本当に視察しているのか?というほど視察してない。


「まあ、そういうな。アースエジュケイションという組織がなければ私と出逢うこともなかっただろ?。」

「確かにそうなんだけどよ。」


アースエジュケイションという組織がなければ俺みたいな不良が宇宙に飛び立つ機会なんて一生なかっただろう。けど、それでも納得できないこともある。多分アースエジュケイションとは一生折り合いつくことはないだろう。


「それよりどうするんだ?。大翔。彼女がこの惑星に滞在しているが。アースエジュケイションからしては問題にならないのか?。」

「あ!?そう言えば·····。」


火鉢愛音はアースエジュケイションを通して俺とは面会謝絶と言われたんだ。ここに滞在していることを知られたらどうなるんだろう?。


「それなら丁度いいわ!。そのアースエジュケイションを利用して強制送還することにするわ。帰りの船のことも考えていなかったしね。私がここにいると知ったらアースエジュケイションは絶対強制的に帰らせるだろうし。アースエジュケイションをパシりに使ってやるわよ!。」


火鉢愛音はふんと鼻息をならし。堂々とさらしの胸を張って宣言する。


「大胆だな·····。」


大翔はそんな火鉢愛音の豪胆で大胆な性格を少し好感を持てる。


「ならばそれまでこの家の二階で寛ぐといい。寝床も用意しよう。」

「ありがとうございます。」


いつの間にかネテリークと愛音が仲良くなっていた。馬が合うのだろうか?。


         深夜


火鉢愛音は二階バルコニーに出て夜空を見ていた。無数の星ぼしが帯をおいたように煌めき輝いている。

火鉢愛音はネテリークかりた寝間着を借りて着ている。植物繊維を織り込んだ服のようで風が服を通りすぎる度に肌が気持ちいい。


「眠れないのか?。」

「あ!?ネテリークさん。」


火鉢愛音はネテリークと親しくなった。

師とあおぐネテリークがどういう人物か観察してよく解った。

植物による知識量も豊富で。それでいて強い。レディース総長として修羅場を潜り抜けた火鉢愛音だからこそ解る。彼女はただ者ではない。大翔がそれに気付いているかどうか解らないが。彼女は私よりも強い。そして場数を私よりも数倍も踏んでいる。

ネテリークの家は樹木と一体化した何処か童話にでてくるようなメルヘンチックような家である。時折火鉢愛音は自分が妖精の国にいるのではないかと錯覚を覚えてしまう。正直自分はそういうのを好むたまではない。

家主のネテリークは緑色の髪と裏葉柳(うらばやなぎ)色の肌をした独特な色をしている。それでいて悪い意味ではないが草なような仄かな匂いをするのだ。いつも薬草を煮込んでいる大翔から聞いているが愛音はそれだけじゃないような気がした。

ネテリークは何も言わずにバルコニーの手すりにもたれる愛音の隣に立つ。


「ちょっと眠れなかったんで。」

「ハーブティでも出そうか?。」

「あ!いえ、お構い無く。ちょっと考えこどしてただけなんですけど。」

「考えごと?。」


愛音は空を眺める。月が蒼く2つ見える。自分が別の銀河、別の宇宙にいるのだと実感してしまう。それで同時に大翔が遠いところで暮らしているのだと実感する。


「大翔なんですけど。どうですか?ここで暮らして。」


愛音は真剣な眼差しで保護者でもあるネテリークに問う。


「ああ、よくやってるよ。薬草積みも楽になったし。ただ多少無鉄砲なところがあるが。」

「はは、相変わらずね。変わってない。いや、変わったのかな?。」


大翔が変わったのか変わってないのか火鉢愛音には判断できなかった。


「何か大翔。何もかも決めて何処か遠くに行きそうな気がしたんです。それがちょっと。」

「不安か?。」


図星をつかれた愛音は目を見開く。

ネテリークは星ぼしが煌めく夜空を眺める。


「大翔はこのヘクサーギャラクシィの謎を追おうとしている。」

「謎?。」


愛音は首を傾げる。


「ミスティックファイブ(五つの謎)と呼ばれるこの銀河系だけにある古からある謎だ。誰もその謎を全て解明できたものはいない。」

「それを大翔を追っているんですか?。宇宙冒険者を目指しているのもそれが理由?。」

「いや、ミスティックファイブがあろうとなかろうと大翔は多分宇宙冒険者を目指していただろう。あいつははっきり言って一つの場所に留まらない性格だ。」

「あっ!?それ、解ります!。大翔は昔から誰かとつるむとかいつくことしないタイプでしたから。」


不良仲間はいたけれど。大翔は彼らといつもつるんでいるが。馴れ合いとかそう言うかそれ以上深入りしなかった。

いつもなにかとスリルを求める性格だったし。強い奴を見かけれれば誰構わず喧嘩をふっかけるようなそんな性格をだったし。


「宇宙冒険者か······。」


火鉢愛音は呟く。

このままレディースの総長を続けても大翔は遠くの更なる遠くの宇宙に行ってしまうのかもれない。そしたら一生想いも告げることはできなくなる。

火鉢愛音は少し心が滅入ってきた。


「少し提案だが。大翔のことを一緒になりたいと思うのであるなら宇宙冒険者を目指してみてはどうだ?。」

「い、一緒ってな、何のことですか?。え、ていうか宇宙冒険者になるって?。」


愛音は焦り狼狽えキョドりだす。


「見ていて解る。大翔に惚れているのだろう?。なら宇宙冒険者になって彼の傍で彼を支えてみてはどうだ?。」

「わ、私には無理です!。私はただのしがない族の総長です?。宇宙冒険者になれるわけないじゃないですか。」


宇宙パイロット専門的な訓練や正式な宇宙カリキュラムなど一切受けていない。宇宙冒険者なるなど夢のまた夢である。


「だが、大翔は不良だが宇宙冒険者になることを目指してるぞ。。」

「でも大翔はネテリークさんと一緒にいるから。宇宙冒険者としてのコネもありますし。私は全然ありませんから。」

「コネか····。ならば火鉢愛音。コネでこの辺境の未開惑星にたどり着けたのか?。違うだろ。コネも金もないのに私の未開惑星にたどり着くなど本来ならあり得ない。つまり宇宙冒険者の素養があるということだ。」

「私が?。」


ネテリークに宇宙冒険者の素養があるといわれ火鉢愛音は困惑する。


「今後どうするか自分が決めればいい。だが後悔ないを選択することだ。お前達はまだまだ若い。私にはもう大翔の行く末を長く見届ることはできないからな····。」

「それはどういう意味で?。」


ネテリークの意味深な言葉に愛音が何故か胸騒ぎがした。


「気にしなくていい···。ただの年配者の戯言だよ。それよりも火鉢愛音。お前はお前自身のことを考えることだ。時間はあるようで短いものだ。特に地球の惑星人(ネヴィト)は他の惑星人(ネヴィト)比べて短命だ。だからこそ限りない命をこのほしぼしから消えゆくまで燃やしつくすのだ。後悔も憂いも無いようにな。」

「私は······。」


ネテリークの言葉に火鉢愛音は深く考え迷う。。


「迷ってもいい····。ただ迷いに踊らされるな。迷いは迷いでも通過点ではない。迷いに迷っても結局決めるのは己自身だからな。」


ネテリークはそうアドバイスすると愛音に軽い挨拶して再び家の中に入っていく。

一人になった愛音は満天のまるで銀河を鏡で写した星空を眺める。


「宇宙冒険者·····か·····。」


遠い遠い宇宙の果てに地球からやってきた少女は新たな路を示され。己の中に生まれた小さくも大きい想いに身と心を馳せる。







▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


ザークから連絡が入り。新しく発見した未開惑星の資源探索を手伝うことになった大翔。そこで価値のありそうな鉱石を発見する。


次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第29話

     『無価値な鉱石。』


不良少年は荒波の海へと飛び込む······

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