イベントが終わり



夏のイベントが終わり、俺は駅で優衣と小夜と別れて真っすぐ家に帰る。

家に帰った後は、汗まみれだった服を脱いで、直ぐにシャワーを浴びて嫌な汗を流した。


服を脱いだ時、かなりシャツが水分を含んでいてかなり驚く。

こういうイベントに参加すると三キロ痩せた。とかネットで聞いたことがあったけれど、これだけ汗をかくなら、誇張ではなく、意外と本当なのかもしれないな。

小まめに水分補給をしていたが、ここまで汗をかいているなら、風呂に入る前に水分補給をしておいた方がいいな。

スーパーで安くなっていたから箱買いした五百ミリリットルのスポーツドリンクを一本飲んでから、シャワーを浴びてみた。


風呂から上がり、着替えて夕飯の支度をしていると、優衣と小夜から家に着いたというメッセージがきていた。

大丈夫だと思っていたが、無事について良かった。

優衣の場合は家まで大通りが近くて比較的安全な道のり。

小夜は今日イベントへ行ってくることを伝えていたらしく、家族が車で迎えに来たらしい。


俺は二人にお疲れ様。と返事をしながら作り終えた夕食を食べる。


ま、今日のところはレトルトの牛丼だが。


「あ、とろろ様渡し忘れた」


俺は即座に二人にとろろ様のマスコットを渡すことを忘れたことを謝るメッセージを送る。


すると、二人も忘れていたいたらしく、今度取りに来ると返事が来た。

俺は少し考えて、優衣と小夜に一つ提案をした。


ちょうどいい機会だから、第二回撮影会したい! と。

優衣が微妙な空気のスタンプを送ってきたけれど、いいよと承諾。

小夜ももっと撮影したいのでOkです! と返事が来た。


今すぐではないが、ついでに宿題もするか? と優衣と小夜の二人と話をしながら、今日は一日が終わった。


うん、次に会う時が楽しみだ。





「五、六、七、八、九……十っと」


イベントの翌朝。午前の日課の筋トレをしながら、今後のことを考える。


学生らしい夏休み、普通のデートは優衣も望んでいない。

プールにでも行く? と誘ったがうーん。となっていた。

アニメショップ巡りは? と聞いたら、悪くないですけれど今はほしいモノがまったくないですね。

逆に、優衣にどこか行きたいところは? と問われれば、俺も行きたいところが無いな。


遊園地や水族館などに行きたいかと問われれば微妙だ。


あ、でも夏祭りは行きたいから、既に話をしている。

夏祭りは優衣も花火は好きなので、一緒に行こうと嬉しそうだったのが救いだった。

夏祭りが何かの理由で中止になったら、俺の家で手持ち花火をしてもいいだろうしな。


そんなことを考えながら、日課の筋トレを終わらせると優衣から浴衣の画像が送られてきた。

古風なと言えばいいのだろうか? 紫系の朝顔の浴衣だった。


見せてくれてありがとう。とても似合っているよ。と返事を返して、俺は風呂へ。

ざっと汗を流して身体を拭いて着替えて、メッセージを確認すると優衣は俺に甚平姿を希望してきた。


一応、俺が紺色の甚平を持っているのは知っているので俺は直ぐに着替える。


「自撮りって苦手なんだよな」


そう思いながら、甚平を着て屈みに反射した自分、顔は隠しているが画像を送った。


ちょっとして、優衣から腹筋見せてと言われたので、俺は腹筋が見えるようにもう一枚画像を送った。


俺は画像を送った後、リビングに戻って麦茶を飲もうとしていると直ぐにまたスマホが震えたので確認すると優衣は今度上半身を見せてほしいとメッセージを送ってきた。


随分と積極的だな。と思って俺は上半身裸で画像を取ってから、撮影して画像を送る。


それから数分何も返事が来ないので、まあ、忙しいのかもしれないと思って放置しながら、のんびりしていると。


優衣から電話がかかってきた。


「どうした?」

『ごめんなさい』

「なにが?」

『お姉ちゃんが変なメッセージを送った』

「……ああ、さっきの腹筋とか上半身とか?」

『そう、それ』


積極的なお願いだなぁ。と思っていたけど、なるほどね。


「あははは、男の裸なんて減るもんじゃないから気にすんな。けど、何故そんなことに?」

『お姉ちゃんに、ちょっと昨日のイベント三人で行ったから、その話をして』

「うん」

『ちょっと、自慢したら興味を持ったらしく、私が少し目を離している隙にスマホで』

「妹の彼氏がどんな奴か確認したかったわけか」

『うん、お姉ちゃんが睦月さんの上半身の裸の画像を見ながら、彼氏にもう少し警戒心を持つ方がいいよ。とか言われてちょっと』

「ま、いいさ。顔も映ってなかったはずだしさ」

『そう言うわけには……』

「なら、次あった時、色々とおねがいしようかな」

『な、なにを?』

「色々、とりあえず、分かった。あまり気にしなくていいぞ」

『う、うん、けど出来ればお手柔らかに』

「ふふ、分かっているよ」


俺はそういってスマホでの通話を切った。

そして、小夜にメッセージを送る。


――小夜、次会った時、優衣に来てほしい服って何かある?


――バニーガール


――衣装、持ってる?


――無いね


――なら、別なモノに。


こうして、俺と小夜の優衣のコスプレ衣装を何にするか、決まるまで結構な時間がかかった。



数日が過ぎた。とろろ様のマスコットを渡し忘れたことをきっかけに、俺と優衣、小夜はまた俺の家に集まることになった。


優衣と小夜をリビングに案内して、最初に渡し忘れたとろろ様のマスコットを二人に手渡す。


「うーん、やっぱり可愛いですね。とろろ様」

「そうだな」

「……可愛い、かな?」


随分と気に入った様子の小夜に比べると、ちょっと首をかしげている優衣。

まあ、価値観は人それぞれだからな。


とろろ様可愛いと思うけれどな。

俺は二人の為にお茶を用意しながら、アオハルについて話し合う二人を微笑ましく眺める。

学校では俺も優衣も、ボッチだからな。何となく優衣が別のクラスの女の子とは言え、同世代の女の子と話しているのを見ると微笑ましい。


「二人とも、良かったら食べてくれ」


用意しておいた、駅ビルでも人気のあるアイスクリームのカップとアイスティーを持って、二人の元へ。


「あ、これ人気の奴ですよね」

「食べてみたかった」

「それは良かった」


のんびりアイスとアイスティーを食べながら、購入特典のドラマCDを三人で聞くことにした。


かなり気合の入ったパッケージイラストとボリュームのある内容で、全員が満足した。

事前にネットでストーリーを見ていなくても、大丈夫な内容なのは確認していたので、まだストーリが途中の優衣の希望もあって、聞いたのだが。

うん、これは良いモノだね。


それからしばらく、ドラマCDの内容について話していたが、ちょうどいい感じに話が途切れたので、俺は優衣にお願いを聞いてもらうことにした。


「じゃあ、そろそろ。優衣に俺のお願いを聞いてもらおうかな」

「わ、分かった」


俺の言葉に少し怯みながらも、優衣は了承してくれた。

横では小夜がいそいそと、楽し気に準備を始める。


さぁ、ショータイムだ!




今回の優衣のコスプレ衣装はチアコスチュームだ!


夏と言えば? 海、山、プールに夏祭り。部活動は全国大会。

毎年、高校球児達を応援する人たちも多いだろう。

そして、学校によっては存在するチアリーディング部!


まあ、日本だとマイナーだけどね。


「どこから、持ってきたんですか?」

「私が持ってきたんですよ」


チア衣装は小夜が持ってきた。これも昔の遺産らしい。


「サイズ……」

「サイズが合わないからこその美です!」


うん、言いたいことは分かる。けど、女の子がそういうことを言うなよ。


「私にぜひ見せてほしいのです。南半球を!」

「うん、俺が言うのもなんだけれど、毒されているな」

「そうですね。素質がある人間が一度転がると、こうなるんですね」

「あれ、しかして、お二人は引いています?」


普通、二次元のイラストで巨乳キャラの下乳を見て、南半球だ!エッッ、と思うのは分かるさ。

口には出さないが、コメントなどで残すのは分かる。それを堂々と言う小夜。この子、将来大丈夫かな?

セクハラとかで捕まったりしないかな?


「まあ、とりあえず、着替えて」


俺は気を取り直して、優衣にチアコス衣装に着替えてもらった。

青を基調とした爽やかなイメージのコスプレ衣装だ。


「……」

「こ、これが本物の乳カーテン?!」


 一応、小夜の持っている衣装では、サイズが大きい方だったが、身体の一部がどう頑張っても無理だった。


「あまりジロジロ見ないで」

「いや、目をそらしたら失礼かなって」

「はい、これは凄いです。拝んでおきましょう」

「そうだな」


俺と小夜はほぼ同時に両手を合わせて、仏に祈るように拝んだ。

どこを、とは言わないが。


「着替えていい?」


ちょっと怒りを込めてそう言いだす優衣に俺も小夜もあわてて頭を下げる。


「ま、まあ、とりあえず。チアっぽいポーズをってもらえるか?」

「カメラ、カメラ」


そこから、小夜が主体となって撮影をしていく。


小さめのポンポンを持って、ちょっとぎこちない笑顔だが優衣はチアっぽい感じでポーズをとっていくのだが。


「あ、足が上がらない」

「あら、意外と優衣さん身体が固いんですね」

「う、うん」

「柔軟とかって積み重ねらしいからな」


俺も身体を鍛えていた時、準備体操以外で柔軟しなかったんだよね。

今は出来るだけ、やっているけれど。


「小夜は身体が柔らかいのか?」

「はい、開脚して床にべたっとできますよ」


マジか、結構苦しいんだよ、あれ。


「でも、残念です」

「何がだ?」

「足を蹴り上げている状態で、優衣さんをローアングルで撮影したかったのですが」


最初は腹いせの盗撮。その盗撮がエロいモノを撮る快感を手に入れて、最近ではコスプレイヤーを撮ることにハマっている。

アンスコとはいえ、足上げしている状態のローングルからパンチラを撮れないと分かって本気で残念な表情をするコイツは本当に残念美少女だな。


「仕方がありません。優衣さんちょっとぴょんぴょんしてもらえます?」

「分かってて言ってますよね? 断固拒否します」


ブルン、ブルン激しく動きそうだと思ったが、俺はアニメやゲームだけが出来ることだろう。

胸が大きいと不用意にジャンプすると胸が痛いらしいな。


「うーん、じゃあ。睦月さんはどうですか? 何かリクエストをした方がいいのでは?」

「そうだなぁ。チアコスチュームか」


じゃあ、とりあえず。俺は床のカーペットの上に仰向けに寝転んでみる。


「睦月さん?」

「何しているんですか?」

「優衣、俺にまたがってくれるか?」

「…………何故ですか?」

「その状態でがんばれ♪ がんばれ♪ って、俺の事を応援してくれないか?」


小夜は思い切り吹き出して笑い始め、優衣は俺の腹を思い切り踏んだ。

最後は優衣も仕方がないとばかりに深いため息をついて、俺の願を叶えてくれたが、終わった後で優衣が拗ねてしまって、優衣の機嫌を直してくれるまで大分時間が必要だった。

優衣の拗ねた表情も可愛いけれど、話をしてくれなくなったので今度から気を付けないとな。


ちなみに、小夜の撮影技術はやはり高い。

リビングで撮影していたが、自然と壁を背景にしていたりと、生活感なくしてそういう作品のように見せる撮影に見える画像だった。


ある程度撮影会をした後は、三人で昼を作ってみたが。

優衣が買った国民的RPGの一つの作品に出てきた料理を現代風に手直ししたレシピ本を見ながら作ったのだが、三人で盛り付けなどにも気を付けてかなり楽しい時間だった。


欧州系の味付けだったので、俺は食べ慣れなかったが全員が満足いく結果で、また作ってみようと約束をした。


「次の冬のイベント、楽しみですね」

「新刊出るといいな」


料理のレシピ本に満足する優衣を眺めながら、俺は冬のイベントの時には何かしたいなと思うようになっていった。

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