7月になった。


蒸し暑い、何もしていないのに、汗をかく季節だ。汗フェチの人には堪らないのだろう。

俺の知り合いにも女の子の汗とか大好物なヤツがいる。


俺は好きな人の汗なら平気だな。

出来ればお互い全裸で、汗でびちょびちょな状態で正面から抱き合う形がいい。


暑くても好きな人と解け合える感覚になるぜ。絵面がかなり危なそうだがな。


だから、今は優依と手を繋ぐことだけで我慢する。


俺の手と優依の手を繋いで、汗ばんでいるが、手を繋ぐことが出来るのは嬉しい。


教室では話も出来ないしな。


「蒸し暑いな」

「そうですね」


文芸部の部室。

お互いに手を繋ぎながらも、もう片方の手でスマホを操作する。


優依も一緒に大作の育成ゲームをしているのだが、イベント期間中なのでちょっと進めておきたいのだ。


「うん、今回は良いこと感じだな」

「誰育ててる?」

「アンネロッテ」


総合アスリートを育てるゲームで、俺が育てているのは爆乳のアンネロッテという縦ロールの金髪の超名家のお嬢様。と見せかけた没落したキャラだ。


超努力家で才能もあるが、運が微妙に無いので、僅差で負ける。大会へ移動中に事故で移動でになかったりと、苦労するタイプでもある。


「乳で選んだ?」

「はい!イタタタタタッッッ!!!」


手を思い切り握られた。あ、ちなみに俺達はお互いの指を絡ませる、恋人繋ぎをしている。


嫉妬は可愛いけど、マジで痛いっす!


優依と俺は毎日濃厚接触をしている訳ではない。俺が日雇いのバイトをしている時もあるし、優依も優依で家の用事もある。


母子家庭で家の家事を優依がやることが多いらしい。


だから、放課後二人きりで過ごせるのは大事な時間だ。


「ありがとう、短時間に結構ポイント稼げた」

「それは良かった」


遊んでいるスマホゲーは協力アクションではないが、イベントを効率良くクリアすることを考えるとゲーム内のチームなどで声かけをするのがいいが、チームメンバーは俺達よりもエンジョイ勢。あまりそういう効率プレイをさせるのは悪い気がするし、空気が悪くなるのも嫌だ。なので、今回は二人で連携した。優依が育てたキャラと俺の育てたキャラでチームを組んで大会に出て試合で勝利を目指す。お互いに持っているキャラの方向性が違うのでチームを組みやすかったな。


「じゃあ、今日はこの辺りで」

「うん」


スマホゲームのホーム画面で、超お嬢様キャラのアンネロッテがオホホホと笑いながらゆっさゆっさと爆乳を揺らしている。俺はシステムからゲーム終了を選択して、ゲームをやめる。


スマホを消して腰のベルトのスマホポーチにスマホを入れると、優依もスマホポーチにスマホしまった。実は色違いだがデザインはお揃いだったりする。


「……睦月さんは、お嬢様キャラは好きなの?」

「ん、ああ、好きと言えば好きかな。ラノベのお嬢様キャラって、悪役なら小者が多いけどさ、味方側って努力家が多いだろ」

「うん」

「それが最初、羨ましいくてさ」

「羨ましい?」


アニメやゲームが好きになった切っ掛けは、憧れ。それと現実逃避だ。


当時の俺は今以上に人付き合いが苦手だった。両親は共働きで、一人で不安な心をどうにも出来なくてさ。相談したくても子供だから言葉に出来ないし、相談出来る大人何て何処にもいない。そんな時にテレビに映っていたのが、ある作品のお嬢様キャラだった。最初は嫌いなヤツだったが、ヒロインを見下したり、高い目標をクリアしろ。と言うので嫌いだったが。本人が努力、努力、努力で優秀になったから、そう言う言動になった訳だ。


プロ音楽家を目指している訳でもないのに楽器の猛練習していたり。勉強も大学レベルの知識を得たり。名家に産まれたからには恥ずかしくないように、と。


「俺は彼女達みたいになりたいと思ってさ。彼女達は、物語で最後まで諦めなかったから」

「諦めなかった?」

「ほら、お嬢様キャラって、基本的に主人公と結ばれないだろ?」


俺の言葉に優依はあっと言う顔になった。

作品にもよるけど、恋愛で噛ませ犬になることが多い気がする。


「言われてみれば、お嬢様キャラって恋に破れたら潔く身を引くイメージがあるわ」

「うん、俺も優依と仲良くなりたくてさ、かなり本とか読んだんだよ。けど、優依が俺を警戒しているの分かってたから、内心かなり必死だったんだ。けど、諦めずにアプローチして良かったよ」


お嬢様キャラ達と違いはライバルが居なかったことだろうな。


優依が好きになった時、俺は小さい頃に初恋は経験していたけど、恋心を自覚して好きになった女の子に、どうすれば優依と恋人同士になれるか考えられるようになった。


「それは、ごめん」

「いや、女の子だから男を警戒するのは当然だと思うぞ」


俺が好きになった理由の一つは、たまたま外の体育の授業で優依が暑くてジャージの前を開けてパタパタしている時のおっぱいに見惚れたからだ。


優依のおっぱい見て、恋に落ちた男とは優依も知らないだろうけど、優依からみて下心ある同級生が近付いてきたら、警戒するのは当然だ。そこは仕方がないさ。


「それに、今俺は優依と恋人同士になれた」

「うん」

「先のことは分からないけどさ。優依、これからもこうして一緒の時間を過ごしたい。のんびりするのもいいし、ゲームするのもいいし」


俺は自身の両腕を優依を脇の下に回して、優依を抱き締める。俺に優依も身体を預けてくれる。


ムニュッと優依の爆乳が俺の胸板にゆっくりと押し付けられていく。


あぁっ! なんて心地好い! 昨日頑張って発電して良かった! そうしなければ、俺の主砲が砲弾を装填して全力戦闘を開始しただろう。


「優依がやりたいことも、二人でやっていこうぜ」


俺の言葉に優依は俺の左肩に軽く顎を乗せながら小さくコクりと頷いた。


「あ、夏のイベントは、一緒にコスプレしたい」

「え、二人でコスプレ出来そうなキャラいる?」

「これ」


優依は軽く自分のスマホポーチを撫でると笑顔で俺に告げた。


「夏だから、水着イベント時の衣装とかどうかな?」


好きな女の子が好きなキャラのコスプレをする。控えめに言って、神展開!


俺は興奮のあまり、優依のおっぱいに顔を埋めた。突然甘え始めたと勘違いされて俺はしばらく優依に頭を撫でられ続けた。


やべぇ、ちょっとバブみの良さが分かったかも。



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