ずっと君と

無色の無情

第1話

「離れよう」


君から唐突にメッセージが来た。


5年間付き合っていた彼女。遠距離恋愛で年に数回しか会えなかった彼女。


僕は鼓動が妙に重く、速くなるのを感じた。


足が痺れそこから冷気があがるかのように頭までそれが伝わる。


「どうして?」


僕は問う。


「付き合うってことが」


「恋愛がわからないの」


彼女はそう言った。


「僕のことが嫌いになったの?」


混乱する心と思考をクリアにすべく僕は息を吸おうとする。


しかし肺は僕の物ではないかのように息を吸うことを拒む。


「好きだよ」


「でも5年間まともにあっていないのに」


「そんなのを付き合っているって言いたくない」


わかっていた。彼女が不満そうにしているのを。


彼女が悩んでいたのを。


自分が彼女にできることは何もないということを。


不思議と好きだよと言われても全く心が満たされなかった。


「離れるって?別れるのとどう違うの」


彼女は


「自分探しをしたいの」といった。


「そのために一旦君と離れて恋が何なのか知りたいの」


「正直今の私たちは友達と何も変わらないじゃない」


身勝手だと思う自分と、彼氏らしいことをしてあげられなかった自分のせいだろうと思う自分がいた。


「期間を決めよう」


考えた末に出せたのはこれだけだった。


「大学生になるまででどう?」


僕たちは高校二年生。今外で振っているジメジメとした雨を見ながら大学生になるまでどのくらいの期間あるか数える。それはあまりにも長いと思った。


しかしそれよりも長い間彼女は悩んだのだ。


「わかった」


「これからは親友だね」


彼女はほっとしたように


「よろしくな!親友!」


と送ってきた。


画面越しの彼女は微笑んでいるだろうか。泣いているだろうか。


それとも何とも思っていないのだろうか。


頭が痛い。考えたくもないことがまるで湯水のように沸き、頭を焦がしていく。


「おやすみ」


僕はこれ以上彼女としゃべりたくなかった。


「おやすみ!」


彼女はスタンプまでつけてご機嫌そうにそう言った。




























僕は確信した。


もう彼女が僕の物になることはないと。


しかし僕は彼女に恋をする。


狂ったような恋をする。


スマホから目を離すと目頭が熱くなって上を向きそれを抑えようとした。


そこには美しい女神がいた。


「泣かないで」


彼女はそう言った。


「あなたを彼女のそばに永遠にいさせてあげる」


彼女は笑った。


美しいのに背筋が凍った。脳は痺れていた。


僕はもう生きることにつかれていた。


「いらっしゃい」


彼女は優しく僕を抱擁した。






















































僕は今彼女とともにいる。


彼女の心の中に居続ける。


実体のない体になってしまったが彼女のそばにいられるならそれで良かった。


僕は彼女のトラウマとして今日も彼女のそばで「君のせいだ」と囁き続けるのだった。

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