第7話 魔法使い ①

ルビー・フェリン 17歳

女 LV18

ウィザード

趣味 妄想

健康状態 優良


「そろそろ、出発するよ」


うーん、頭がボーとする。

知らない間に新しい体に魂が吸い込まれていたようだ。

前回の猫剣士の出来事がショックで、思考回路が停止していたのか。


「おはようございます」


しばしばする目を擦りながら、前を見ると男女合わせて4人の姿。

ルビーの頭の中を覗き見る。


ダッシュ 26歳 男 重騎士   LV33

サラス  24歳 男 アーチャー LV29

バラン  22歳 男 ランサー  LV31

シルビア 24歳 女 シーフ   LV32


おお、全員レベルが高めのメンバーだな。

なになに、パーティー名は、『激高の暁』か。

どうやら、上を目指す冒険者達と一緒なのか。


今の俺は、レベル18だから、彼らのお荷物的な存在なのかな?

魔法使いを育てるためにパーティーに入れてくれたのかな?


彼女はどんな魔法を使うんだろう。

イメージは、おおー凄い。

彼女が、爆裂魔法を炸裂させる光景が見えた。


それ以外は、どうなんだ。


【光属性】 ライトニング

【火属性】 ファイアーボール、ファイアーストーム

【風属性】 ウィンドカッター

【水属性】 クリエイトウォーター

【土属性】 ウォール、ピットフォール、

【治癒】  ヒーリング、ハイヒーリング


これだけかよ!

ルビーは、これから頑張って成長する女の子なのか?

彼女のイメージで見た爆裂魔法は、妄想か?

彼女の趣味?夢なのか?


「ボーとしてないで、早く出発するぞ」

「すみません、直ぐ行きます」


リーダーのダッシュを先頭に他のメンバーが歩いて行く。

俺は、遅れないように後に続いた。


「ルビー、あんた、正式なメンバーになりたいんだろ」

シーフのシルビアが、俺と並んで歩きながら肩を組んできた。

「はい、是非ともメンバーにしてもらえるよう、頑張ります」


ここは、無難な返答をしておこう。

俺は、・・・シルビアは、仲間を探していたのか。

それなら、俺も体を借りている間、しっかりと協力させてもらうよ。


しかし、冒険者パーティーで行動しているのなら何か目的があっての事だろう。

何処を目指して進んでるんだ、気になるぞ。

ルビーの記憶では、あっ、ダンジョンか!

ダンジョン攻略に参加している。


異世界らしいイベントにやっと巡り合った感じだな。

無事、ダンジョンのラスボスを倒せたら、どんな気持ちになるんだろう。

生死をかけて、仲間と一緒に協力して戦う。

ここは、みんなの足を引っ張らないように注意しなければ。


「みんな、止まって」

「どうした、サラス」

「何か、居る!」


俺も含め、全員が戦闘態勢に入る。

俺が使える魔法の中から最善の物が選べるよう準備した。


ガサガサ、ガサ。

森の中からオーガが3体出てきた。


リーダーのダッシュが、盾を構えて先頭のオーガに向かって行った。

右奥の1体にサラスが、矢を射るとバランがすかさず槍で攻撃を加える。


「ルビー、私たちは左奥のオーガを攻撃するよ」

「了解です」


レベルの低い俺が出来るのは、効果的に魔法を使う事だよな。

オーガの顔めがけてウインドカッターを放つ。


「でかしたよ、あんた」

運良くオーガの目にウィンドカッターが当たり、視力を奪った。


「ここからですよ、シルビアさん」


もう少し、近づいて魔法を使いたい。

走り出したらなんか今まで感じたことのない違和感がある。

なんだ、走りにくいぞ。


胸だ!


胸が重い、しかも上下に揺れるからバランスが取りにくい。

ルビー・フェリンさん、あなたは、何て立派なお胸をお持ちなのか!

17歳にしてこの巨乳、男性受けは良くても、戦闘には邪魔だよ。


「ルビー、近づきすぎると危ないから、下がって」

「大丈夫ですから、援護してください」


よし、目を抑えて暴れるオーガに近づけた。

今から、ゆっくりと料理してやるからな!


「ピットフォール!」

オーガの足元から地面が消えて、出来上がった穴に落ちた。

「今ですよ、シルビアさん」

「あいよ!」

穴から頭だけ出しているオーガの首にナイフを突き刺す。

戦闘が終わった、バランも穴に落ちたオーガを槍で突き刺してくれた。


「みんな、無事か?」

「リーダー。全員、無事です」

「待ってくれシルビア。サラスが、腕に怪我をしている」

「ここは、私に任せて」


俺は、サラスの腕にハイヒーリングをかけた。

傷は、見る見るうちに消えていく。


「ありがとう、ルビー」

「痛みは、ありませんか」

「ああ、何ともない」

「さすが、パーティーにウィザードが居ると助かるな」


リーダーに褒められると嬉しいもんだな。


「じゃあ、ダンジョンまでもう直ぐだから急ごうか」

「了解!リーダー」


ダンジョンの入り口に着いた。

ここからが、本番だ。気合入れて頑張るぞ!


「じゃあ、みんな、これからダンジョンに入る。気を抜くなよ」

「当たり前だよ、俺もサラスもルビーもいつも通りリーダーの背中を守るよ」

「嬉しいこと、言ってくれるな。今回のダンジョンは深くないけど、ラスボスは、レベル30のサイクロプスだ。今の俺たちが協力すれば必ず倒せる」

「倒せるよ、頼もしい魔法使いも居るからね」


シルビアが、俺の腕を掴みみんなの輪の中に加えた。

「いやいや、皆さんの足手まといにならないよう頑張ります」

「なに言っちゃんてんのよ、ルビーちゃん。あんたレベル30でしょ」

「えっ?」

「余裕よ、余裕。パーティー全員がほぼレベル30なんだから絶対に勝てるよ」


どうして、俺の・・・ルビーの本当のレベルは、18だけど。

皆は、同じレベルだと思って受け入れてくれたの?


ルビーは、嘘をついてこのパーティーに加えて貰ったのか。

絶対にやってはならない事をやったな。

生きるか死ぬかのダンジョン攻略だぞ!

自分のレベルと実力を偽ったら、メンバーを危険に晒す事になるじゃないか。


しかし、どうするかな?

ダンジョンに入る前に嘘ついてたことを告白しようか。

このまま、ダンジョンに入ってもラスボスと戦う時に、俺はみんなの邪魔になる。


覚悟を決めて、みんなに話そう。


「じゃあ、行くよ!」

え、ええ、シルビア待ってよ、腕を離して俺の話を聞いてよ。

ルビーの強い意思が影響しているのか、肝心な話をしようとすると口だけが動いて、言葉は出なかった。

















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