かぐやの住人は郷愁に駆られて

家族が抱える、老いと言う足枷。父親に先立たれ、趣味も無くなり、朝寝坊になってしまった母親の貴久。離れて暮らす姉妹は余り知らないが、母親は結構な頻度で「帰ろう」と言うニュアンスの発言をしている。要介護認定も出た。いよいよ認知症と本気で向き合う日々が始まろうとしていて……
どこの家族にも普遍的に訪れる老いること、忘れることが、確かな筆致で書かれた作品だと思います。
認知症の気持の揺れは一時的な発作のようなものなので、早く、どんな言葉を掛け、どんな誘導を心掛けるかが問題だと。
例え記憶に留まらなくても、旅行をしたり、食事会を開くことは、家族にとっても本人にとっても有益な時間になるのでは?
この物語はそう言う配慮を満たしていたと思います。