第7話『臨時収入を得た』

目の前には三体の死た……じゃなくて失神した三名が転がっている。若干やり過ぎ感があるが、気にしてはいけない。


一先ず失神し、動くことが出来ない三人を俺は紐を使って拘束をした。かなりキツく縛ってあるので刃物で切られない限り、この拘束が取れる事はないだろう。因みに腕や脚が一部青白くなっているのは俺の見間違いだろう。


三人を引きずりつつ、俺は門へと辿り着いた。引きずり向かっている際に、俺は周囲から好奇な目線を浴びせられていた気がする……何故なのだろう?


しかも門を普通に通行出来ると思っていたのに、『子供なのに銀等級の冒険者を倒したのは可笑しい』とか言われて、小一時間拘束されてしまった。というよりあの三人組は冒険者だったのか……後で自律組合ギルドに抗議しておこう。


拘束され、一時間程経った頃にイライラが絶頂に達してしまい、禁忌魔法を使って洗脳してしまったのは流石にやり過ぎたかもしれない……


俺を見送る時に『ジカンヲオトリシテ、モウシワケゴザチマセンデシタ』と片言で話していた。きちんと話せる様にする筈であったのに、片言になるほど魔法の効力が薄いと、悲しい気持ちになってしまう……


今度様々な魔法の訓練をしておこう。尚とある島が蒸発してしまい一時大陸が騒然としたのは別の話だ。


禁忌魔法のお陰で俺は無事イニーツィオの城壁の中へ入る事が出来た。通行税として銀貨一枚を持っていかれた。中には銀貨五枚を取られるところもある為ここは良心的だ。


残念なことに乗り合いたかった乗合馬車キャラバンは既に発車時刻を過ぎてしまっており、馬車もこの街から出て行ってしまっている……


とはいえ先程の三人組は金貨六枚に化けた。棚からぼた餅の臨時収入である。国から雑費を貰っているが、こういう臨時収入がある分には全くもって問題ではない、逆に有難いくらいである。


アーレント王国では、臣民が犯罪者を捕まえると、臣民には褒賞金が与えられる場合がある。そのほかには簡略裁判が行われ、犯罪者奴隷となることが確定している場合に、犯罪者奴隷としての価値の二分の一の金が支払われる。


簡略裁判で奴隷となることが確定するものは、人に対して武器を使用して危害を加えようとした場合と装備を横領しようとした場合が大半だ。その中でも前者が多く、後者は比較的に少ない傾向にある。


俺が今回手に入れた金貨九枚は、犯罪者奴隷としての価値の二分の一の金が支払われる場合の方だ。三人もいたから増す増すお金が増えたのだろう。一人金貨六枚分と考えると、意外と根が弾んだ。


この国の貨幣価値は、金貨一枚=銀貨百枚一枚=銅貨千枚一枚の様になっていて、大体金貨一枚で諭吉さん十枚分、銀貨一枚で野口さん一枚分、銅貨一枚で桜の花の描かれている硬貨に相当する。他にも白金貨や半金貨、半銀貨、半銅貨、小銅貨があったりもする。


この中で流通しているのは半銅貨、小銅貨であり、これ以外は流通していなかったりする。前世でいうところの、守礼門が印刷されたお札の立ち位置である。


臨時収入を異次元宝物庫に入れると、何処からともなく『ぐぅぅぅ〜』と腹の虫の声が聞こえた。幸い次の乗合馬車キャラバンまで、時間がある……


「うん、何処か良いレストランを探そう……」

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