悲しい出来事がありました


 めっきり執筆活動から遠ざかってしまっていますが、ちゃっかり着物活動は続けているワタクシ。

 今年も初詣は娘と着物でウキウキ。イ◯ンの初売りにもそのままの姿で行って、周りにはとーっても褒められました。

 とくに娘は超可愛い小紋(化繊)のコーデだったので、そりゃもう、本当に心踊る年始でした。

 さてはてそんなわけで年も明け、よし! 働くぞー、と、スーパーで張り切って仕事をしていましたら。なんと同僚の人から「着物か浴衣を買ってみたいんだけど…」と! 相談されたのです。

 こういった相談をされたのは初めてでした。私の初詣の話で興味を持ったのかも。娘の着物姿を見せてと言われたし…。

 で、まずはリサイクルの浴衣と半幅帯を購入してみては? ということになったんです。本人も呉服屋はちょっと…というのと、いきなり長着+長襦袢はハードルが高い、とのことだったので。

 ただ、私がよく行くリサイクルショップがその人の家からは遠くて。できれば近場でないかな? という話になり。

 新規開拓してみよう! と、意気込んでしまった………。えぇ、嬉しくてうかれていたんです………。

 だから、うっかり忘れていました。新規のお店に行く時には、メンタルシールドを備えなければならなかったことを。



 グー◯ル先生で『近くにある リサイクル 着物』と検索して、良さそうな着物の古着屋さんを見つけたんです。

 いつも行く方角とは真逆の町にある店。写真にあるのはとっても良さそうな着物達。クチコミには店主の知識が豊富でとても親身になってくれると。

 場所も、相談してきた人のお家の方角。この店、良いかも、と覗いてみることにしました。

 しかし、道から店を覗いていたら店主と思わしきおば様(とても上品な雰囲気でした)が扉から「今は予約しないと駄目なんです。あと、身長とか全身を計ってからでないと売れませんから」と。

 え? ここ、古着屋ですよね? 買う客も(買い取りは予約っていうのは分かる)予約制なんだと、びっくり。

「今時分は、そうですよね。失礼しました」

 コロナもあるし仕方がないかな、と。でも「どういった着物が欲しいの」と聞かれ、「知り合いが着物を手軽に始めたいって言うもので」と軽く説明し、自分は真反対の町で何時も買っていることや、どちらかといえば普段着物を着るタイプで、もっぱらウールや木綿を着ることも伝えました。

 すると店主さん、あからさまに「ウールだなんて。そんなもの売りませんよ。全部捨てます」と、鼻白んだように言うんです。

 あぁ、この古着屋さんは呉服屋さん寄りのお店なんだ、と判断できました。だとしたら絹の良い着物を安く売っているのだなぁ、と。

 少しお話しして、私がそこそこに着物の知識があると感じたのか、何故だか「まぁ、今はお客もいないし、見ていっていいよ」となり、店内へ。

 値段は確かに安かったです。けれど、店主さんのこだわりが凄かった。

「私のお客さんには、周りから笑われない着物を売りたいの!」と。

 十年以内にお仕立てした着物しか置いておらず、流行遅れな着物なんか売ることはできない。商売がしたくてやっているわけじゃない、と。

 これは、まぁ、素直に尊敬できました。が。


「日本人としてちゃんとした着物を広めないと。若い人やおかしな人はウールとか浴衣とかって着ますけど、あんなのここら辺じゃあ笑われます。

 ブーツ履いてベレー帽かぶってって、頭がおかしいと思われますよ!」


 この発言は正直、なんじゃそりゃ、でした。

 一応ね、私も「TPOってありますよね~ 」とは言いましたし。茶道のお茶会でウール着物って話には「それは非常識ですね」ですよ。

 でもですね。カジュアルシーンの着物をイチイチやれみっともないだの恥ずかしいだのって。ソレ口にする方が下品ではないですかね?

 でも何より悲しかったのが。


「古着着物は数千円。ここで買っていく人はクリーニングなんかせず、着ては捨ててますよ。わざわざ洗濯なんてしないのに、ウールなんて」


 って。古着屋さんなのに………。捨てる前提で絹の袷着物を売ってるんですか…………。

 私からしたら、どんなに綺麗な絹の着物で流行を押さえていたとしても、リサイクル着物だしクリーニングせずに着たおして捨てよ、なんて人の方が恥ずかしいんですが。

 流行遅れのウールでも普段着てはお洗濯して、大切に楽しんでる人の方がよっぽど素敵に思えるんです。私は。

 きっと価値観が違う。分かってます。でも悲しい。

 着る物だからこそ価値観が反映されやすい。それも分かってます。着物もファッション。新作が出ては大量に捨てる。そうした価値観の人って一定数いるのも分かってます。でも。

 いわゆる着物警察の一端を見た気がしました。リサイクル着物の場所では、初めて出くわしたかもしれません。

「普段着るのってユニク◯感覚といいますか。気軽に着るってことで、ウールや化繊も良いとは思いますよ」 と言ったら。

「だったらユニク◯の洋服を着た方がよっぽどオシャレだわ」と言い切ったので、美学がおありなのだろうな、とは分かります。

 私の価値観とは違う、着物の好きな人の為のお店だった。ただそれだけのこと。


 ………………大ダメージ受けましたけど。


 でもコレ、私が悪いんです。うっかりシールドを備え忘れていたから。

 古着屋だからと、気を抜いてはいけなかった。着物の店は常にメンタル強固に図太くあらねばならないと、改めて実感いたしました。

 私にはあわない古着屋さんでした。おそらく、あの店主さんも私みたいな客はおよびでないに違いない。うぅーん、次に行こうと思っている店に尻込みしてしまいそう。

 でも行ってみなきゃ、あうかあわないかなんて分からないですからね。めげずに新規開拓していこうと思います!

 ウール着物も木綿着物も、浴衣だって、普段着だからって開き直って、胸をはって着ていきます!

 ナ◯キのジャージを堂々と外で着てて、恥ずかしい人とかみっともないって笑われることってないですもん。ってか、普通の感覚なら他人が道で何を着てようがどうにも思いませんて!

 私のように着物を楽しむ人にも売ってくれる店は存在するはず………と、信じてさすらってみます。

 お店側からしたらとんだ迷惑客でしょうが! メンタルにシールドを忘れずに、厚顔無恥で突き進んで行ってみようと思っています!










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きものん日和 丘月文 @okatuki

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