第二話 耀の祭殿
かつて七歳の祝いに参詣した際には、まだこの国が積み重ねてきた歴史や、この世界にとっての意義を理解していなかったからだろう。あれから少しばかり歳を重ねて改めて目にする
山間に流れる紅河のほとり、そこだけ切り取られたような平地に広がる
「真冬に比べればまだましだけど、それでも結構冷えるからな。ちゃんと暖かくしておけよ」
「向こうに着いたらキムと私の護衛役、よろしく頼むよ、
「お前の護衛とかいつものことだろう。任せとけって」
何を今さらといった顔で、
彼もまた
「ともかく
祭殿までの道すがら、苦々しげに呟く
「端から交渉するつもり無しってことですか」
だが謁見もかなわないとあって、不貞不貞しさこそ似合うはずの大きな口の端にも、さすがに焦りが覗く。
「こうなったら直接祭殿に乗り込んで、多少強引にでも直談判するしかないか」
そんな台詞まで口から飛び出すこと自体が、彼にも打つ手が無いことの表れだ。
案の定というべきか、祭殿にたどり着いた一行はその門を挟んで、神官たちに行く手を阻まれることとなった。
「猊下はどなたとも面会なさいません。お引き取り下さい」
頑なな態度を崩さない神官たちを前に、
「ことは
祭殿は一般の参拝客にも広く開放されている。その正面玄関である巨大な門の下で、押し入ろうとする
大勢の押し合いへし合いに、彼らを取り巻くようにして遠目に見物客も集う。その中にいつの間にか
「あれじゃいつまで経っても中に入れないわ」
三人は
「でも、島主様たちをほったらかしにしていいのかしら」
キムが心配そうに振り返るが、
「島主様たちが騒いでいるから、その隙に私たちは本殿まで怪しまれずに入れるんでしょう。後で話せばわかってくれるって」
そう言って
「
「うん。本殿の地下の書庫の中。そこにこもっているはず」
「なあ、おい。俺たちだけで中に入って、いったい何するつもりなんだよ?」
すると振り返った
「宰師も
そう告げる少女の顔には、まるで敵陣に乗り込むかのような覚悟が漲っていた。
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