外伝

和を以て貴しと為す〈37話・合宿でのひととき〉

「どうして智音さんや麻衣さんはお兄さんの事が好きなんですか?」

「冬ちゃん、気になるの?」

「智音さん、何ですかそのニヤニヤは」

「えへへ、ガールズトークの始まり始まり~」

「べ、別にそんなんじゃ……!」

「守くんは心の友」

「ジャ衣さん……」



 3人の熱意に押された俺は、ホイホイと温泉旅行へ参加したが、やはりまずかったよな。いや、俺を非難する知り合いなんてどこにも居ないのだが。ここにではなく、存在が。

 そうは言ってもこのハーレム的展開は何だ。湯船につかって考えているせいか、上手く自己弁護が出来ない。果たしてのぼせているのは湯加減のせいなのかも怪しいところではあるが。

 神が人生ゲームをプレイしているかのように、突如として俺は様々な体験を強いられた。ゲームオーバーのような展開をいくつも経験したのに、俺はまたしても智音たちと行動を共にしている。学んでいないというよりも、シナリオが鬼畜と責任転嫁したいところだ。



「……二人ともどれだけお兄さんの事好きなんですか」

「えへへ、冬ちゃんもでしょ?」

 ニッコリとこちらを見つつ、心の奥底を見透かしたような眼差し。智音さんはやっぱり油断できない?

「それに守さんが素敵なのは分かるけど、公園で話しかけられた次の日から、ホントに家に来るってさぁ……」

「おしまい!もう私の話はいいですから!」

 弄ぶかのように「えへへ」と笑う智音さんと……湯船で溶けている麻衣さん。ほっぺぷにぷにでカワイイかも。


「あうあうあう」

「ちょっと智音さん、静かにしてくださいよ」

「でもこれ、あう、気持ちいから、あう」

 マッサージチェアに座って、そんな独特な気持ち良さの表現してる人、他にいないでしょ。せめてもうちょっと色っぽくしてれば。てか、バスで酔ってた時も言ってたけど、「あう」って何なの。

「温泉と言えばこれ、はい」

「麻衣さん、ありがとうございます」

「おいしいね~あう」

「揺れながら牛乳を飲むとこぼれますよ」

 私の方がお姉さんじゃん。


「冬ちゃんの寝顔、なんだか赤ちゃんみたいだね」

「もちもち」

 智音と麻衣が椎名を愛でている間に寝てしまわねば!悪いな、もちもち冬ちゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リアルヤンデレに建前はない 綾波 宗水 @Ayanami4869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画