第11話 勇者っ!

 俺はノア、職業は勇者だ。


 俺は、普通の貴族の2男だったんだけれど、ある日、たまたま見つけた聖剣を引き抜いてしまったことで勇者となり、みんなから憧れられた。


 すごい、嬉しかった。


 兄さんはすごい天才だった。


 いつも、天才の兄さんの弟というだけで、俺にも天才的ななにかがあるんじゃないかって期待されて……でも、5歳になって鑑定の儀をしたのだけど、『勇者に憧れるもの』……つまり、勇者に憧れるだけのただの一般人ってこと。スキルも『聖剣召喚(偽)』というもの。


 その剣も、全然強くない、ただの剣。それで……実の両親からがっかりされて……。


 悔しかった……。強くなりたいって思えた。

 

 そして俺は、弱い人の力になりたいと思った。みんなを救って、憧れの存在になりたいと思った。そして……家出すると……


 本当の聖剣を見つけたんだ。


 そして、手にした。すると、職業が『勇者に憧れるもの』から『勇者』になっていた。そしてスキルも『聖剣召喚(偽)』から『聖剣召喚』と『成長補正』、そして伝説の『限界突破』になっていたんだ。


 すると、俺は兄さんや父さんからも尊敬されて……なにか嬉しかったんだ。


 尊敬されるって……こんなにも気持ちいいものなのか。


 そして、今度こそは決めた。みんなを守れる勇者になろうと。


 それが俺。勇者……ノアだ。


 勇者になってから修行を始めた。なんどもなんども失敗するけど、でもだんだん失敗しなくなって。


 いつの間にか、15歳……つまり、成人になったときにはレベルが100になっていた。


 勇者というものには、【限界突破】というスキルがある。それは、いつまでも成長し続けるというもの。それに、もう一つに【成長補正】というのがある。


 これを使うことで、みんなより簡単に成長補正で必要経験値が十分の1になり、成長することができる。



 でも……


 それと同時に……強くなっていくのと同時に、俺はだんだん性格が変わっていった。


 俺より強いやつは、100レベルになった今でも、何人かいた。何年も何年も努力していたやつだ。


 そいつが許せない……!俺が勇者なら、俺より強いやつなんてこの世界に存在してはならない!


 そう思うようになってきた。


 そして、いつの間にか俺の性格は弱いものを守るということはちょっと前までは変わらなかったんだけど、間逆に近いものになっていた。


 俺より強いやつは許せないから、なにか濡れ衣を着させて処刑する。


 弱いやつも、なにか助けて恩を感じさせ、なにか返させる。……それをしていくうちに、それまでもなくなって、魔王を倒すこと以外なにも人助けをしようとはしていなかった。


 なのに、どんどんどんどん魔王を倒すんだから、なにかおれに貢げとまで言ってくる。


 昔、伝説にあった優しい魔王と意地悪な勇者の物語が再び始まろうとしていた。……違うところは、魔王の友達のひとりが村人だということ……あと、結末が逆になるというところだな。


 ……まぁ、その物語は王様が嫌っていたので、この世界にはもう本どころか、伝説でさえ残っていなかったのだけれど。そして、一人もその物語を知るものはいなかった。


 カエデと魔王以外は。あの……家にあった1つの中に、その本はあった。王様はその本を見つけることができなかったんだ。そして、同じく魔王の部屋にあったものも。


 ……まぁ、そうして、この世界で神様や魔王を除いて1番目に強くなっていたのだった。……それに、ふつうじゃない村人も除いて。


 そして、今に至る。


「おーい、『魔王城』に行く準備はできたか?」


「はい、できました。勇者様。」


「はい、出来ました。勇者様。」


 聖女様、賢者様が勇者に向かって丁寧な返事をする。どこか嫌そうな雰囲気だった。


 それもそのはず。この言葉は勇者が二人に向かってこうしないと処刑するぞ……といったからだ。


 それに、なぜか他の人は役立たずだということで、この三人で魔王城に向かうことになったからだ。


 私達は死ぬ運命なんだな……と、聖女様と賢者様は思っている。



「じゃあ、いくぞ。」


「はい。」


「はい。」


 そして、俺らは3人で最大の敵のいる魔王城へ向かったのだった。






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