第一章 村人の復讐
第7話 死の森 1
「ここが、『死の森』……なのかな。」
僕は、今まで住んでいた村から、西にあった大きな国を避けて、『死の森』と呼ばれる場所まで向かった。
遠回りだからか、休憩時間が多かったからか、それとも僕が弱いからか、結構時間がかかってしまった。
でも、休憩時間を多くとったことによってあまり疲れたはいなかった。
「……ふぅ。よしっ、入ってみるか。」
僕は、今はまだあまり怖くない。『死の森』はずっと地竜とかヒドラとかが出るわけじゃない。
浅いところでは、ゾンビやミイラ、スケルトン、レイスなどの魔物がいるらしい。
しかし、その魔物たちでも、普通に強い……っていうか、レイスの場合はやばい。逃げないといけない。
なぜなら、僕は魔法が使えない。そして、レイスは物理は貫通系以外はなにもかも当たることはない。つまり、出会って戦うこととなれば、圧倒的に不利なのだ。
カサッ……カサカサ……。
「……なにかがいるな……。」
そこには、ゾンビがいた。身体が青黒っぽかったり、服もボロボロだったりとすごい不潔感がある。
「《縮地》そして……《気功……》」
僕は、ゾンビの後ろに周り、攻撃しようとすると、ゾンビは偶然にも、後ろを振り返られてしまった。
やばい……!
ゾンビは、《腐食》というスキルを持っている。それは、噛んだものを腐食するという、結構嫌なスキルだ。
それに、噛んだものが人間だと、その噛まれた人はゾンビ、またはリビングデッドという魔物に変わってしまう。
「《縮地》……!《気功剣》」
ザッ……ザシュ……。
「ハァ……ハァ……ハァ……。」
怖かったー……。いきなり命の危機になってしまうなんて。やっぱりこの『死の森』は油断できないよな。
……まぁ、魔物は後ろに振り返らないなんて思ってしまった自分の失態だけど。
ザザザザ…ザザザザ…
「ハァ……ハァ………………ふぅ。次は、骨の魔物、スケルトンか。そして、それも1……2……、4体。複数なのかよ。」
どいつかの目の中に入ったら狙われる可能性があるから、まずは一番後ろにいるスケルトンを狙うか。
そして、とりあえずためしてみたいことがあるしな。
父さんと母さんが死んで、ラファエルを殺すと決めて森を暴れまわったときは、なぜか技を何回も何回もつかったんだがあんまり疲れることはなかったんだ。
それを、いつでも使えるようになるために……!
「《バーサーク(凶化)》」
すごい……!この……なんかよくわからないけど、どこからか力が湧いてくるようだ。これなら、なぜかなににでも勝てそうな気がするよ。
「うっ……くっ……。」
なんだ、すごい頭痛がする。これは、無理に力を引き出しているから、……うっ……激しい頭痛になるのか……。
「いってー……。これは、早めに済ませないといけないな。」
ハッ……!
シュッ……シュッ、シュッ、シュッ!!
「はぁ……はぁ……バーサークは、あんまり使わないほうがいいな。すごい頭が痛かったりして、疲れるよ。」
そして、僕は魔物をたおしつづけるにつれて、そろそろ体力の限界がきてしまった。
そのために、僕は《縮地》を何回も何回も使い続けて、魔物がいるところを避けたりしながら、僕は進み続けた。
「……ふぅ。疲れたー。そろそろここらへんで野宿でもするかな。」
僕は、出かける際に持ってきた母さんのアイテムボックスから、魔物よけと旅行テントを取り出した。
「へぇ……なかは広いんだね。多分、空間魔法かなんかで拡張されているのかな?」
僕は、少しそんなことを考えたあとに、いつものように晩ごはんを食べて、お風呂に入った。
ちなみにお風呂のとき、お湯の魔石がつけられていたからか、ずっとちょうどいい温度で眠ってしまって溺れてしまったのだが、だれにも見られていないし良しとしよう。
その後、布団に入った。
その布団の中に入って、眠るまでの間に僕は明日のこと、そしてさらに次の日のことなどの予定考えてみる。
よしっ、明日からは鍛えて『死の森』の奥の方でも十分立ち向かえるくらいに強くなるまではここにいよう。
やっぱり、ラファエルを殺すと言ってもその前に魔物なんかで死んでいたら、すごく後悔するだろうからな……。
僕は、気づくと、いつの間にか眠りについていたのだった。
そして、目が覚めるとそこから特訓が始まった。
朝ごはん、昼ごはん、晩ごはん、お風呂、トイレ、…………………など、生活には欠かせないことを除いて、それ以外はずっと魔物に立ち向かっていた。
誰にも知られていない事実なのだが、この『死の森』は、時の進み方があまりにも遅いということに、気付かぬまま。
そして、知らないことは……
その間に魔王を勇者が命を代償にして倒して、少しの間だけの小さな平和が訪れたこと。
それに、この『死の森』を出る頃には自分より強いやつをよく思っていない勇者と、人間と一緒に共に生きていこうとしている優しい魔王が出てきていたことも。
でも、そんな新しい世界のことを僕が知るのは、もっともーっと先のことではあるんですがね。
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