第14話 聖女様と登校(おまけにリア充付き)

 長いようで短かったGWも終わり、今日からまた学校が始まる。

 ……あー、学校行きたくない。これが5月病ってやつかー。

 春宮が置いていった晩飯の残りを朝食にしながら、典型的な5月病にかかった俺は怠さにやられていた。


「何かの間違いであと1週間ぐらい休み伸びねえかな……」


 ついでにGWをエンジョイしまくったリア充共も滅ぼしてもらえませんかね、神様お願いします。

 神に願っていると、部屋のインターフォンが鳴らされた。

 多分、春宮だな……。


「くぁ……開いてるから入ってきていいぞー」


 あくびを1つしながら、外にいる来訪者に入室の許可をすると、直ぐに控えめな音と共に扉が開かれた。

 案の定、制服に着替えた春宮だった。

 頭には俺がプレゼントしたリボンが付けられていて、少し直視をするのに気恥ずかしさを感じる。


「おはようございます、秋嶋君。……って、まだ着替えてなかったんですか?」

「おはよう、春宮。いやー、もう体が怠くてしょうがないから神様にあと1週間ぐらい休み伸ばしてくださいってことと、リア充を滅ぼしてくださいって願ってたら着替えるの忘れてたわ」

「前半はともかく後半の願いは神様に頼むのはあまりにも罰当たりすぎですよ!」


 やっぱそうかー。ぶっちゃけ、神に滅ぼしてって頼むのはやばいかなって自分でも薄々思ってたんだよなー。


「……もうなんか面倒だし今日サボってよろしいか?」

「よろしくありません!」

「というか春宮は何で俺のとこに来たんだ? 俺に構ってると遅刻するぞ」


 春宮が俺の部屋に来る理由なんてないはずだけど……?


「そ、それは……その……い、一緒に学校に行こうと……思いましてですね?」

「何で疑問形? あー、そうか。付き合ってる振りをするんだったら一緒に登校ぐらいしないと不自然だもんな」

「そ、そうです、それです! だから来ました! 何か文句がおありで!?」

「何故にキレ気味!? ……まあいいか。そういうことならちょっと待っててくれ。着替えるから」

「あ、はい。私は外で待ってますから」

「んにゃ、いいよそこにいて。俺は脱衣所で着替えるから」


 制服をクローゼットから引っ張り出し、脱衣所に向かう。


「いえ、家主をそんな所で着替えさせることは出来ませんから。私は外で……」

「その理論なら……俺は客を外で待たせるのもあれだしな。いいから待っとけよ」

「む、むう。秋嶋君は屁理屈ばかりです……」

「お褒めに預かり光栄の至り。じゃ、行ってくる」


 頬を膨らませてむくれた顔をして正座をし直した春宮を尻目に、俺は脱衣所に入った。

 あー、学校行きたくねえなあ……。

 服を脱ぐと共に、気怠さもなんとか脱ぎ捨てて、俺は春宮と一緒に登校することになった。


♦♦♦


「あ、あれ。桐原君とひなたちゃんじゃないですか?」


 春宮が言うように、視線の先には恋人繋ぎで登校している冬真とひなたのカップルが。

 ……ふむ。


「春宮、ちょっと行ってくるわ」

「はい。……はい?」


 俺は春宮にそう告げると、ダッシュで前を歩く2人の元へ。


「おっはようございまぁぁぁあああああす!」


 ……そのまま、その勢いを全く緩めずに2人の間を駆け抜けた。


「きゃっ!?」

「うわっ!? 陽!?」


 駆け抜けて十分距離を取ったところで後ろを振り向いて、様子を確認しようとした瞬間、腹部に強烈な痛みが走った。

 そして、胸倉を掴まれた。


「とりあえず歯ぁ食いしばりなさい」

「もうボディにいいの一発貰ってるんですけど!? ちょっ、マジすんませんしたぁ! 自分調子乗ってましたぁ!」


 踵ちょっと浮いてんだけど!? 胸倉掴まれて浮きかけるとかこいつどんな力してんだよ! 絶対人じゃねえよ!


「おはようございます。桐島君、ひなたちゃん」

「おはよー、結花。ちょっと待っててね。今ゴミを片すから」

「お前らこの状況でよく平然と挨拶交わして会話を始められるな!? というかゴミって俺のことだろ!」

「おはよう。陽、春宮さん。あ、これ旅行のお土産」

「ありがとう! でもタイミングゥ! このままだと冥途の土産になっちゃいそうだから!」


 未だに俺の踵は地面に着いていないどころか、つま先だって浮き始めているというのに……! あ、なんか呼吸がし辛くなってきた。


「ひなた。陽の自業自得とはいえ、その辺にしといてあげようよ」

「……冬真がそういうなら。命拾いしたわね、陽」


 冬真の仲裁のお陰で、俺の足は数十秒振りに地面の感触を確認することが出来た。


「げほっ、お前それ悪人のセリフだぞ……」

「ああ?」

「見逃して頂き誠にありがたき幸せにございます」


 ……冬真はひなたのどこを好きになったのか分からなくなるぐらいの険しい顔で睨まれた。

 目を逸らして、春宮の方に視線を向けると不思議そうな顔をして、小首を傾げられる。


「どうかしたんですか? 秋嶋君」

「いや……春宮の顔って癒し効果があるよな……俺、なんか知らないけど今めちゃくちゃ心が落ち着いてるわ」

「えと……ありがとうございます? で、でもそんなにまじまじと見つめられるのは恥ずかしいです……」

「お、おう。悪い……」


 こっちも恥ずかしくなってきて、慌てて目を逸らす。

 そうだよな……これが女子の反応だよな……。

 普通の女子は顔を見られて睨んでこないよな?

 ちらっとひなたの方に目線をやってみる。


「……何よ?」


 ……やっぱこれじゃないよなぁ。眼光だけで殺されそう。


「なあ、冬真? お前の彼女実は1人や2人殺ってたりしない?」

「あはは。そんなことひなたがしてるわけないじゃないか」

「そんなことしてるわけないでしょ? たった今あんたをほふる計画は立ったけどね」

「お前の彼女今当人に向かって殺害予告してきたんだけど」

「そんなひなたも可愛いよね」


 ……………………学校行くか。

 俺の殺害予告はされたけど、冬真とひなたのカップルが今日も仲良しで世界はとっても平和だと思いました、まる。

 教室に着いたら遺書でも書いとくか。

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