第7話   ボートレース 2

 カークスボートの組み立ては、3日で完了し、試運転を開始した。


 コンコルディア組は、パワー重視。ムーア組は、旋回重視の艇を用意した。


 司令部の付近に用意された、練習宙域で、加速、減速、旋回を行った。


 「どうだ」


 「ボートの動作は問題ありません。しかし、うちはボート経験者が少なくて、クルーの動きが悪いですね」


 カルロの質問にボートを組み立てた、機関長が答える。カークスボートは5人一組で動かしている。10人のボート経験者を用意したいところだが、ムーアの乗り組みをあわせても5人しか経験者がいなかった。


 それを訓練しようにも時間が足りたかった。


 「どうしたものか」


 ボートをやるからには、いい成績がほしいが、自分がレースに出場するのは、立場的にも大人気ない。周りの目から見てば、「何をいまさら。」と、思われるのだが、カルロは気にしていた。


 だか、そんな言い訳を、吹き飛ばす人物が現れた。




 「私も、カークスボートには目が無くてな。ナビリア方面軍の諸君らが、参加すると聞いて、激励に来させてもらった。これは、差し入れだ」


 少将の階級章と無数の勲章をぶら下げた男が、満面の笑みと浮かべて大量のビールを差し入れをしてきた。


 「光栄であります。閣下」


 突然の高官の来訪に、混乱する。


 「私もかつて、ナビリアの水雷戦隊代表で、出場したが、いい思い出だ」


 少将は、ボートを見て回る。


 「中々、いいボートだ。期待できるな少佐」


 「アイサー。充分に戦えるボートであります」


 どんなときでも、出来ると返事しなくてはならないのが、軍人の悲しい性。


 「そうか。そうか。では、楽しみにしているぞ」


 困惑するカルロを尻目に、少将は取り巻きと共に、去っていく。


 「ロンバッハ艦長を呼べ」


 カルロはなりふり構っていられなくなった。




 「少将閣下、自らの激励で、弱気になったということかしら。上官にいいところ見せたいなんて、今更ながら、出世意欲でも湧いたの」


 腕を組んで、睨み付けるロンバッハ。


 「いやいや。そうではなくて、未経験者が、多いとだな」


 「多いと」


 「安全性に問題が」


 「言い訳しない」


 カルロは黙る。


 「で。どうすつもり」


 「一艘に全力をつぎ込む」


 「でしょうね」


 「貴官と私も参加する。具体的にいえば、ロンバッハ艦長がセッティングと艇長、私が、作戦とセール操作」


 「妥当といいたいけれど、作戦と艇長が別々だと、とっさの判断が出来ないでしょう。セッティングとセール操作は私がしたほうが良いでしょう。作戦と艇長はあなたが」


 「貴官がセール操作は、どうなんだろう。それなら、作戦と艇長が貴官で、セッティングとセールが私のほうがよくないか」


 カークスボートでは太陽風をセイルで受けて加速、減速を行う、自動操縦を制限されているカークスボートでは、かなりの力仕事であり、艇長の次に重要な役目であった。


 「あなたの、雑なセッティングで、勝てるの?それとも、女と思って侮っているのかしら」


 カルロの発言を挑戦と、受け取ったのか、声のトーンが高くなる。


 「判った。判りました。セッティングとセールの担当は、ロンバッハ艦長にお願いします」


 これ以上の言い合いは不毛だ。戦術的撤退を選ぶ。


 「では、どちらでいきますか。パワー型か、旋回型か」


 「そこだな。旋回型なら、他のチームと同じだから、勝敗はセッティングと操作にかかっている。パワー型は、完全にギャンブル。敵は第7工廠のチームだけ。的中すれば2位以上もありえるが、失敗すれば、最下位。少将閣下には見せられんな」


 「そうね。第7工廠が、なぜパワー型か判れば判断のしようもあるのだけど」


 「流石にそこは、教えてくれないだろう」


 「推察するしかないですね。答えが出れば、教えて頂戴。私はセッティングに入るから」


 「いや。まだ、どちらで行くか、決まっていないだろう」


 ロンバッハは少し首を傾げて。


 「今の会話で大体わかったわ。旋回型はデータと練習量が少ない以上、細かいセッティングは難しい。パワー型ならチャンスがある。あなたならパワー型でしょ」


 思考を先回りしたような、物言いをされる。


 「そう言われると、そうなんだが」


 「時間が惜しい。手早く行きましょう」


 誘導されたような気がするが、ロンバッハの言うとおり、時間が無いのも確かであった。




 「曲がらんな」


 「曲がりませんね」


 一通り、セッティングを終えたボートを試してみる。


 艇長のカルロと艘舵手のドルフィン中尉が、ぼやく。


 「小官に対しての皮肉ですか」


 赤色のボートスーツを身にまとった、ロンバッハが甲板から下の操舵室を睨み付ける。


 「はい。ロンバッハ艦長。いいえ。他の艇に比べてであります。おおっ」


 カルロは立ち上がって、言い訳するドルフィン中尉を座らせる。


 「パワーは充分出ている。舵が重いのも想定内だが、スライドが激しい。艇が動揺して中々加速に移れない。どんどん外側に膨らんでいく。結果。曲がらない」


 「くっ」


 カルロの指摘にロンバッハは顔をしかめた。


 「スライドだけでも止めてくれ。後はこちらで何とかする」


 「了解」


 ボートをピットに戻す。


 「急げ。キールの角度調整を優先する」


 ロンバッハは止まる前のボートから飛び降りて、指示を出す。ボートスーツを脱ぎ捨てて、差し出された作業用ツナギに着替える。


 整備係が取り付き、ボートの外板を外していく。


 「副長。スライドが低減したと想定して、立ち上がりの速度を再計算しろ」


 カルロもドルフィン中尉に指示を出すと、作戦室となっているムーアに入っていった。


 「お二人とも、ぴりぴり。してますな」


 機関長か、ドルフイン中尉に声を掛ける。


 「思ったより、難しいみたいだ。もう一艘のほうはどうだ」


 「セッティングは概ね出ましたが、アウストレシアのチームには歯が立たんでしょうな」


 「上位を目指すには、あの艇で頑張るしかないか。では、再計算に取り掛かるとするよ。時間を掛けると、今より機嫌が悪くなりそうだからね」


 ドルフィン中尉は肩をすくめて見せた。




 カルロはムーアの作戦室で、チャートを睨みながら頭を捻る。


 「どうやって、曲げるつもりだ。スライドを抑えられても、まだ足りない」


 旋回重視の艇に、旋回で負けない。そんな設定を考える。


 「無理にきまっとる。速くて曲がれば誰も苦労しない」


 どっかとシートに座り込み、天井を見上げる。


 「曲がらないものを曲げる方法。減速しないと曲がらない。はぁ。TK-2にアンカーでもぶち込めれば、簡単なんだが」


 小惑星にアンカーを打ち込み、その張力で旋回すれば、速度をさして落とす必要は無いが、艇が小惑星に触れると失格判定になる。


 「セカンドボートを利用して回れないことも無いが、針路妨害で失格だな」


 チームメイトのボートに減速や加速を手伝わせることは、どこのチームでも行うが、これも、意図的な接触は失格になる。


 小賢しい方法ばかり、思いつくが、使えないものばかりだ。額に手を当てると作戦室の扉がノックされる。


 「入れ」


 「艦長。再計算の結果です」


 ドルフィン中尉はチャート上に、計算結果を表示した。


 「これなら、戦えるのでは」


 現れた結果は、確かに良いデータではあったが。


 「戦えるが、決定的ではないな。優勝争いをするチームの作戦ではない。」


 優勝争いをしているチーム同士は、どうしてもセッティングが似てくる。まったく違う性格の艇にすると、最悪勝負にならない程の差が出てしまう。大幅に違うセッティングは、カルロ達のような、スポット参戦するような、チームが取る作戦だ。


 「何か他に、利点が無いとな」


 「曲がらない艇なのですから、曲がる気が無いのでは」


 「なるほど、宇宙の彼方に飛んでいくボートか。曲がる気の無いボート」


 頭を抱えたくなるが、何かしらの利点があるはずだ。曲がらないボートで勝つ方法が。




 気分転換に、コンコルディアの様子を見に行くことにした。


 破損したジェネレーターはパージされ、船体の後ろ半分は、フレームだけになっている。


 「パワーパックを回してくれれば、すぐにでも修理完了なんだが」


 自分の艦を眺めながらぼやく。


 「突撃艦での急旋回なら、得意なんだがな。突撃艦の機動・・・・・・・・あっ」


 無茶な方法が思いついた。カークスボートでやる者はいないだろう。


 カルロは走って、ピットに向かった。




 アウストレシア方面軍のボートレースは、レースイベントとしても認知されている。将兵や軍関係者以外の一般市民も多数、見物に来ていた。


 スタート、ゴールのステーション付近はもとより、コース上付近にも多数の見物客を乗せた船が、回遊している。


 「本当に、この作戦でいくのですか。絶対。第7工廠の作戦とは違いますよ」


 操舵輪を握る、ドロフィン中尉が心配する。


 「今更、言っても仕方ない。大体、第7工廠の作戦を探っていたから、煮詰まったんだ。我々は突撃艦乗りだ。工廠の連中の真似をしても始まらん」


 「突撃艦乗りね。仲間内からも苦情が来ると思うけど」


 ロンバッハが甲板上から声を掛ける。


 「いいんだよ。それよりも、大丈夫なんだろうな」


 「計算上はね。テストの回数が足りないから、絶対ではないでしょう」


 「頼むぞ。セールと操舵のタイミングが大事だ」


 「あなたの指示が、的確なら問題ないでしょ。ドルフィン中尉もそう考えているでしょう」


 「サー。イェッサー」


 「同意の強要とは。さすがロンバッハ艦長」


 くだらない会話をして緊張を解した。




 進み出たオフィシャル船からスタートの信号弾が打ち上げられると、26艘のカークスボートが一斉にスタートした。


 エンジン出力に余裕がある、第7工廠チームとナビリアチームが先頭を切って進む。


 このレース、スタートは比較的楽だ。衛星バースの重力線に向かって加速、スイングバイの要領でバースを旋回。ここまではミス起こしにくい。全艇、一団となって進む。


 バースでの旋回が終わりに近づくと先頭を走っていた第7工廠のチームが、外側に膨らんでいく。


 「艇長。第7がスライドしていきます」


 「ほっとけ。彼らなりのプランだろう」 


 ここで、ナビリアチームが先頭に立った。


 「ここまでは、予定通り。減速点までの距離を間違えるなよ」


 観測係と計算係に声をかける。


 恒星からの太陽風は衛星バースの方向から吹いてくる。セールを一杯に上げ太陽風受けて加速する、エンジンの出力に余裕があるため、二位以下を引き離し単独一位をキープする。


 「艇長。減速点」


 「風を抜け。逆噴射」


 ロンバッハは素早くセールをたたみ太陽風を抜く。バウに装着された噴射口からイオンが飛び出し徐々に減速をする。しかし、惰性が付きすぎて、中々減速しない。


 内側と外側を、他の艇が並びそのままTK-2を旋回して抜き去っていく。


 「さすがに、きびしいな。スライドは抑えられているが、この振動」


 「艇長。第7です」


 カルロ達の鼻先を大外から第7工廠チームが駆け抜けていく。


 「あの、速度で回れるのか。まぁいい。加速点はまだか」


 失速するナビリア組をどんどん他のチームが抜いていく。この段階で順位は中盤まで沈んだ


 「加速点。。」


 「出力全開。セールをあげろ」 


 速度を殺してようやく旋回が終了。加速に移るが、立ち上がりの速度が足りず追いつかない。


 今度は進行方向からの太陽風を利用してジグザグに進み加速する。エンジンパワーには余裕があるので、他の艇より浅めの角度で、小刻みに切り返しをおこない距離を稼いだ。


 「次のターンはどうするの」


 ロンバッハはロープを猛然と引き、セールを支えるブームを操作する。


 「どう思う、次でやるか」


 「私は、やっていいと思うわ。見られたからといって、対策できるのもではないし」


 カルロは頷いた。




 衛星バースを回りきるとナビリア組は、3位まで追い上げた。


 「先ほどとは、減速点が大きく違う、しっかり計算してくれ、間違えると、クラッシュするぞ」


 「アイサー」


 「セールの調整が一番難しい。頼むぞ」


 「了解」


 前の二艘が、減速に入るが、カルロは減速しない。そのまま追い抜いてしまった。


 「減速点。今」


 「セール三分の一、バウスラスターマイナス30」


 カークスボートは、つんのめるように減速すると、そのまま前方にひっくり返るように旋回しだす。


 「セール全開」


 セールが一杯に広がり太陽風を受け止めた。


 「出力全開」


 カークスボートはひっくり返る形で、向きを変え、航行用スラスターを全開に吹かした。バウスラスターを遥かに上回る逆噴射を行い急減速をする。セールに受けた太陽風は徐々にノーズをバースの方向に振る。そのままスライドしながら加速を開始。


 カークスボートでの垂直ターンは、先日体験したスペンサー艦載機の機動を真似して見せたものだ。


 この、無茶な機動で一位でTK-2を立ち上がった。


 「よし」


 ナビリア勢は沸き立つ。


 ただし、先ほどより無茶な減速のため、スピードは乗らない。バースを旋回するころには追いつかれてしまう。


 「ゴールラインは一位で通過できそうね」


 ロンバッハの言葉に、カルロは頷く。そう。減速しようが体勢を崩そうが、ゴールラインまで一位をキープできればよいのだ。




 「第7が大外からきます」


 観測係が声を上げる。


 「またか」


 「どうやら、減速しないで加速しつつ、円運動するつもりのようね」


 「なんだそれは。人工衛星か」


 カルロは毒付くが、意識は、モニターに表示される計算結果に引き付けられる。バースを回りきると再び5位まで順位を下げた。ただ一位との差は無く第一集団につけていた。


 「もう一度いくぞ」


 今回は前のボートを避けるためやや外側からアプローチする。


 次々と減速するボートを尻目に加速したまま、前転ターンして減速というアクロバットへの体勢を作った。


 「減速点。今」


 「セール三分の一、バウスラスターマイナス30」


 全く同じ指示を出した。


 しかし、同じ結果にはならなかった。


 「風が」


 ロンバッハが叫ぶ。


 見上げると、セールが力なく垂れ下がる。


 「風が凪いだ」


 バウスラスターで角度をつけた回転運動を風で止める手はずが、完全に潰えた。


 「セール全開」


 少しでも減速力を稼ごうと焦る。


 「駄目よ。今開いても」


 的確な指摘に我に返る。垂れ下がった状態のセールだと、風が戻ってもレスポンスが悪くなる。


 「くそ。そうだな。撤回する。充て舵一杯」


 舵とウィングで何とか、回転を止めなければならない。


 「回転率と逆噴射の計算を」


 「アイサー」


 回転中に見つけた僅かな隙間で逆噴射を行う。当然、短時間の噴射では足りない。バランスを崩したまま流れていく。


 「風が戻ります」


 待ちに待った報告が上がる。


 「セール二分の一。これで止めてくれ」


 計算している暇はない。カルロは感覚で指示を出す。


 「了解」


 ロンバッハが、甲板を飛び跳ねてセールを操るロープを掴み、巻いていく。


 これで、なんとか回転を止めて逆噴射に入った。


 ようやく体勢が落ち着いたので、周りを窺う余裕が出来た。風が凪いだ影響は、他のボートに出ていた。減速はともかく、旋回には風が必要だ。皆、旋回できずにスライドしている。


 「出力全開。セール全開」


 この瞬間、ナビリア勢は勝利を確信した。加速が同時なら、パワー重視の我々の勝利だと。まるで再スタートのように、各ボートが一斉に動き出す。その中で僅かに頭一つ抜けつつあった。


 「このまま行け」


 「艇長。右舷方向より、第7です」


 観測係の報告に、舌打ちする。


 「またか。速度は」


 「向うが上です」


 「どうなっている。この状況で、どうやって速度が出せる」


 「回転加速しているのでしょう」


 セールを操作するロンバッハが予想する。


 「回転加速?さっきもチラッと言っていたが、それなら、どうしてコースアウトにならない。規定宙域から飛び出せば失格だろう」


 「このレースのコースルールでは、チェックポイントから300kmで旋回。それだけは守っているのでしょう」


 「じゃあ。何か。舵を固定して、だだ単に加速して旋回しているのか」


 「そうでしょうね」


 「邪道だ。そんなもん、探査衛星のやり方だ」


 カルロの憤りを尻目に、第7工廠の2艘は、カルロ達のボートを追い抜いていく。


 第7工廠のチームは、一定の角度を固定したまま、衛星バースと小惑星TK-2の二点を円形に結んだ線上で、ただ加速している。イオンクラフトエンジンの特質上、加速を続ければ、それだけ速度が出る。一周目よりも二周目。二周目よりも三周目の速度が出る。ただ航行距離が伸びるので、ギャンブル性の強い作戦だ。


 「カルロが作戦で負けるなんて。ふふっ」


 抜き去るボートを眺める、ロンバッハの呟きは、誰にも聞かれなかった。




 結局。第7工廠のチームはワン・ツーフィニッシュを決め念願のポイントリーダーとなり。カルロ達は三位に滑り込んだ。


 飛び込みの、スポット参戦では格別の順位だ。


 この結果にナビリア勢を応援してくれた少将も大満足。さらなる祝いの品を送ってよこし、コンコルディアとムーアの乗組員たちは、大いに飲み食いした。


 カルロ達の敢行した。回転は大いに賞賛され、ナビリアターンと呼ばれるようになった。


 試合後のインタビューで、カルロはナビリアターンを機動兵器の動きをヒントにした。という発言は、アウストレシアの機動戦隊のチームに甚大なショックを与えた。これ以後、機動戦隊のチームはナビリアターンの習得に力を入れたという。


 しかし、レースでのインパクトの割りに、ナビリアターンは使えないことが判明した。再現率が低く、不測の事態に対処できないからだ。カルロ達も一回しか成功していないことから、カークスボートの定番の技にはなりそうになかった。また。第7工廠チームの行った、円運動を利用した軌道は、チェックポイントが増やされ、一回きりの奇襲戦法となりそうだ。




 「それで、交渉は上手くいったの」


 「工廠の連中は、有頂天だからな。二つ返事で許可が出たよ」


 「そう。よかったわね」


 カルロとロンバッハはドックが見渡せる通路で、ビール片手に祝った。


 コンコルディアへのパワーパック提供の要請は、勝利の美酒に酔っていた工廠側に、すんなりと通った。


 「少将閣下の口ぞえもあったしな。ボートレース様様だよ」


 「作業は?」


 「明日にでも始めてくれるとさ。すぐにでも終わるだろう。そっちはどうだ」


 「憲兵隊?それなら、とっくに開放されているわ」


 意外な返事がくる。


 「なんだそれ。ボートなんてやってて、よかったのか」


 「構わないわ。帰還命令にも余裕があるし」


 ビール瓶を振って笑う。


 「これで、ナビリアに帰れるわね」


 「ああ。お疲れさん。ありがとう」


 カルロはビール瓶をロンバッハに向ける。


 「どういたしまして。お疲れさま」


 差し出されたビール瓶に軽く合わせて二人は乾杯した。




                                         続く

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