第13話 ラブコメはとっても大変です!②

「なんでお前らが俺の部屋にいるんだよ」

 

 今日は休日なのでごろごろしながら映画を見ようと思っていた。映画のおつまみとしてコンビニでお菓子とジュースを買って戻ってきたら心とゆめが部屋にいたのだ。

 

「えー、だって暇じゃん」

 

「家だと原稿が進まないのですっ」

 

「はぁ……俺は映画見てるから邪魔するなよ」

 

 二人はこれでもかと言うぐらい首を縦に振っていた。ちょいとテンション高いな。まぁ、ここに居るだけなら問題ないだろう。気にせず映画を見ますか。

 

「お菓子あるじゃん。私これとこれでー」

 

「ゆめはこれとこれがいい!」

 

 ちょっとお二人さん?そんなにとったら俺のお菓子もうないじゃん。残ったのはパスカル三つだけだった。あぁ、虚しい。

 俺は映画を再生し横に寝転んだ。ずっと見たかったんだよなこの映画。確か一千万部売れたラノベが映画化されたんだよな。当時は凄い人気で人が多すぎて見に行けなかった。よし始まるぞ。

 

「どっすーん」

 

 俺はゆめの声が聞こえたと同時に息が出来なくなった。ゆめが俺の背中に飛び乗ったらしい。ちょっと、邪魔しない約束じゃなかったんですか。

 

「ゆめだけずるいー。私も、とりゃー」

 

 ずるいって何。二人は冗談抜きで思いから。やべ、本当に息が出来ないぞこれ。

 

「頼むから退いてくれ。息が……」

 

「ごめんごめん。じゃあ……、一緒に寝よ」


「いや、なんでそうなる!!!」

 

「ベットに三人は狭いからゆめは床ね」


「そういう問題ちゃうやろ!!!」

 

「無理ですぅー。提案したの私だから、お姉ちゃんが床でどうぞぉー」

 

 頼むから邪魔しないでくれ。さっきのダイビングのせいで眠気なんて一切ない。そんな俺とは裏腹に二人は寝る気満々だった。

 今まで気づいてなかったのだが、色々と当たってやばい。二人が動く度色々なとこが触れ合う。ちょ、頼むからそんな動かないで。

 

「だぁぁぁぁぁあ。暑苦しいわ!」

 

「私の愛が暑すぎたのかな……?」

 

「ゆめの愛はこれからだよ……?」

 

「あぁ、もおぉぉぉ!俺はちょっと出かけてくるから」

 

 一生やってろこのバカ姉妹が。何が愛だよ。邪魔しかしてないじゃないか。まったく、折角の休日が台無しだよ。

 あ、言い忘れていたが、ムカついたので出かけたのではない。お菓子を食べられてお腹が減ったので出かけただけだ。別に、そこまで怒ってはないのだ。

 

「牛丼食べよっかなぁー」

 

 独り言を呟きながら『すき家の牛道』に入った時、ふと視界に神宮寺の姿が入った。周りには三人の友達がいた。一人はチャラく、陽キャと呼ばれる部類の人だったが、他の二人はどちらかと言うと俺寄りの人だった。余談だが、よく神宮寺君かっこいいとか騒がれているが、俺にはこれのどこがかっこいいのか分からない。単刀直入に言うとダサいと思っているのだ。シャツを出して、ピチピチのズボンにダボダボのジャケット。なにそれ、新しい文明かよ。

 何やら話をしているようだ。俺はそっと近くの席に座った。

 

「やばいー、まじ彼女出来ない」

 

「大丈夫だよ。健人けんとならすぐ出来るよ」

 

「そうですか?あ、智也さんが狙ってるって言ってた朝比奈さんはどうなんですか?あの子めちゃくちゃ可愛いじゃないですか」

 

「あー、余裕だよ。彼氏そこまでかっこよくないし時間の問題かな」

 

「さすが振られたことのない男」

 

「そんなことないよ」

 

 神宮寺てめぇ。お前やっぱり心狙ってたんだなぁ。付き合うのは時間の問題?絶対渡さないからなぁ。俺は今にも殴りかかりそうな気持ちを抑えて牛丼を口に放り込んでいた。神宮寺達は盛り上がっているようだが、他の二人はずっと黙っていた。なんでこの二人と一緒にいるのだろうか。全く正反対のタイプだと思うのだが。そんなことを考えていた時だった。

 

「お前ら、会計頼むわ」

 

「またですか……?」

 

「もう僕達お金ないんです……」

 

「え、何?殴られたいんだ」

 

「「ごめんなさい。払わせてください」」

 

 いや健人、神宮寺の時と口調変わりすぎだろ。それにお前最低のクソ野郎だな。そんなんだから彼女が出来ないんだぞ。

 

「じゃあ智也さん行きましょう」

 

「そうだね」

 

 帰ったら神宮寺は退部させてやる。何がなんでもこれは絶対だ。俺は残りの牛丼を急いで食べて家に帰った。

 

「おいゆめぇぇぁぇえ」

 

「な、何!?[#「!?」は縦中横]」

 

「神宮寺は今すぐ退部だ」

 

「どうして?」

 

 俺は退部させるに至った経由を話した。すんなりゆめは了承してくれた。でも安心はできない。前みたいに屋上で襲われそうになったり、退部させられることに腹を立てゆめに襲い掛かるかもしれない。

 

「退部の手続きなどは俺も一緒ににさせてくれないか」

 

「分かった」

 

 

 *

 

 

 次の日。俺たちは神宮寺に退部のことを伝えに言った。神宮寺は驚いていたが、すぐに冷静になり質問をしてきた。どうして退部になったのか。

 俺は前日のことを話した。すると神宮寺はただのデタラメだと否定してきた。まぁ俺からしたらそんなのどうでもいいんですけどね。


「部長が言っていることは絶対だからお前に弁解の余地はない。退部だ」

 

「ゆめちゃんよく考えてよ。僕がそんなことするわけないじゃないか」

 

「神宮寺くんごめんなさい」

 

「そんな……」

 

 神宮寺は殺気を放ち、鬼の形相で俺を睨みつけてきた。俺は目を吊り下げてべろを出した。喰らえ必殺『あっかんべー』だ。俺は不安がなくなりとても清々しい気持ちだった。神宮寺は立ち去る途中に俺の耳元で囁いてきた。

 

「調子に乗るんじゃねーぞゴミが。絶対に俺のものにしてやるから覚悟しとけ」

 

 神宮寺め、ついに本性を表したな。あいつめちゃくちゃ怖いじゃん。ちょっと小便ちびったじゃないか。

 

「神宮寺くんめちゃくちゃ怒ってましたね」

 

「ほっとけほっとけ。もし、何かあったらすぐに言ってな」

 

「ありがとう。空牙先輩はこういう時だけ頼りになるよ」

 

 こういう時だけは余計なお世話だ。これで一段落は着いたはずだ。心にも報告しておこう。俺たちはいつもの教室へ向かった。

 

「二人とも上手くいった?」

 

「「バッチリだよ」」

 

 心は胸をなでおろし、今日も頑張ろうと腕を突き上げた。

 

「ゆめー、調子はどうなの?」

 

「んー、まーまーかな」

 

 まだまだ小説とは呼べないが、前より断然上手くなっている。このペースで上手くなるなら新人賞も夢じゃないはずだ。

 

「空牙くんはどんな感じ?」

 

 そうそう、俺は最近ウェブ小説に投稿し始めたのだ。でも、全然読んでくれなくてちょっと萎えている。いいね来ないしレビューも来ない。あぁ、メンタル持たない。

 

「あぁ、もうバッチリすぎてやばいよ」

 

「絶対嘘じゃん……」

 

 一瞬で嘘がバレてしまった。散々小説のことで偉ぶっていたので恥ずかしい。

 

「ゆめもウェブ小説に投稿初めよっかなぁ」

 

「いいんじゃない?」

 

「俺のようにメンタル強く保てよ」

 

「全然保ててないでしょ」

 

 これでゆめに負けたらどうしよう。もう俺の立場ないに等しいじゃん。どうか神様、ゆめにだけは負けませんように。

 

 

 

 

 

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友達が俺の携帯で嘘コクしたら、S級美女と付き合うことになった件 気になる男子高校生 @uraranopan

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