第12話  私の記憶(10歳まで)その二

幼馴染みに、すみこちゃんがいた。ひとつ年下だけど、背丈は同じ。

お隣だった事もあり、いつも一緒に遊んでいた。

4歳の時、家の裏を流れる川で溺れて死んでしまった。

ぐったりしたすみこちゃんが、運ばれて来た。

濡れた服を脱がせようとしたのか、すみこちゃんは、パンツの中がウンチでいっぱいだった。

葬式では、私が、写真を持った。

すみこちゃんの洋服を、すみこちゃんのお母さんがたくさんくれた。

すみこちゃんの着る分がなくなっちゃうと思った。

私には、まだ人が死ぬ事がよくわかっていなかった。

お友達が居なくなった。



………



保育園にも、ひとりで歩いて行った。

帰ってくると、住み込みの若い弟子に部屋へ呼ばれた。

丸くて薄っぺらな棒付きアメをくれた。


そのかわり、部屋で横たわる。

両ひじを三角にして、顔を覆う。

何にも見えない。

パンツを脱がされる。

ヒザを立てて、大きく開いた状態でいるように言われる。

何をしていたかは、わからない。

何分かすると、パンツを履かせてくれる。

傍には、割り箸が1本落ちている。


その頃の私には、そこに何があるのかもわからなかった。


どのくらいアメを買って貰っただろうか。

ある日、その部屋に、母が来た。


母から、もう、この部屋に来てはダメだと言われた。


あとで思い返しても、その弟子はその後も普通に居た。私の結婚式にも来ていた。何事もなかったように。




少し大きくなってからも、違う弟子たちが相撲を取ろうと言っては、私に馬乗りになって、何か棒のようなモノを擦り付けてきた。


私は、あまりにも無知だった。




こんなことしか、私の10歳までの記憶はない。

まだ、人間になっていない生きものである私。

私自身が、自我を持つことはなかった。



………


人生の転機が訪れようとしていた。

小学五年生になり11歳の誕生日の頃に私は、ヨウコに出会う。


ちなみにだが、私の誕生日会はない。

私の誕生日は、ヨウコの命日でもあることから、嬉しい日だという記憶はない。



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