第9話  ドクターO

午後4時からの診察開始。

それでも、体調を考えて朝から準備していたら、1時には到着してしまった。

仕方なく、近くのコンビニの席で、飲みたくもなくココアをちびちびと飲む。


ちょうど4時に病院に入ると、すでにたくさんの人が待っていた。ひとりで来る人の方が少ないように思う。


受付を済ませると、心理テスト?の用紙を渡されて記入する。


名前を呼ばれて、診察室に入る。


とても緊張するが、先生(勝手にドクターOと今後書く)の、書籍を2冊読んできたことを話す。

なので、診療方針は理解済みと。

また、霊が見えることも話す。

なるべく、精神が狂っている人に見えないように気をつけたつもり。


ドクターOから、

「もう一度、違う心理テストをしてください。また呼びます。」

と言われて、待ち合い室に戻る。


最初の心理テストは、とても当てはまるものだったが、後からの心理テストは、余り当てはまるものではなかった。



名前を呼ばれ、再度診察室へ。


ドクターOから心理テストの結果を説明される。


最初の心理テストは、解離性同一性障害

の判断をするためのものと、内在性解離を判断するものだった。

そこから私は、やはり解離性同一性障害であること、内在性解離もあることが、はっきりした。


後からの心理テストは、先天的な発達障害があるかどうかの判断のようだった。


発達障害があると、解離性同一性障害になりやすいようであり、投薬治療も必要となるらしい。

私は、それではなかったので、投薬は使わずに治療が施せるようだった。


さっそく、治療にあたっての話をされるが、ショッキングなものだった。


解離性同一性障害になる人は、3歳くらいまでに、何か心に傷を持つことから始まるようである。

そこで、傷ついた基本人格は、幼児のまま心の奥深く沈んでしまう。

代わりに、それを補う存在として主人格が現れるらしい。

その主人格が、日常生活を送っているようだが、私の場合は、さらに交代人格のひとつの内的自己救済者人格が主に出ている状態ではないかと、書籍から予測し、これが私かも知れないと思っていた。


主人格は、あまりにも、グズで、いつもおどおどして、不器用な人間であるから、普段も、時と場合によって、私ヨウコと主人格の聡子が入れ替わる体制をとっている。

(ちなみにヨウコとは、聡子の双子の姉である。

死産扱いされているが、母の話では、元気に産声をあげていたと。東北地方の山奥では、双子は災いの元とされ、片方の子は、亡き者とされていたようだが、真相はわからないままだ)


さらに、ドクターOから内在性解離というものがあることを教えていただく。


それは、初めて聞くものだった。一度解離した人間は、辛い事、苦しい事、悲しい事などの傷つくことがあるたびに、次々と新たな解離人格を生み出していくことで、自分を守っているのだと。この解離した人格は、その時の記憶、感情を、私の代わりに引き受けてくれるが、欠点は、その時の感情も鮮度を保って保存していることだ。


通常、8〜9割の普通の人間は、自然と記憶は薄れていくものなのだと。

それを聞いて私は、ショックだった。

世の中の人は、記憶を忘れるものなのだと知らなかった。

私は、幼い頃からの記憶を常に覚えている。傷ついた思い出が、思い出とは呼べないくらい、鮮明に、心の痛みと共にフラッシュバックしてくる。

だから、他の人が覚えていなかったり、記憶をすり替えて覚えていたりすることに疑問を感じていたのだが、やっと合点が一致した。



そうかー、私には、忘却機能がなかったのかー。

我ながら記憶力が、凄いと思っていたけど、参りますねー。


今回の発症は、内在性解離で受け止めきれなかったのであろうか、職場でのハードワークによる過度のストレスが加わる事で、解離した人格が、外的な解離として現れるようになったようだ。

これが、多重人格として、他の人にも認識されたようだ。


まあ、その事で、治療に至ることが出来たのだから良い機会だったと思うことにする。

私は、楽天的だな。


なので、その分散して解離しまくっている私の分身たちを集めて、ひとりの人間になるように統合していくのが、治療らしい。


ここまでは、理解出来たぞ。


では、その治療方針で、進めてくださいと、ドクターOにお願いする。


ところで、ずっとドクターOの話を聞いていたが、私からは、何の身の上話もしていないことに不安を感じる。

が、ドクターOは、私からの話は、解離した人格達からおいおい聞いていくとのことで、速攻で治療に入ることになった。


えー、ドクターO!

私の話も聞いて欲しいんですがー…

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