第九段 公会堂

長崎で文化と交わる場は観光マップを見れば多いということが分かる。

しかし、市民が文化と触れ合う場は少ない。

今でこそ、複数の文化的施設が市内中心部を環状に取り囲んでいるが、以前はそれが一箇所に集中していた。

公会堂の周辺がその一帯であり、長崎で知的好奇心を満たそうと思えばこの辺りに赴くことが最良であった。


公会堂周辺には公会堂、市民会館、県立図書館、歴史文化博物館と文化的施設が点在する。

これに、市立図書館が独立して(以前は市民会館だか、公会堂だかの中に細々と存在するだけであった。薄暗く、近寄りがたい雰囲気を醸し出しながら)設けられ、この一帯の文化的重要性が決定された。

現在は県立美術館が出島に、ブリックホール(コンサートホール様のもの)が浦上にあるため、少しは分散されるようになったが、この周辺が長崎の文化を形成していることは間違いがない。

ただし、この『文化』は土着風俗を基盤とした『文化』の方ではなく、人類全体が長い歴史の中で積み上げられてきた方の『文化』であることは言うまでもない。


さて、このように『文化的』意義の高い公会堂の周辺であるが、閑静な一帯が広がり、教養を深める地として敢然と存在している。

また、少なくはあるものの飲食店がいくつか存在しており、そのいずれもが雰囲気ないし味において輝くものを持っている。

ある意味では、この一帯は長崎にあっても長崎ではないのかもしれない。


また、県立図書館や歴史文化博物館へ到る道程には『文化』がある。

それは、斜面であり、文化施設を繋ぐ上で大きな壁となっている。

だが、この斜面も他の長崎の坂とは異なり、春の桜と夏の木陰が柔らかな世界を作り出している。


 長崎を つくる文化は 美しさ 優しさ緩さ 一つ苦しみ

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