第13話 逃げる その1

  エスティがはった結界が切れ、白い世界が徐々に元の世界に戻り始め、コウ達の目の前に居るワイバアーン三体が少しずつ動き出した。


 

 ‥‥‥ズズズズズ、ズッ‥‥‥

 「やばいだろ!これは!‥‥‥エスティ!早く逃げるぞ!」



 コウは慌てる様に、怯えた千代の手を取ると逃げる構えをして、エスティに言います。

 そんなコウと千代を見たエスティは、平然とした表情で二人に、



 「あっ、私なら大丈夫よ。ちょっとやそっとじゃ死なないから」

 「はあ?なに言っている⁈一緒に逃げるぞ!」

 「えっ♡私の事も心配してくれるの?♡」

 「当たり前だ!‥‥‥て!エスティ!後ろ!後ろ!」

 「えっ?後ろ?」



 コウが一体の背を向けていたワイバアーンに気づき、エスティが振り向くと、ズズズズズと大きな音を立てながら、エスティに向かってワイバアーンの尻尾の先がエスティに直撃!



 「ドオッ!」

 「ブッ!」



 エスティ、ものの見事にコウ達の前を吹き飛び転がりますよ。

 それを見たコウと千代は血の気が引きます。

 


 「エスティさん!」



 吹き飛ばされたエスティに叫ぶ千代。が、そんな千代の心配をよそにエスティは、

 



 「‥‥‥ね♡だ、大丈夫、大丈夫でしょう♡‥‥‥ガクッ」



 スクッと立ち上がり、ニコリとするエスティの額から血が流れます。で、すぐにバタンと倒れ、気を失ったエスティ。

 そんなエスティを見てコウは更に焦る。が、ここは冷静にならないとと思い、



 「千代!エスティを俺がオブって逃げるからついてこい!」

 「う、うん」



 コウはエスティのそばに駆け寄ると、急いでエスティをおぶさり、千代とその場を離れようとします。



 『‥‥‥たっく、何処が大丈夫だ!吹っ飛ばされて、血を流して気を失うなんて。‥‥‥本当にエスティ(こいつ)は女神なのか?』



 そう思いながらコウはエスティをおぶさると千代とその場を離れようとするが、ワイバアーンが逃げるコウ達に鋭い目を向ける。



 ギヤアアアオオオーーー!



 ワイバアーンは叫びながらコウ達を追いかけ始めた。

 が、コウと千代は、追いかけ始めたワイバアーンを見る暇もなく、逃げるのに必死だ。

 ただ、幸いな事にここは森林の中。

 木々に覆われている為、体の大きなワイバアーンは木々が邪魔をして、コウ達に追いつけない。だが獲物をかる様に勢いがついたワイバアーンの鋭い目が更に鋭くなると、ワイバアーンの前の木々をまるで柔らかい草をかき分けて進む様に木々をへし折り進んできた。



 「お、お、おい、おい、おい!う、嘘だろ!」



 バキバキと木々がへし折る音に、コウが後ろを振り向くと、ワイバアーンが逃げるコウ達に追いつかんとばかりに迫りくる。

 このままではヤバイと感じたコウ。

 と、その時。先頭を走る一体のワイバアーンの顔にめがけ拳ぐらいの玉が飛んできて、ワイバアーンの顔にあたると、煙幕の様なモノを出して、パァンと破裂した。



 「今のうちに!早く!」



 何処からか女性らしき声で、コウ達に叫ぶ。コウは一瞬立ち止まり辺りを見渡す。が、ワイバアーンの動きが止まるのを見ていたコウにまた女性の声で、



 「なにしている!早く逃げろ!」



 その声にコウは、「ハアッ!」と気づくとまた逃げ出した。しかし煙幕で立ち止まる一体のワイバアーンの両横から二体のワイバアーンが「ズバッ!」と飛び出すと、コウ達目掛け襲いだした。



 

 



 



 

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異世界で俺と幼馴染とお姫様と駄女神と? 本田 そう @Hiro7233

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