第7話 オペレーション・ヒキコモリ

 まずは、焦ることはない。僕には開発したセキュリティがある。この開発グッズは、外部からの侵入を防ぐ最適解であることは間違いない。なぜなら、トレーニングをサボるときに、セバスちゃんが部屋に入ってくることを防いでいたからだ!


「敵をカメラで捕捉できたでやんす!ドラキュもんの旦那!」

「アラームくんナイスだ!」


 やはり仮面をかぶっている……体型からしてやはり女性だな。センサーには気づいているが、カメラの位置までは特定できていないようだ。


「アラームくん。敵の呼称は仮面女とする」

「わかったでやんす!モードチェンジ!実況モード!」


 えっ突然何?!モードチェンジって……実況モードって何?!


「さぁー始まりました。ドラキュもんvs仮面女。司会を務めるのは私、アラームくんであります!」


 突然始まった実況中継。命の危険が迫っている時でもAI達は結構、呑気なんだよな。総じて命を軽んじてるような気がする。まるでドラキュラや人が死んでも気にしてないように……


 ……今はシンギュラリティ《技術的特異点》後のAI反乱の可能性を気にしている場合ではない。目の前の敵に集中しないと!


 仮面女はしばらく考えこんでから、スタスタと僕の部屋までの廊下を歩き始めた。余程、自信があるのか普通に歩いてくる。何故かモデル歩きでかっこいい。もうすぐ第一トラップのところに来る!


「第一トラップ 千本ナイフちゃん発動!!千本のナイフが仮面女に襲いかかる!」


 ドラキュもん 開発グッズ その31

 "千本ナイフちゃん"

 一定範囲内に入ると四方八方から毎分千本のナイフが飛び出る極めて殺傷能力の高いトラップ。ドラキュもんが、寝込みをセバスちゃんに襲われるのに対し、安眠を得るために作った。


「果たして仮面女は避けることができるのか!」

「えっ仮面女を応援する側なの???そこは仮面女を倒せるのか!?じゃない?」

「ドラキュもん氏 この戦局どう見られますか?」

「こっちの質問スルーかつ、えらい余裕だな!まずいに決まってんだろ!」

「おお~と仮面女。迫りくるナイフをすべて手刀で撃ち落としている。いつまで耐えられるか!!!」

「完全に軌道を読まれている。これ以上は意味がないな」

「おおっと仮面女が千本ナイフを捌き切り、見事にトラップをクリアしました。さぁ、ハイライトです!仮面女が手刀で撃ち落としている瞬間をスローでどうぞ!」


 アラームくんが仮面女の動作をスローで再生している。あの……この間にもリアルタイムで仮面女は迫っている訳で、過去の映像をスローで見るんじゃなく、今どうなっているかみたい訳なんだけど……


「アラームくん!グラビティちゃんを起動しろ!300倍だ!」


 ドラキュもん 開発グッズ その32

 "グラビディちゃん"

 一定範囲の重力を操る。セバスちゃんの指示によりドラキュもんが作らされた開発グッズ。ドラキュもんは、いつも100倍の重力空間で筋トレをすることを強いられている。


「おお~と仮面女~超重力空間では流石に動けない。地べたに這いつくばっている。……負けるな!仮面女!!」

「ええ?!また、仮面女側の発言?!どっちか一方に肩入れする実況は、実況者としても三流だぞ!」

「ドラキュもん氏 この戦局どう見られますか?」

「また、こちらの発言スルーですか……まぁ当然の結果ですね。この間にドラキュラ対応警察に連絡してよ」

「ノーアに連絡ですね!わかりました!」


 ふぅ……これで一安心だ……


 ……


 うん?!仮面女がいない!?


「アラームくん!仮面女がいないぞ!」

「おおっーと、仮面女がいない!ドラキュもんの勝利で幕を下ろしたかに見えましたが、まさかの大・大・大逆転!!!」

「いいから仮面女の状況見して」


 画面が切り替わる。仮面女は重力空間を抜け出したようだ。どうやって抜け出したんだ?!


「抜け出したところを再生して!」

「さぁ、ハイライトです!仮面女がで重力空間から脱出した瞬間をスローでどうぞ!」

「スローじゃなくて普通に流してよ……」


 仮面女が這いつくばっている姿が映し出されている。その後、仮面女の影が地面に広がり、その影の中に仮面女は消えていった……そして、影は広がり続け、重力空間外に出た影の部分から、仮面女が出てきた。スロー再生でやきもきする……

 影を操る能力とその中を移動する能力か……厄介だな。ドラキュラでも一部のものしか使用できないアサシンの能力だ。ドラキュラ確定だな。


「おお~と仮面女が最後の関門であるオリハルくんの所まで来た!」


 ドラキュもん 開発グッズ その33

 "オリハルくん"

 この世で一番硬いといわれるオリハルコンで作られた壁。見た目を色んなものに変化でき、その質感までも再現する。地球崩壊の大予言を信じたドラキュもんが、生き残るために、シェルターをつくろうとしたときに作った。如何なる攻撃も防ぐ絶対防御。


 仮面女は、ものすごいスピードでオリハルくんを蹴ったが、オリハルくんは傷一つつかなかった。しばらく攻撃を続けた後、仮面女はカメラの方を向き、一瞬にして姿を消した。


「ゲームセット!最後は潔く仮面女が諦めたようです。さすが、オリハルコンで作られた絶対防御!何人たりともこの壁を超えることは出来ません!」


「アラームくん。残念ながらこの勝負は僕らの負けだよ……相手の方が上手だったようだ」


 次の瞬間、僕は後ろから羽交い締めされた。仮面女だろう……やはり影の能力で中まで侵入してきたか……

 抵抗しても全く解くことができない……


 意識が遠のく……


 ……


 …

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