第6話 何を考えているかわからなくて恐ろしい

 無断欠勤 2日目 + 休日1日目


 清々しい朝!今日は土曜日。お休みだ!無断欠勤も2日で一旦、ストップだ!


 でも、会社からの電話が鳴ってる……リリス部長だ……休みなのに心配してくれてる……


 リリス部長優しいな。この人の期待は裏切ってはいけない気がする……電話には出ないけど……


 布団の中で僕が落ち込んでると、セバスちゃんが飛んできた。


「さぁ、土曜日のルーティン始めますよ!

  8:00 ランニング

  9:00 筋肉トレーニング

  9:30 勉強

  11:00 筋肉トレーニング

  11:30 終了

 で進めるので!いいですか!マスター」

「はーい」


 どっちがマスターなのか……やりたくないけど、やらないとセバスちゃん怒るからな〜AIは勝手に色々するからややこしいわ。


「朝ご飯食べてからね。ドラキュラコーンフレークの新作が出たみたいから楽しみだ」

 ドラキュラコーンフレークは、ほとんどのドラキュラが朝に食べるんだ。人間で言うご飯やパンみたいな感じ。めっちゃ美味しいんだ。


 よし!お腹もいっぱいになったし、ランニングから開始だ!


「朝の日差しは気持ちいいですね〜」

「それコウモリが言うと違和感あるよ」


 僕もドラキュラだから少しダルい。昔のドラキュラは、朝日を浴びると消滅とかしていたらしいけど、ドラキュラは進化していて、今は少し調子が悪くなるぐらいらしい。このダルさが、眠いのか朝日のせいか僕には違いがわからないけど……


 っ!! 誰か僕の後をつけている……誰だ……


「セバスちゃん。僕の後をつけている人がいる。今から路地裏に入るから、そこで挟み撃ちだ」

「マスターわかりました。このセバスちゃん。マスターの成長が、大変うれしいです。寝ているときに何度も命を狙った甲斐がありました」

「AIの反乱が始まったと思うから、本当にやめてね……僕はなによりセバスちゃん。君が何を考えているかわからなくて恐ろしいよ」


 そう言いながら、その場にセバスちゃんを残し、僕は路地裏に入った。よし!挟み撃ちだ。


「誰だ!」


 振り返った瞬間、素早い影が動き、一瞬にして、僕の喉にナイフが突きつけられる。あ~これ死ぬやつだ……まだ、彼女も出来たことないのに……


「マスター!」


 その声が聞こえると共に、何かがものすごいスピードで、僕の腹にぶつかってきた。セバスちゃんだ。めっちゃ痛い。なんで僕を突き飛ばすんだよ。攻撃してきた相手を突き飛ばせよ……


「ちっ邪魔が入ったか」


 女性の声だ。どこかで聞いたことがあるような気がする……でも、不気味な仮面をつけていて、正体はわからない。まずは、セバスちゃんに攻撃させ、様子をみるか……


「セバスちゃん!その女を攻撃しろ!」

「断じて否!女性に手をあげるなど、紳士協定に違反する!」

「えっ!まじで?!僕、殺されそうになってるんですけど……君のマスター殺されちゃうよ!」

「……」


 セバスちゃんは手上げてヤレヤレといった感じのポーズをしている。こっちがヤレヤレやわ!!

 くそう!紳士協定バカはほっといて僕が戦うしかない!臨戦態勢に入ろうとするその時!!!


セバスちゃんが立ちはだかった。


「マスター。女性に手をあげるなど、紳士にあるまじき行為。このセバスちゃん断じて許しません!」


 え~~~困る~~~このコウモリ困る~~~死んで~~~今すぐ死んで~~~

 こうなったセバスちゃんは、絶対に僕のいうことを聞かない。


 しかたない。こうゆうときは、逃げるに限る。


「透明マントくん!きて!」


 僕の声と共にどこからともなく透明マントくんがやってきた。呼んだらくるけど、いつもどこにいるかわかんないんだよな……


 ドラキュもん 開発グッズ その80

 "透明マントくん"

 名前のとおり透明になるマント。ドラキュもんがお風呂場を覗くために開発した。毎回、セバスちゃんに邪魔され、成功したことはない。透明マントくんもAIを積んでいるが無口。ムッツリスケべの可能性あり。


 僕は透明マントくんを羽織って逃げ出した。このとき実験室でシオンのシャワータイムにこのマントを使うことを思いついた。今度、試してみよう。あそこのセキュリティならセバスちゃんも入ってこれまい……


 そんなことを考えていると家についた。僕は扉を締め、念の為、セキュリティを動作させる。


「ハァハァ。危なかった。これからは女性に襲われてもちゃんと戦ってよ!セバスちゃん」

「紳士協定違反になる。それは無理な相談だ」


 かっこつけて、チッチッチと口の前で、指を動かしてる。こいつはほんとうに腹が立つ。


「紳士的に戦うのはどう?」

「紳士的に戦う……新たな境地だ……検討してみよう……今日は非常事態が発生したため、ルーティンは以上。ゆっくり休んでよし」


 少し満足げな顔をして、セバスちゃんは、ベットのいいねちゃんの隣に戻って停止した。止まっていれば可愛いぬいぐるみみたいなんだけどな。


 ふぅ〜ルーティンが終わって良かった。


 それにしても、なんで僕は殺されかけたんだろう……思い当たることなんてないんだけどな。


「緊急アラーム発令!これは訓練ではない。繰り返す!これは訓練ではない!」


 今度は何!?アラームくんが鳴っている!


 ドラキュもん 開発グッズ その30

 "アラームくん"

 設定した範囲内に怪しい動きを検知した場合、アラームを出す装置。検知した対象をスマホで確認できる。怪しい動きかどうかはAIで検知している。

 ドラキュもんが、周りに知られたくないようなことをする時に、人が来るのを検知するために発明した。


 家まで来るなんて、本気で僕を殺そうとしている……セバスちゃんは充電中か…充電中に起こすと怒るんだよな……まぁこの部屋のドアにたどり着くまでに、開発したセキュリティを配置しているから大丈夫だと思うけど……


どんなやつか確認する必要はあるな。


「アラームくん!検知した対象を出して!」

「あいよ!わっかりやした!」


 僕の作ったAI達はなぜ、変な言葉遣いが多いんだろう……そう思いながら僕は対象を確認する。


 ……いない!!


「対象がいないぞ!」

「わっしにもわかんねぇ。一瞬、検知したんでやんすが、逆にそれを察したようで、以降は検知できねぇ。かなりの手練でやんす」


くそうっ敵に攻められている……


こうなったら、得意の引きこもり作戦だ!

この部屋に入れるものなら入ってみろ!


「オペレーション・ヒキコモリ……レディスタート」


かっこよく言ってみたものの、誰の反応もなく、ただその言葉は、室内に少し響いただけであった……

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