第12話 お嬢様と僕の会話

 夏休みが終わる。

 まだ塾のクーラーは壊れたままらしい。一体何をしているのだ。おかげで今日も高子たちと勉強会だった。場所は高子の家。別荘ではない。

 黒子、大理、春美の3人は帰ったが、僕は高子に残るように言われて残っていた。

 今は目の前の高子が話し出すのを待っている。

「……私は、理比斗が羨ましかった。幼稚園の頃、理比斗が自らの手で作り出した物で人を笑顔にしている事が羨ましかった」

「え、僕の事そんな時から知ってたの?」

「ええ。本当は調べたというより知ってたの」

 そうだったのか。どおりでつけ回されてる感覚が一度もなかった訳だ。

「でも、私の手では何をやっても駄目だった」

「そんな事ないと思うけど」

「そう?」

「そうさ、こうして僕たちを集めているじゃないか」

「それは、私が何もできないからで」

「僕は高子のように人を集める事はできないよ。別に個性は人それぞれだろ?」

「でも、私は」

「別にできない事も全部自分でやる必要はないさ。人に頼むのも能力だろ?」

「ふふふ。そうね。そんなものね」

「だろ?」

「馬鹿みたい。こうして話せばすぐ解決したのかな」

「そうだよ。悩みなんて一人で解決する必要はないんだ」

「私の個性は人を集める事だったんだね」

「そうだな」

「ありがとう。でも、ここからが本題よ」

 僕は頷いた。

「これからも一緒にいてほしい」

 なんだ。そんな事か。

「いいよ」

 できる限り素早く答えた。

「いいのね? 本当ね? 後悔しても知らないわよ」

「もちろん。後悔したら後悔を後悔じゃなくすだけさ。少し前の僕なら同じ速さで断っていただろうけどね」

「そうね。あなたは我が強いもの」

「そうかな?」

「よく言われない?」

「言われないな」

「そう。じゃきっと私の勘違いだわ」


 僕は自称発明家だった。

 高子のおかげで発明家になれた。そう自称が取れたのだ。他人からも発明家と言ってもらえるようになったのだ。

 だから僕は、今日も高子の部下として発明をしている。少しでも発明で皆の役に立つために。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

発明少年とお嬢様のスカウト 川野マグロ(マグローK) @magurok

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ