昔話 その5

 太陽が沈む

 夕暮れ

 茜色/紺色

 向き合う/視線/合う

 手に持つ銃/向けあう


 ベツレヘムの星について話すイクソス/まっすぐに見つめる/約束を果たす


「お前がはじめから裏切っていたとしたら辻褄が合う、お前は一番はじめに遺産を手にした」

「うん。したねぇ」

「ガルムが裏切ったとしても、あんなにもはやく俺たちの場所がわかるか?」

「さぁ」

「もう一人、誘導したやつがいたんだ」

「それが僕だと? ナナやルナ、終は?」

「裏切り者は最後まで死なない。俺はあいつらの血を飲んだ。だからわかる」

「そっか」

「お前だな」

「そうだよ」


 笑う


「君のことをみんな信頼して盲目的に心のよりどころにしていた。だからこそ、君に近い者の裏切りならばみんなわからないと踏んだ。

 僕が裏切ったのは、この作戦を言い渡された日、上部から呼び出されてねぇ。遺産回収後、この部隊の消滅。なんといっても非人道的な実験を繰り返してきたから、このまま帰られてはまずいと上部は思ったんだ。

 だから遺産を手に入れたあと、全員殺せと言われた。けど僕一人だと荷が重いからさ、ほしいってやつを引き寄せた」

「……よかった」

 イクソスが笑う

「お前を殺すことになんらためらいがなくなった」

 引き金をひく

 動く

「っ」

 血の喪失による動きの鈍さ

 回避/楽勝

 撃たれた弾丸/外れ

「血を失い過ぎだよ、イクソス」

 首にナイフを突きつける。

 睨む

 イクソスの銃がユキサキ/胸を撃つ


 0.1秒ロス


 立ち上がる双方

 イクソスの手に血色の銃剣

 ユキサキの手に鈍色のナイフ


 接近/防ぐ/弾く/突く/払う/足払い/倒れる/のしかかる/ナイフを下ろす

 これで終わり

「ブランカっ」

 叫ぶイクソス

 赤い弾丸/貫く/ユキサキ/脳

「っ!」

 脳漿ぶちまけ

 倒れる

 視界/真っ赤

 脳、多少の損傷/回復……回復

「外れても、弾が俺の血なら俺の命令を聞く。こういうときバケモノでよかったよ。奥の手でお前を殺せる」

「弾丸、ぜんぶ、君の血? そんな血なんてもう」

 ないはず。

 計算/終の死後/血を喪失しすぎたイクソス/もう力は使えない

「俺は終の血を飲んだ、ナナ、ルナも。……あいつらの血で弾丸一つくらい作れるのさ。お前が裏切った全員の血のせいで、お前は負けたんだ」

 喪失/絆

 イクソスの掴んだもの/復讐/弾丸

「は、ははは、なかなかやるなぁ」

 脳損傷/回復

 否

 脳損傷/過去/再生に、し、か、--ずきない

 脳/蘇生/不完全/

 現在取得/喪失

 言葉/喪失

 イクソス/喪失

 停止/再生


 声


「その程度の傷なら脳であっても死なないだろう? お前の血を俺は吸わない。ここで殺したりもしない。お前は永遠にさ迷え

 いつか死んだとき……ベツレヘムの星の咲く場所で待っている」

 立ち去る音

 視界/闇

 雨/粒



 雨粒

 いくつもの/雨粒/スコール

 血

 汗

 命

 全部/流す/雨/音


 視界/開く

 青空

 カルタゴ/空

 イクソス/瞳

 視界/滲む/滴る/液体



 カルタゴ/空/ベツレヘムの星/喪失――イクソス/君/与えた/すべて/喪失



 いつか/そこへ/至る

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