外伝〜《勇者(偽)と勇者(真)その4》モブ、モテ期に入る〜

なんだかんだあったが、無事夜になり、俺は街を出歩く。当然この前同様に《隠密インビジブル》を使って歩いていた。

金はある。王様に口封じも含めていっぱい貰ったしな! こう言う使うべきところではパーっと使うべきでしょう!

いっそのこと、店一軒を貸し切り状態にしてハーレムもしてみたいな! やっぱ男の夢でしょ! ぐへへっ、胸が2つ、4つ、6つ、etc……最高か!?


「で、こんな時間にどこにいくのですかモブさん?」


「当然夜の街に決まってんじゃん! 店一軒を借りてハーレムハーレム! 童貞も卒業できて、これで俺もロリコン扱いも無くなるし一石二鳥!」


そこで俺は気がついた。今、俺は《隠密》を発動中。なのに何故声をかけられたのか? まず第一、掛けられた声には思いっきり聞き覚えがある。

首を壊れた機械のようにギギギと動かして後ろを向くと……。


「……と言う冗談、面白いですかアリアさん?」


鬼の形相のアリアさんがいた。


「ごめんなさい冗談なんです! 本当にただの出来心なんです! お願いだから許してください!」


俺はアリアさんに首根っこを掴まれ、ずるずると引きづられていた。


「モブさん、少し黙っててください。不愉快です」


アリアさんがいつもより冷たい!? でもさぁ! 俺もムラムラを邪魔されてムシャクシャしてんだよ! ここは言いたいことを言わせてもらおう!


「ふざけるな……でください! 俺だって我慢の限界なんですよ! 毎晩毎晩美少女のエミーリオと美女のアリアさんにベッド一緒に入られて、しかもエミーリオには抱きつかれてるんですよ! それで何もできないなんて生殺しですよ(ロリコンではないがドキドキする)!? 俺がこんなの行動に出るのも、全てアリアさんの胸と行動のせいです(暴論)!!! 責任とってその胸で慰めてくださいよ!!! それが無理ならせめて夜の街で童貞卒業させてくれぇぇぇぇぇっ!」


ふぅ、言いたいことは言い切ったぞ! これは絶対にアリアさんに殺されるだろう。だが、悔いはない。

ちなみにモブのロリコン疑惑(確信)は身長140センチほどで巨乳のアリアさんが発端なのだが、モブはそのことを知らない。


「「……」」


ふむ、アリアさんは黙ったまんまだ。俺はすぐ殴られると思っていたので目を瞑っていたが、今どんな顔をしているのだろう。どうせ般若だろうな。


「……あ、アリアさん? どうしたんですかアリアさ〜ん?」


目を開けると、アリアさんは後ろを向いて蹲りながら、顔を両手で押さえていた。てっきり殴られるかと思ったが……。何をしているんだ?


「……よしっ!」


アリアさんが両腕でガッツポーズを決めたと思ったら急に立ち上がり、俺の手を掴む。その顔は見間違いのないほど赤く染まっていた。

そしてテンパっていることが分かるほど目が泳いでいた。なんだ、何があるんだ? 関節技でも決められるのか?


「も、モモモモブさん!!!」


も、ももももぶ産? 山? ……あ、もしかして俺の名前か?


「な、なんですか?」


物理的に殺されるのか? 俺の命はここまで? ……もしそうなら、アリアさんの胸を最後に揉みた……この人、金属製の胸当てつけてるよ。くそがぁぁぁっ!


「そ、その……ですね」


な、なんだ? 口に出すのも恐ろしいほどの拷問でもするのか!?


「……良いですよ」


「……何が?」


アリアさんがプルプルと震えながら顔を真っ赤にしてこっちをみている。俺はブルブルと震えながら、顔を真っ青にしている。


「私のせいなら、私の体を自由にしても良いですよ……って言ってるんです」


……ん? どう言うことだ?


「さぁどうぞ!」


アリアさんが手に取っていた俺の手を自分の胸に押し付ける。だが金属製の胸当てに無理やり押しつけられた俺の指が胸を揉めるはずもなかった。カツンと音を立てて指が当たる。

当然、手のひらに伝わる感触は冷たく硬かった。


「ど、どうですか?」


これは一体なんの拷問だろうか? ……そうか、俺の思いを聞き、アリアさんは俺に一番有効な拷問は焦らしプレイだと考えたわけか。

と俺は考えた。実際のところアリアさんはこの時、激しく動揺していただけだった。


「か、硬いです」


「固い!? わ、私はこんな事で感じてなどいません!!!」


何を言ってるんだこの人は……。俺は直に胸を触りたかったが、こんな金属板を触りたかった訳じゃない。

……はっ、これが焦らしプレイ!? なんて凶悪な物なんだ!!!


「……あの、これは一体……?」


「聞くな! 恥ずかしいだろう!?」


アリアさんが声を荒げたので、俺は仕方なく黙る。だが、全然恥ずかしくない。丸く膨らんだ金属板触ってるだけだし。


「さ、さぁ、次はどうしたいのだ!」


アリアさんが早口で尋ねてくる。て言うか次とか言ってるけど、とりあえずやめたい。


「じゃあ、一旦落ち着きましょう」


「私は冷静だ!」


「冷静に胸当てを男に触らせる女の子がいてたまるもんですか。と言うか俺も暇じゃないので、こんな時間を過ごすのなら夜の街に行かせてくださいよ」


「わ、私との逢瀬を暇な時間扱いだと!?」


ダメだこの人話が通じない!!!


「これのどこが逢瀬ですか!?」


「私の胸を触っているだろう!?」


「曖昧な形をした金属板を触ってるんですけど!?」


「……え?」


アリアさんが改めて俺の手を見る。そして改めて俺の顔を見る。……プルプルと震えながら、顔が真っ赤に染まっていく。

やっと自分の間違いに気づいたらしい。そりゃあんだけ言い合ってて自分が間違ってたら恥ずかしいわな。


「……落ち着きましたか? それでなんでこんなことをしたのか教えてくれます? さっきも言いましたけど、夜の街に行きたいんですよ! ロリコン扱いされるのはもう懲り懲りなんです!」


と俺はアリアさんに言う。


「……はい、落ち着きました。私、おかしかったですよね」


「はい。ちょっと混乱してましたね」


よし、向こうが混乱してたから、俺がアリアさんの胸を触りたいとか言った事は覚えていないはず! だって覚えてたらすぐ殴られるはずだもん!


「で、私の胸を揉みたいでしたっけ?」


ば、バレてるぅぅぅぅぅっ!?!?!?


「いえ、そんなこと一言もーー」


「言いましたね?」


「言いましたすみませんほんの出来心なんです!」


俺は速攻で頭を下げる。……なんで俺が頭を下げてるんだ? あ、セクハラだからか。

……だが、俺のリビドーを溜めに溜めさせまくるのはセクハラとは言えないのか!? ずるいぞ! そんな大きな胸が悪いんだ!!!


「ひ、ひとまず場所を変えましょうモブさん」


あ、拷問する気だ。この人Sだもん。俺はMじゃないけど。きっと性的にこの人を見たせいだ。変なこと叫んじゃったせいだ! ……ここは、逃げるしかない!


「結構です!」


「わ、私に魅力がないからですか?」


魅力? 俺にSMの魅力なんてわかるわけないでしょう〜が!? 何聞いてんだよこの人! だがないと答えれば殺されるだろう。無いよりある方がいいに決まってる!


「めちゃくちゃあります!」


「な、ならばなぜダメなのですか?」


だめとは一言も言ってないけど!?


「お、俺には早すぎました。また日を改めましょう!」


これ完璧じゃね!? ムチで叩かれたりしなくて済むし、俺2日後には村に帰るんだし、なんだかんだでうやむやにできるはず!!!


「……ふふ、そうですね。モブさんはそういう人ですよね」


よっしゃぁぁぁっ! あんまりよく分かんないけど、なんかいける感じだ!


(モブさんはいざとなったらチキりますもんね)


なんか生暖かい目で見られてるけどよっしゃぁぁぁっ!


「それでは帰りましょうか」


「え?」


俺はアリアさんに(無理やり)部屋に戻された。夜の街ぃぃぃぃぃっ!!!!!


***


「あ、おかえり」


「ただいま」


部屋に帰ると勇者にそう言われた。

結局夜の街には行けなかったし、エミーリオはいないし、アリアさんも「私、ずっと待ってますから」とか意味わかんないこと言って今日来ないし、勇者と二人っきりとか嫌がらせかよ。


コンコン


誰だ! こんなるに俺の部屋を訪れるなんて! まさかエミーリオが事情を察して来てくれたのか!


「許可する」


この際エミーリオでも良いや。話し相手にでもなってもらえれば。勇者はそそくさとベットに下に隠れていた。ナイス!


「うっふ〜ん、まさか入れてくれるなんて〜。ありがとうね、モブ君」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!?!?!?!?」

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