失態②

ズキズキと痛む頭を押さえながら、俺は屋上から教室にも戻るため、階段を下っていた。



「なんでこんなことになったんだ……」



……先ほど、純粋無垢だと思っていた幼馴染が、突然、制服のスカートをたくし上げて来た。

しかもノーパンだったため、そのあられもない姿をバッチリと見てしまったわけで。



「違う意味でドキドキしたわマジで……」



溜息交じりにそう呟く。すると階段を降り切ったところで、ふいに横から一人の女子が現れた。



「……ばぁ」


「うわぁ!……って名取か」


「びっくりした?」



彼女は今日も眠たげな眼をこすりながら、首をかしげる。



「急にどうしたんだよ」


「たまたまここを通りかかった時に、階段の上から正幸君の声が聞こえて来たからなんか、驚かそうと思って」


「きゅ、急だね」


「……どっきり大成功?」


「お、おう」



すると、名取が突然ジーっとこちらを見つめて来た。


……この子は感情を出すのが苦手らしく、発せられる言葉も淡々としているし、表情もほとんど変わらない。


だから、真意をくみ取るのが難しい時がある。今だって、何故見つめてきているのかがあんまり分かっていない。



「どっどうしたの?」


「正幸君?」


「は、はい」


「さっき、上で何してたの?」



ジリ……と距離を詰めて来る。俺はそれから逃げるため、少し後ずさりをする。



「ねぇ、どうして逃げるの?」


「えっいや、今日はそんな気分なんだぁ。あはは……」



どんな気分やねん。


頭でそんな一人ツッコミをしていると、またもや名取が距離を詰めて来た。……しかも今度はグイッと。


俺はそれから逃げるため後ろに下がって――バンと、後ろの壁に当たってしまった。


これを好機と見たのか、名取が一気に距離を詰めて来た。……お互いの呼吸が聞こえそうなほどの距離まで。


ってか胸胸!大きいから当たってるって!



「正幸君……?」


「ひぃぃぃ……」



なんかホラーみたいだな。



「上で、何してたの?」


「そ、それはっ」



そんなの、口が裂けても言えない。幼馴染に下半身を露出されて、それを見てしまったなんて。



「そう、幼馴染に下半身を露出されて、それを見てしまったのか」


「へっ……なんで分かったの!」



新手のテレパシー使いか何かですか?



「……ずっと見てた」


「な、何を?」


「本当は、正幸君が連れて行かれたからそれを追ってたの。そしたら屋上でえっちなことしてるのが見えた」



あっそういうことか。なら大丈夫――なわけないよねっ!



「変態」


「おっ俺はなんにもしてないからなっ!?」



このままだと、あらぬ誤解をされそうだ。


何か弁明しないと……!



「……私も負けていられない」


「へ?」


「少し恥ずかしけど、正幸君のためなら」



そう言って、名取はごそごそとスカートをいじって、ポケットからスマホを取り出した。そしてその画面を俺の方に向けて来た。



「名取、お前一体何見せるんだ――」



そう言いかけて、途中で言葉が出なくなった。


何故か?そこまでして理由が知りたいか?なら教えてやろうっ!






スマホの画面に、上半身裸の名取の自撮りが映し出されてたからだ。






つまり、名取の豊満な胸がはっきりと見えるわけで。


いやぁもうね、はっきり言わせて貰うわ。






俺の青春どないなってんねん。



















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