失態③

「……どう?私のおっぱい」


「へ?」



 いや、その前にこの状況が読み込めてへんねんて。


 急に裸の自撮り見せられて、「どう?」って聞かれるシチュ、エロマンガでもそうそう見ひんでホンマ。



 俺がそう困惑していると、名取が何かを感じ取ったのか、口を開く。



「だって正幸君、たまにジロジロと私のおっぱい見てる時あったよね」


「……そっそんなことはないぞたぶん」



 嘘です。めっちゃ見てました。



「だから、見せつけようと思って」


「うーん・・・・・・?」



 なんか、イマイチ理由になってない様な気がする。



「で、どうなんですか。私のおっぱいは」



 ……凄くドキドキします。こうニヤニヤしてしまう。


 それに、正直揉んでみたい。


 けれどそんなこと本人の前で言えない


 俺は顔が歪んでしまわないように気を付けながらこう返す。



「あ、あんまりかなぁ~……」


「そう……」



 何故か残念そうに顔を伏せる名取。


 本当に良く分からない子だなぁ……。


 そう思っていながらボーっと名取を見つめていると、急に「ハッ」と顔を上げた。



「やっぱりさ……」


「ん?」






「おま〇この方が良かった?」






 ん?今何て仰いましたか?



「工藤さん、見せてたし」



 いや、見せてたけども。



「おっぱいよりおま〇この方が良かった?」


「いやどっちも良くないからっ!」



 その思考回路どうなっとん?こっちが頭おかしなるて。



「あのね名取、俺は胸とか好きだけど、こう見せつけられるのはなんか違うなって――痛!?」



 突然、頭に鈍い痛みが走った。それと同時に、後ろからドスの効いた声が聞こえて、俺は恐る恐るそちらを見やると。



「……ねぇまー君?ここで何してるのかなぁ」



 幼馴染――工藤春香が仁王立ちしていた。



「名取さんのおっぱいはどうだったのぉ~」



 こわいこわいってば!助けて名取さん!

 懇願するような表情を名取さんに向けると、ぷいってそっぽを向かれた。



 ――やばい、終わった。こうなったら逃げるしか無い。



「ごっごめん!ちょっと用事思い出したから俺行くわ!」


「ちょ、まだ話し終わってない!」



 春香の声を無視し、勢い良く立ち上がって、俺は掛けて行く。



 いやぁあぶねぇ……。死ぬかと思った……。


 これが九死に一生を得るってやつなのかな?


 まぁそんなことどうだって良い。






 誰か俺の平凡な日常を返してくれ。




 ☆☆☆




 立ち上がって、どこかに行こうとする名取さんの腕を引く。



「……なに」


「ちょっと話があるんだけど」


「嫌」


「ダメ、絶対」



 握る手に力を籠めると、逃げられないと悟ったのか名取さんはこちらを向いて、実に煩わしそうにこう吐き捨てた。



「短めにしてね――」






「お姉ちゃん」










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