第11話 反吐

カエデが去って数分後。マリウスは教室に戻り、席に座っていた。

というのも、運悪く個室は全部使用中か故障中だったのだ。


結局1人にはなれず、教室の隅で静かに読書でもしてよう。そう思ったのだが_______________


「ねえねえ、マリウスくんクリムゾンに入ったって本当??」


「カエデ先輩と付き合ってるの????」


「α型じゃなかったの????」


…こんな具合で、マリウスはクラスメイト達から質問攻めにされていた。


学校では人と関わることがほとんど0に近かった。

こんなに人に話しかけられたのは久しぶりだ。

申し訳ないが、クラスメイトと話したことなど1度もないので、彼らの名前はほとんど思い出せない。


いつも1人だった。

マリウスはやっと想像通りの青春がやってきて、心が救われたような喜びを感じた。





…そんなわけはなく。

マリウスは込み上げて来る吐き気を懸命にこらえていた。


散々邪魔者として扱ってきたくせに。

いままでずっと見下してきてたくせに。

何事も無かったかのように。

手のひら返し。

ふざけやがって。

反吐が出る。

気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。




気がつくと教室は静まり返っていた。

マリウスは自分が両手を机に叩きつけたということに気がついた。

しかしそんな自分の行動に驚く素振りを見せず、消えてしまうような静かな声で言った。


「…疲れてるんだ。できれば放っておいて欲しい。」


そんな様子を見て、クラスメイト達は口々に謝りながら去っていった。


マリウスは目をつぶり、ゆっくりと深呼吸をした。

体の震えも、吐き気も、もうだいぶ楽になった。


ただ代償として、マリウスの心に真っ黒な何かが溜まっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BLOODY WARS 俄雨 無比偉 @hitoame-napy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ