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「やぁやぁツル君、楽しんでるかーい? ヒック」


そんなノスタルジックに空を見上げていたのに、酔っ払いに絡まれた。

「うーん、満月を見上げながら飲む尾裂狐秘蔵の米ジュースは最高だねーヒック」

「肴代わりにされる月の迷惑も考えろよ」

まるで尻のようにだらしなく膨らんだ乳をプカプカ浮かべながら、ツムグはお猪口を片手に上機嫌。

「この酔っ払いめ……、ダメじゃないかモガミ、こいつの隣に居たなら酔い潰させて湯に沈めとかないと」

「その程度でどうにかなる相手とは思えませんが……」

こんな悪の科学者(マッドサイエンティスト)なんて世界の秩序と温泉の景観の為に静かにさせるが吉なのに。

それよりも……改めて見ると、ツムグの下品な乳と違ってモガミのおっぱいは素晴らしいなぁ。あの青臭いピチピチな二人と違って、程々に熟す出荷手前の柔らかそうな果実というか……つい早摘みしたくなる。

おっと、忘れてた。相手はモガミ、考えはだだ漏れだった。まぁ今更乳を抱くように隠してもそんなポーズが好きな僕を欲情させるだけなんだけど。

「ホラホラモガミっち、君も一杯いきなよーヒック」

「要りません。そもそも、私達はまだ未成年なんですよ。生徒の前で教師が、そんな模範ならぬ行動を取る筈がないでしょう」

「えー? 君はただの教育実習生だしそもそも生徒の前でおっぱい丸出しはいいんですか?」

「……湯船にタオルは厳禁ですので」

「論破されたー。あ、ツル君はいかがー?」

「のむー」

「ダメです」

「お堅いよーモガミっちー」「硬くするのは乳首だけにしろー」

「何ですかその煽りは。ジュースで我慢してて下さい」

「ちぇー。あっ、スミレー、ファンタ持って来てー」『ワフッ!』


丁度ドリンクコーナーの方にいた狐に頼み、冷え冷えのジュースを運んで来て貰う。頭に紙コップをバランス良く乗せたまま犬掻きで泳いで来る狐が何ともシュール。動画サイトに投稿したい。


「ありがとースミレ(なでなで)」

「……本当に、動物に好かれていますね鋏さんは。思えば、土着信仰の村で助けて貰った時も『熊に乗って』現れてましたね」

「金太郎かよってねー。ほら、動物ってヒト以上に相手を見抜く力持ってるから、ツル君の神性に隷属(したが)っちゃうんだろうねー」

「ハァ、君達分かってないなー。全ては愛だよ愛、ラブアンドピース。相手の目を見て接すれば相手も応えてくれるよ、熊でもね」

「一般人なら普通クマパンチでノックアウトだよーヒック。……おっ? 見れば、あそこにカサネっちとイナリっちが居るじゃーん。こっちに呼んで酌させよー、美少女の酌はさぞや美味いだろうなー、オーイ!」

「……何かされると思って警戒の眼で見てるじゃ無いですか。やめておいた方が」

「ついでにヒロイン三人を一同に介して修羅場らせるよー」

「本当にやめて下さい」

まぁツムグがモガミのそんな頼みなど聞く筈も無く、来ないなら向かうという逆転の発想でうら若き乙女達に絡みに行くツムグ。僕も嫌がるモガミを引っ張ってその集まりに合流。するとどうなる? 予想通り、ヒロイン三人は口数も少なくなり微妙な空気に。暫くはそんなギスってる空気を(僕とツムグだけが)楽しんで……

「お風呂上がりはどうしよっか? 近くにウォータースライダー付きの大型プールなんてのもあるようだけど」

「なんで風呂入った後また濡れなきゃいけな――」


『ソレ』に気付いたのは恐らく、その場でイナリと僕だけ。


僕は、朗らかな空気を切り裂くように。

十数メートル先にある男湯とを分ける竹製の仕切りの手前の大岩に向け僕は腕をヒュッと一薙ぎし、

パカリと割れた岩の奥には一人の尾裂狐の男が居て、

「グハァ!?」姿が露わになったのと同時にその顔面にイナリが投げたお猪口(ツムグ持っていた)が直撃。

酒で顔を濡らした男が倒れ、一拍置き……『キャー!!!』と一斉に、乙女達の悲鳴が木霊する。

「覗きよ!」「いい度胸してるわね!」「多分こいつは斥候よ!」「仕切りの向こうには何人もの野郎どもが待機してるって事ね!」「殺せ! 骨も遺すな!」

すぐに血の気に満ちる尾裂狐の女集。尾裂狐の女は基本男より強い。仕切りの向こうからは男達の「出来心だったんだ!」「許してくれ!」という情けない声が聞こえてくる。

何やら面白そうな事になったので、僕は仕切りの側まで近寄って一言。

「このゴミチンコどもめ、覗きはいけないんだぞ? 女の子の裸がどれだけ神聖なものかわからないの?」

「てめぇ鋏! お前がバラしたせいで!」「てかお前も男だろ!」「何普通にそっち側いるんだ!」「お前も巻き込まれろ!」

なんと醜い嫉妬の叫びだろう。すると乙女達は「鋏は例外なんだよ!」「小汚いあんたらと一緒にすんな!」「ウチらの天使を罵倒したんだ、ハイクをよめ、カイシャクしてやる」と擁護してくれた。

「ありがとうみんな! よし! 向こうにいる包茎野郎ども全員のチンコもぎ取るぞ!」

「「「おおお――ー!!!」」」

僕の扇動によって士気が最高潮になり、タオルを巻いた美人美少女美幼女達が次々に男湯の方へ乗り込んで行って……それからすぐに野郎ども悲鳴が聞こえ始めたのは言うまでもない。僕? 僕は別に行かないよ?

「やれやれ……今回は疲れを取るのが目的な慰安旅行なんだから、君も余りウチの連中を焚き付けないでくれよ」

「おや狐花さんいつの間に。それより、今回の慰安旅行は大盛り上がりで大成功だねっ」

「話聞いてたかい? 全く……アイツが居ないのに、まるでアイツが居るみたいな騒ぎだよ」

「パパンの事だね。着々とあの人のステージへと登れていってるようで嬉しい評価だっ」

「褒めてないから。言っとくけど、これ以上好き勝手すると、アイツみたいに今度からこういう所には呼ばないよ?」

「なに! そんな事したらパパンに言いつけるよ! 二人で襲撃に行ってやる!」

「それはマジに勘弁して」


今更だけど、タオル姿の狐花さんはセクシーでした。

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