18

――翌日。学園、お昼、生徒会室にて。


「ねーイナリちゃん、部活とかって入らないの? その持ち前の身体能力なら、一人で全国へと導けるんじゃない?」

「……前いた地元の学校で、助っ人でいくつかの部活に顔出したんだが……全部を全国に導いちまってな。悪目立ちするからお袋から部活禁止されてるんだよ」

「アハハッ、イナリちゃんっぽいねー」

「……。そんなわけで、今度みんなで遊びに行こうぜ?」

「え、ツルちゃん、急にどんなわけなの?」


サンドイッチを食べる手を止め、眉をひそめるカサネ。彼女の隣に座るイナリも『またなんか始まった』というような顔で見てくる。


「ハァ……私は事情知ってるけど、この子らにはイチから説明したげなさいよ鋏」


そんな偉そうに喋るのは偉そうな机と偉そうな椅子に座る偉そうな生徒会長ユエちゃんだ。昨夜の姉の話をヒロイン二人にすると「い、イチャイチャ!?」「勝手に話進めやがって……」と満更でもない様子。二人共むっつりだなぁ。


「あのよぉ……昨日も言ったが、あたしらがその、お前らの言う『惚れた腫れた』とかいう状態だって断定するには材料が少なすぎねぇか? 認めたく無い云々じゃなくって、あたしらからしてもハッキリと言えねぇんだぞ?」

「しつこいねぇイナリも。そんなの――」 


ピタリ、僕はイナリの首を抱き、


「ちょ!? な、なにを!?」

「君がそんな反応してくれるだけで、君が異世界人だかどうだか関係なく僕は満足なのさ」


それだけで、幸せな気分になれる。


「む、むぅ! 二人して仲良くてズルい! カサネもツルちゃんにムギュ!」

「……はぁ。第一あんたら始めからソファーに兄貴挟む様に座っといて何言ってんのよ」


ユエちゃんがため息を吐くのと『トントン』 生徒会室がノックされるのは同時で……


「ん? 他の役員は来ない様に言ってあったんだけど……ドウゾー」

「ばっ、今入れんな! 鋏も離せ!」「じゃあカサネにムギュー」「キャーキャー!」

「(ガチャ)……一応生徒会室なんで、あまり騒がないで下さい」


扉の先に居たのは先生モードのモガミと、「あ! かみさまー!」と叫ぶ幼女。

そう。数日前の休日、色々と関わりのあったあの幼女だ。奇遇なもので、この学園の初等部生だったらしい。


「どうしたの戸沢先生? その子が何か?」

「……ええ、まぁ。鋏さんと尾裂狐さんに、午前の授業の件でのお礼がしたい、と」

「午前って……ああ。初等部は確か授業参観でしたっけ? って、あんた達二人、なんで感謝されるような事態になってんのよ。授業ふけた?」

「あ! そうだ! 気付いたらツルちゃん教室から居なくなってたね!」

「……あたしはこいつに無理やり授業抜けさせられたんだ。一年は体育だったってのに」


「だって、外見たら金持ちそうな大人達が学園にゾロゾロ来るのが見えたんだもん。絶対面白そうなイベントあると思ったんだもん」


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