第8話 勇者ふなたびをする前半 ~ うみとせんとう


良く晴れた朝。


勇者一行は朝から出航の準備をしていた。


勇者"ああああ"を除いて。



「勇者様は何してるの!

私達が一生懸命準備しているのにっ!」


「呼んで来ます。」


そう言って、

歌人せいやが勇者"ああああ"の

ベッドルームを訪れたところ、



部屋はひどいありさまだった・・・!




船室に転がる酒瓶が2本。


飲みかけの酒瓶がテーブルの上に1本。


勇者"ああああ"はベッドから

落ちて、床で寝ていた。


未成年の勇者を見つめて、あきれながらも

声をかけた。



「勇者様、朝ですよ!

みんなで出航の準備をしているので、

早く起きてください!」


しかし、勇者からは返事が無い。



息を吸い込んで、大声で


「勇者さまぁ!!!!!

朝ですっ!!!

起きてくださいっっっ!!!!!」



ガバッ!



驚いて勇者"ああああ"は飛び起きた。



「にゃんなの?朝にゃの?

みんな無事?生きてる?」


「生きてるから、声をかけてます!

出航はもうすぐなので、起きてください!」


そう言って、歌人せいやは

持ち場に戻った。




「おはよう。勇者はどうじゃ?

起きてきそうか?」


その頃、大魔道師やんじゃが

船首のみんなが集まる場に

来ていた。



「未成年なのに、酒を飲みまくって寝てましたね。

もう出航しちゃいましょうよ。」


怒った様子で歌人せいやが言う。



「夜なべで新武器の準備も出来たので、

私は出航しても大丈夫です。

仮眠を取りますね。

新武器は船長室に置いておくので必要なら

使ってください。」


そう言って、未来人999はベッドルームに行った。



「私は早く海が見たいな!

出発しちゃいましょう。」


ヒーラーまりこが歌人せいやの肩に

両手で軽くタッチしながら言った。


2人は出航の準備で仲良くなったようだ。



「じゃあ、勇者様は放っておいて

出発しますね!レッツゴー!」


歌人せいやが船長室のレバーを踏んでハンドルを回すと、

船はゆっくりと大海原に動き出した!




・・・




天候はずっと晴れのままに


ポルトガの町が見えなくなるまで


海を数十キロは進んだ。


イシスのある砂漠がちらっと陸地に見えてきた。



ポルトガからはユーラッシャア大陸の内海を移動して、


ネクロゴンドウに続く、火山のある島に


到着する予定だ。



そうして、昼になろうとする頃に


勇者"ああああ"が起きてきた。



「うぇぇぇぇえ!

勝手に船を出すなよ!

船酔いしちゃったじゃんか!」


勇者は海に向けて、ゲロを吐いている。



「勇者様、ようやく起きてきたんですね。

酒の酔いじゃないんですか?」


あきれた様子で歌人せいやが声をかける。


が、無視して 船首に進み、


ヒーラーまりこに体ごと預けて、

両肩タッチした。



「やぁ!まりこちゃーん!

海は素晴らしいね!

良く寝れた?」


「キャッ!勇者さま、急に抱き着かないで!

モンスターが出るかもしれませんよ。油断はきんもつ!」


そう言って、ヒーラーまりこは勇者"ああああ"を

振り払った。



「まりこちゃん、そりゃ無いよー!

・・・うわっ!」


その時、急に船がゴツン!と揺れた。


まだ進んではいるが、何かにぶつかったようだ。



「これは、たぶん岩場ツムリじゃな。

船にぶつかって、穴を開けてしまう

危険なモンスターじゃ。

船の周りにいるので、でんげきのけんで

倒せるはずじゃ。」


「マジで!やってくるよ。」



さすがに船に穴が空いてはまずいと


勇者"ああああ"は船の周りを探し出した。


とりあえず、船首付近の海上に


岩場ツムリのようなモンスターが


海上に浮いて見える。



「おぇぇぇ!死ねっ!」


勇者は船首をのぞき込んで、吐きながら


でんげきのけんを天にかざした!



天から複数の雷が落ちて、


海面の岩場ツムリ数匹を一掃したようだ。


船は衝撃を感じなくなった。



「ハァハァ、気持ち悪い。

モンスターは掃除したぞぉ。」


「勇者様、ありがとう!」


「いえいえ、当然ですとも!」


ヒーラーまりこの返事に


勇者"ああああ"は顔を赤くして、


鼻をのばした。




しかし、歌人せいやが望遠鏡で


海の先を見ると、巨大なモンスターが


海上にいるようだ。



「勇者様、海上に巨大モンスターがいそうですので、

油断しないでください。」



そう声をかけても、勇者はまりこの方を見て


雑談をしていた。



そのまま船が進む・・・と



プシューッ!!



勇者の背中から大量の水が大砲のように


襲い掛かり、勇者は船長室の壁に正面から


衝突した! 15のダメージ!



「ぐはっ!いでぇよ!もう死んじゃうよ!

後は任せたよ・・・・」


勇者"ああああ"は情けなく、床に倒れこんだ。




「勇者様、近くにガトリングガンがあるので、

それで巨大イカを撃ってください!

水が届くなら、届くはずです。」


歌人せいやが声を張り上げた。



「ママ、僕が天国に行ったら、

大好きな魔牛ステーキお供えしてくれるかな?

死体を抱きしめてくれる?」


勇者は倒れこみながら、

そんなうわ言を言っている。



「勇者様、私がヒーリングするから、

立ち上がって!早く!

みんなやられちゃう!」


ヒーラーまりこが駆け寄って、

ヒーリングを唱えだした。



ハッとして、立ち上がった勇者"ああああ"は


近くのガトリングガンを構えて、


海上の正面の巨大イカに撃った!



10のダメージ! 10のダメージ! 10のダメージ!


11のダメージ! 11のダメージ! 11のダメージ!


12のダメージ! 12のダメージ! 12のダメージ!


13のダメージ! 巨大イカを倒した!



巨大イカは海に沈んでいった・・・


経験値50 100ゴールド手に入れた!




まだ距離が遠かったものの、

巨大イカを倒すことが出来た。



しかし、不満そうな顔で勇者"ああああ"は

うろうろし出した。


「ねぇぇ、未来人999!新武器どうなってんのぉ?

僕が死ぬところだったでしょぉ!」


そう叫んで、未来人999を探すも

船首付近にはいない。



ヒーラーまりこがすぐに


「未来人さんは、夜なべで新武器を作って、

すぐに寝ましたよ!

使い方はすぐわかるそうです。」



そう言って、新武器の方を指さした。


新武器の見た目は鉄の塊のような


小さな筒だ。太いヒモもついている。



勇者"ああああ"はのぞき込んだ。



「この筒の中に鉄の弾みたいのが

入っている。なんだこれ?

どう使うの?」


「さぁ、私はわからないです。」


2人で悩み込こんでも、わからないままだ。


あきらめて、船首のイスで休んだ。



疲れたのか、2人ともそのまま寝てしまった。


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