3.話し合いの内容と目的(1) ―「話し合い」と言っても様々―

 前回、話し合いが「他者の考えを知る」「自分の考えを他者に伝える」ことを学ぶ意味がある、しかしただ話し合いをすれば効果があがるとは限らないことを述べました。

 「話し合い」と一口に言っても、その目的は様々です。話し合いを主催した人(教室ならば多くは教員)はもちろん、参加者全員が何をしているのか共有できていないと、何となく何かを言うよくわからないものになります。目指すべき目的の設定が明確に示されていないため、実りなく延々と続いてしまう「話し合い」は多いです。


 話し合いの種類に公的な規定はありませんが、以下参考文献(神奈川県2004)を基に筆者が作成した区分で、おおよそどんな話し合いがあるか解説します。

(1)情報を伝達する話し合い

(2)集団の意思決定のための話し合い

(3)問題解決のための話し合い

(4)多くの考え・視点を発見する話し合い



(1)情報を伝達する話し合い

 情報を持っている人(A)から、持っていない人(B)に伝達します。Aは説明をする、Bは情報を知るためにAに質問をして、Aが回答する、という形の「話し合い」です。例えば、イベントにおける参加団体への説明会なら、主催者Aが、参加団体の代表者らBに説明することになります。

 目的はAが伝えたことをできるだけBが理解することになります。基本的にはAからBへの一方的な伝達なので、考えが広がるタイプの話し合いではありません。しかし、Aは誤解や不足がおこらないような説明、Bは自分たちの理解状況を把握し、不十分な点を質問することが求められるので、これはこれで説明や質問の力であり学習活動にもなりえます。


(2)集団の意思決定のための話し合い

 集団で何かを行う際に、何をするかや役割分担などを決定します。例えば、文化祭で何をするか、といったものです。この際、費用・場所・時間・労力といった条件や環境の面を含め検討することとなります。ただ、話し合いは人数と項目が多いほど時間がかかるので、細かい手順まで全て話し合いで決めればいいわけではありません。何を合意形成して、何をリーダー格だけで決めるか、何を全体に確認するかといった判断が重要になります。(リーダーの子どもの独力では難しいので、教員の手引きが必要な面もあるでしょう。)

 特に学校で気をつけるべき点は、学校行事というのは本人の意思関係なく参加することが決まっている、例えば「文化祭に参加するかしないか」は決められない点です。例えば、一般のイベントにサークルで参加する際、そのサークルに集まっている地点ですでに同じ何かをする意志を持って集まっていますし、その中でも都合等によって出る人出ない人いるでしょう。その点、クラスは行事するために集まった集団ではありません。

 そのため、当然意欲には差がありますし、目的意識はありません。話し合いが停滞する・一部の子どもに偏るといったことは、学校行事というテーマの性質ゆえ生じやすいものです。それを、話し合いが停滞した・偏ったからといって「もっと真剣に考えろ」と叱責してもあまり意味はありません。

 全員が同じ方向へ意欲的にというのは困難である、という前提に立つことが必要です。(文化祭については別に文章を記しているのでご覧いただきたいですが、)そうでない生徒に「楽しめ!」という要求は無茶です。この行事は自由意志の参加ではない点は認め、なぜこの学校行事に全員が参加するのか、学習としての意味はあらかじめ学校側・教員側から示しておく必要があります。


 なお、集団で何かを実行する途中に問題が生じていないか、意思疎通が取れているかなどを確認するための話し合いも、しばしば「中間報告」という名で行われます。改めて新しい物事を決めない場合もありますが、広い意味で「集団の意思決定」に入ります。


(3)・(4)は次回に続きます。


(第4章につづく)


【参考文献】

◆神奈川県青少年総合研修センター『青少年支援・指導者にきっと役に立つ会議・話し合いガイド』2004年

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