話し合い

1.班は苦手だが全体では話せた 「話し合い」の意味と問題

 「話し合い」、学校では毎日のように行われますが、以下のように考えるべきことはとても多い活動です。


 小中学校の頃、私は基本的にグループや班(※1)の活動が苦手でした。人と話すのが苦手だったので、グループでの「話し合い」も嫌なことが多かったです。

しかし、私は授業の中でクラス全体に発表することは、むしろ積極的に行う場面もありました。「話すのが苦手なのでは?」と疑問に思われる方も多いでしょうが、共感される方もいるのではないでしょうか。

 なぜグループの話し合いはダメで、全体の話し合いなら発言できたのか。その理由は、発言をちゃんと扱ってくれる、発言する機会が守られ、発言が尊重される場だったからです。グループの中では「なにそれ?」で終わってしまう意見、そして班発表には採用されない意見も、自分が発言すれば全体に示すことができる。そして、先生がそれを意味ある意見として価値づけてくれる。

 今考えれば、クラスを発言できる環境にして、私の発言を尊重してくれた先生あってのことだったので、感謝しています。教員によっては、子どもが絞り出した発言を踏みにじってしまう場合もあるでしょう。クラスによっては、全体発表の場でも(面白いこととしてではなく)発言をバカにするような笑いが起こることや、ヤジが飛んでくることもあるかもしれません。当然、そうした態度を許さず、発言者を守る姿勢が教員には求められますが、残念ながらそうではなかった経験をした方もいると思います。


 全体での発言と異なり、グループでの話し合いは、どうしても聞く人の反応が直に返ってきます。また、複数のグループが同時に話し合いを行うので、全ての時間全ての班の聞き方・話し方を教員が見て指導や助言することはできません。教員が班を一つ一つ見て回り声かけをすることも多いですが(※2)、物理的な限界があります。そして、「グループの意見」を作る活動になると、どうしても少数派の考えは不採用となりがちです。

 もちろん、直に反応が返ってくることの良さもあります。発言をしながら、その場で反応した一言から考えが広がって、さらに深い発言ができる。これは全体よりリアクションの取りやすいグループ活動だからこそでしょう。また、グループの方が発言しやすい人もいることも確かです。

 要するに、グループにも全体にも良い点と難しい点があり、それぞれの活動から学べる点がある。ただ、グループでの話し合いばかりやっていればいいというものではない、ということが言えます。


 また、内容によっても話しやすさは随分異なります。私自身、全体では積極的に意見を述べたと言いましたが、運動会など学校行事関係の話し合いは全体でもほとんど意見しませんでした。大体は「特に意見がない」というのが理由です。

 「話し合い」と一口にいっても、内容によって難しさは随分異なります。個人個人でも、得意な内容・苦手な内容があります。そして、「意見が出ないから消極的だ」と思ったら、子どもの話す力や態度の問題ではなく、設定したテーマ自体が悪かったということもよくあります。内容によっては「話し合い」自体がふさわしくなく、文字で書いて集める方が適切ということもあります。


 以上で書いてきただけでも、「話し合い」すれば自動的に学びが生まれるほど単純ではない、とわかると思います。色々考えた上で「話し合い」活動をしている教員と、あまり考えずしている教員では、その質はかなり変わってきます。

 これは学校だけの問題ではありません。会議がダラダラ長いだけで、結局何も決まらない会社が問題になるように、あまり考えず「話し合い」を行うことは社会でもマイナスになります。

 ただ、他者と意見を交わすことは大切です。次章から、「話し合い」活動の意味と、それが狙い通り行かなくなる問題点や注意点を考えていきます。


(第2章につづく)



(※1)班とグループは言葉の意味はほぼ同じ意味です。しかし、学校では「班」を月間や年間といった長期間組む小集団を指し、その場限りなど短期間に組む「グループ」より特別な意味を付与している場合があります。クラスの中では「生活班」「学習班」、クラスを越えた範囲では「登校班」「縦割り班」といった班がよく組まれます(班の例は参考文献より) 。


(※2)これを「机間指導」(きかんしどう)といいます。


【参考文献】

◆鳥取市小教研特別活動部会「平成23年度 学級経営ハンドブック」2011年

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