文化祭

1.文化祭 中止が相次いだ2020年、改めて意味を考える

 昨年(2020年)は、感染症の影響を受けて各学校で文化祭(や学校祭)の中止が相次ぎました。LINEが高校生に行った調査によると、全体のおよそ4割が中止であったそうです(参考文献1より)。

 これに落胆した生徒、逆に安心した生徒、特に何も思わなかった生徒など様々な人がいるでしょう。なお、名称は学校ごとに様々ですが、以下より「文化祭」に統一して書いています。


 文化祭は、全国のほとんどの中学校・高校で実施されてきました。

 逆に言うと、ごく少ないが文化祭がない学校もあります。2007年と10年の中学校教員への全国調査では、いずれの年も7%は「文化祭がない」と回答としました。ちなみに、同調査では運動会は4%、合唱コンクールは10%ほどやっていないという回答でした。(参考文献2より)

 高校校長への2010年の全国調査では、文化祭を実施していないと回答したのは0.2%でした。(参考文献3より)

 つまり、中学校では9割以上、高校ではほぼ全ての学校で、何らかの文化祭が行われているということになります。


 文化祭は、原則全員が何かしらの形で参加し、教科では学べない“何らかの”大切なことを学ぶ機会として意味づけられてきました。ところが、2020年中止する学校が相次ぎました。

 感染症の状況は地域によっても異なるので、する学校としない学校と対応が分かれるのは仕方ない側面はあります。しかし、本当に教育として必要な活動ならば、中止するならば文化祭で学ぶべきだったことをどう補うのか、そうした説明は丁寧になされたのか、代替措置は検討されたのか。学校によって姿勢は随分と異なり、納得できた生徒もいれば、できなかった生徒もいるはずです。今まで大切と言ってきたのに、手のひらを返したように無くしたと感じた生徒もいるでしょう。

こうなると、元から必要だったのか、不要だったのか、という疑問が浮かんでくる人もいるでしょう。

 今回は、様々な資料に基づいて、歴史も踏まえながら文化祭の意味を考えていきます。(導入であるこの第1章は個人的経験が多く書いてあります。ご了承ください。)



 まず前提として、文化祭の内容は学校によって様々で、特に決まりはありません(2章で説明します)。また、人によって文化祭へのモチベーションは大きく異なります。


 特に高校ならば、代表的なのは食べ物の販売でしょうか。

私も模擬店の経験があり、個人的には好みではないチョコバナナを売りました。準備はかなり面倒でトラブル続発でしたが、当日は「物が売れる」という感覚が意外に楽しかった覚えがあります。


 過去に文化祭を経験された方の中には、活動の意味がよくわからなかったという方もいるでしょう。

 私の中学時代、文化祭の印象は「謎の工作」でした。よくモザイクアートづくりがあり、完成イメージも知らされぬままで、ある年は延々と指定されたマスに折り紙の切れ端を貼る作業、ある年はつまようじに色を塗り指す作業をしました。ある年はステンドグラス風の何かで、延々とカラーのセロハンを箱につける作業でした。負担はそれほど高くありませんでしたが、よくわからないまま進め、つなげて作品っぽいものができても感慨は特にありませんでした。文化祭はやたら装飾に凝る、やたら模造紙や段ボールを消費するなあ、という印象でした。

 もちろん、全員参加の作業でも、やりがいを感じられた方、素晴らしい作品が思い出に残った方も沢山いると思います。多くの人が何を目指すかしっかり共有できている場合と、ごく一部の人だけ考えて他の人はやらされる場合とでは、感じられることは大きく変わってくるでしょう。


 合唱コンクールと一緒になっていたり、演劇などが行われたりする学校もあります。私は全員で演劇などはなかったので本当に助かりました。(もしあったら、当時の私なら大変苦痛であっただろうと想像されます。)


 また、学校によって参加の度合いは様々ですが、文化系の部活動にとって重要な発表の場となります。

 私も高校の時、文化祭3~4カ月前に部活中に見回りしていた校長に声をかけられた時に少し話したのですが、文化祭当日、展示場に来た校長がそのことを覚えていて「これがあの時の作品かな」と話されたことが印象に残っています。全体的に勉強してればいいという雰囲気漂う学校の中、教員の中で唯一自分たちの活動を評価してくれたのが校長だった、というのもあり印象に強く残り、その校長先生には感謝しています。

 もちろん、文化部の人の中にも、見てもらうことが目的なんかではないとか、もっとちゃんと評価がされる場の方が大事だとか、文化祭へのモチベーションは様々でしょう。


 個人によっても、学校によっても、教科の授業よりも大きな差異が文化祭では生まれます。これほど違いが生まれる活動でありながら、文化祭は授業と同じく学校の「正規の活動」として行われています。ある意味とても異質です。

 次の章から、どうしてこのような性質を持つようになったのか見ていきます。


(第2章へつづく)


【参考文献】

1. LINEリサーチノート(2020年10月26日)「高校生の文化祭事情」2020年度の開催状況は?

https://research-platform.line.me/archives/36292208.html

2.ベネッセ教育総合研究所『第5回学習指導基本調査(小学校・中学校版)』2010年

https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3243

3.ベネッセ教育総合研究所『第5回学習指導基本調査(高校版)』2010年

https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=3245


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