5.役割意識 仕事ができなければ、クラスにいる権利がないのか


 もう一つ、係活動をする良い点として、役割意識を与えることで自信をつけたりやる気を高めたりする効果がある、と考える教員は多いです。

 役割意識とは、その集団の中で自分にはこんな役割がある、自分はこんな仕事で仲間の役にたっている、という意識です。もっと極端に言うと、自分は役立たずじゃなくて、自分がいることにはこんな意味があるぞ、ということです。

 以下の引用のように、係活動はクラスの役に立ったという実感を得る機会としても考えられています。


特別活動の中核は「学級活動」であるといわれている。学級活動での活動経験が学校全体での活動や児童会活動に向けての自信となるばかりでなく、学級での係活動や当番活動の経験は児童にとっては存在感や自己有用感・効力感を直接的に感じられるよい機会である。実際に、学級で係活動や当番活動に生き生きと取り組んでいる児童は、自分自身に自信をもち交友関係も良好であることが多い。なぜなら、学級の一員として自分が必要とされている実感や仲間と協力して活動する充実感や楽しさを感じることができるからである。

(参考文献p.22-23より引用)


 しかし、大切なこととして、何か役に立つ仕事しないと学校やクラスに居てはいけない、ということはありません。

 どんなに不器用だろうとのろまだろうと、全ての子どもには教科の内容はもちろん(集団での過ごし方を含めて)学習する権利があり、学習の場にいることが認められなければいけません。

 もちろん、他者の学習を妨害するような言動には適切な指導が必要です。他の子どもの権利を守るため、また加害者への適切な指導のために集団から放すこともありえます。

 しかし、集団のためになることがうまくできなかったから、学ぶ集団にいる権利を剥奪するというのは、明らかに学ぶ権利の侵害です。

 何か係がなくても、その子は一生懸命クラスで過ごしたり勉強したりしているのです。それは学校に通う上で、十分立派なことです。

 もちろん、純粋にやりがいになっていれば意味はありますが、係活動がプレッシャーに感じられ、本来の授業や活動を妨げる状況になると本末転倒です。


(6.自分たちの係 ~学校での自主性の呪縛~ につづく)



【参考文献】

佐藤洋一・西尾一「特別活動の指導法における「三つの視点」と学級活動 ―係活動の再構築による資質・能力の育成―」『名古屋学芸大学 教養・学際編・研究紀要』16、p.21-33、2020年

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