第5話 支払い

風呂から上がると沙穂がちゃぶ台の前に座って律儀に待っていた。

俺は.....湯気を上げながら.....その姿を見る。

そして.....目線をバッグに向けた。

つまり沙穂のバッグだ。


「.....沙穂。聞いても良いか」


「.....はい?何でしょう」


「.....高校はどうした」


その言葉に.....沙穂は見開いて.....視線を彷徨わせた。

そして、それを聞いてどうするんですか?、と言ってくる。

隠しているのか何なのか分からないがこれは聞くに重要だと思う。

思いつつバッグを指差す。


「.....辞めたのか」


「.....そんな事はどうでも良い.....」


「駄目だ。今話してもらおう。.....高校はどうしたんだ」


ジョーク混じりだった沙穂だったが。

立ち上がった。

そして俺を真っ直ぐに見据える。

腕に手を添えながら.....目線を逸らした。


「.....辞めたって言ったら.....どうします」


「.....どうもしない。ただ.....俺の親がもし辞めさせたなら.....謝りたい」


「.....!」


正直に言っちまうと。

俺の親は.....学級費すらパクる奴だったのだ。

皆んなの学級費を、だ。

そして捕まりそうになっていたのだ。

だからそんな事もなきにしもあらずなのだ。


「.....学校は辞めました。私が自分の意思で、です。決して.....小五郎さんの親の方々せいじゃ有りません」


「.....だったら良いが。まだ質問して良いか」


「はい」


「.....お前は学校に行きたいのか」


行きたいです。

でもご迷惑をお掛けしますから.....今は良いです。

そして準備したいです。

色々と気持ちの、です、と沙穂は言う。

俺は、なら良いが、と言葉を区切る。


「.....それはそうと.....悩んだんですけど、突然押しかけた挙句に何も恩返ししていませんよね。私」


「.....それがどうした」


「.....私とエッチしませんか」


「.....は?」


赤面で.....沙穂がそう.....って何?

俺は見開いて沙穂を見る。

沙穂は服を脱ぎ始めた。

嘘だろコイツ!


「沙穂!やめろ!」


白いブラジャーとかが露わになる。

コイツ何を考えてんだ!

思いながら.....脱いだ服を渡す。

沙穂は.....震えていた。


「.....だってここまでしてもらって恩返しが出来ないなんて嫌です。悩みましたよ?悩んだんですけど今出来るのはこれぐらい.....!.....私の体なら.....!」


「.....!」


流石にこれはと思って。

沙穂を優しく平手打ちした。

驚愕する沙穂。

痛みは無い筈だが.....かなり精神面に効いた様だ。

俺は、馬鹿か!、と怒鳴る。


「甘いんだよ考えが!何でそうなるんだ!」


「だって私.....何も小五郎さんに恩返しが.....!」


「.....ハァ.....ったく」


いきなりでびびった。

考えながら.....上半身裸に近い沙穂に服を被せる。

そして、良いか、と俺は沙穂に言い聞かせた。

それから.....向く。


「.....俺の親のせいだ。だからお前が何かを払う必要は無いんだ。だから落ち着いてくれ。俺の為にと思っているのならその考えは捨てろ。お前は.....未成年なんだから」


「.....小五郎さん.....」


「.....お前は大人じゃ無いんだ」


「.....はい.....」


服を受け取って.....着る沙穂。

それを見てからゆっくりと笑みを浮かべた。

そんな事はもう忘れてから.....飯食おう。

と言い聞かせる。


「.....小五郎さん」


「.....何だ」


「.....貴方に出会って良かったです」


ニコッと笑みを浮かべて.....対面に腰掛けた沙穂。

そして.....涙を浮かべて拭った。

俺はティッシュを渡す。

それを受け取った、沙穂。


「.....こんなに優しい人に出会ったのは.....小五郎さんのご両親以来、久々ですから」


「.....あんなクズを優しいと認めるのが有難い。仮にも有難うな」


「.....当たり前の事です。あはは」


そして俺達は手を合わせて。

いただきます、と言いながら.....食べた。

因みに今日の夕飯は.....焼きそばだ。

擬じゃなくて.....マジな感じの焼きそばだ。

相変わらず料理上手だな.....。



さて、沙穂が来てから.....家が華やかになった気がする。

俺は.....思いながら.....土曜日。

どうするか考えていた。

そして思い付く。


「.....沙穂。服を買いに行くぞ」


「.....え?そんな.....良いですよ」


「.....お前の服って制服とかばかりだろ。それは如何なものかと思う」


「.....でもお金を無駄に.....」


何処が無駄なのか。

と俺は言いながら.....沙穂を見る。

沙穂は.....困惑しながら居たのでその手を握る。

そして言い聞かせた。


「.....当たり前の事をしているだけだ」


「.....それ私の台詞です.....」


「.....ハハハ。まぁ良いじゃ無いか」


そして買い物に行く事になり。

俺達はアパートから外にで.....た。

その人物を見るなり思いっきり見開く。

そこに.....驚愕した眼差しの.....皆野が立っていたから。


「.....え.....?」


「.....」


ちょっと待って.....え?

という感じで目を丸くしている、皆野。

缶ビールを持っている。


宅飲みするつもりだった様だが.....。

俺は.....愕然とした。

何故、皆野がこの場所に?

と思いながら、だ。

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