心にざらっと残る、様々な人の人生と死生観

正直なところ「ほんの少し描写がくどくて疲れるかも……」と思う部分はあれど、そんな重苦しさや独白のような文章、そして思い悩む人の心を表しているような表現力は舌を巻くものがあります。
どうしてこんなに様々な人の人生を丁寧に書けるのか――と。

他作品を拝見させて頂いた時も感じた「その世界に入り込めるような、そんな没入感」は今作でもしっかりとあり、登場人物達の人生の一部は現実から切り取られたような生々しさもあります。
また彼らが考える「死」に対する考え方――登場人物の考えは、ストーリーを見てる時に同じ状況や、ふとした状況の時に「考えた事がある人なら思い当たる瞬間があるかもしれない」と感じさせてくれます。

個人的に好きな子達は冒頭、そしてラストの兄弟ですが、この子達も決して報われる訳ではありません。
そんな不平等かつ残酷にも思える作品にも関わらず、ある種の切なさや美しさも含んでいる作品だと思います。

その他のおすすめレビュー

納人拓也さんの他のおすすめレビュー4