錬金術師のぎゅうぎゅうな棚から、良質な世界観の香り漂う作品。

企画で「背景描写に力の籠った作品が見てみたい」と募集したところ、ご参加して頂いた縁で拝見し、まだ「第1話 風信鳥」を読み終わったばかりなのですが……
表から裏まで創られていそうな世界と、文学小説的な整った文章、細かな人物描写、煌びやかな練術師が扱う素材の数々……ページを開き「おっ」と思って読み進め、終わった瞬間に「これぞファンタジーの錬金術やー!」と某グルメな発言が飛び出しそうになりました(笑)

ストーリーは錬金術師のテュエンと、背中に翼の生えた有翼人種レムファクタ(通称:レム)が有名なリュート弾きから依頼をされる所から始まります。
「奇跡に近い事を起こさなければならない依頼」に、相手を思いやるがゆえに悩み苦しむテュエンとそんなテュエンの自称弟子を名乗り、助けたいと願うレム、二人の言い争いの中に割って入るテュエンの親友のクルト含めて、キャラクターの町での生活まで描いてあり、個人的にちょっと描写が緻密過ぎるかと思う部分もありましたが……それでも求めていた以上の文章で、大変満足です。

登場人物の優しさと、その想いがゆえのすれ違っていく依頼の行方は……?

王道的なファンタジーを楽しみたい方にお勧めできる作品だと思います。ぜひ!