題詠1-10(罠・こと・楽譜・日記・白衣・カメラ・いびつ・幻・ゲーム・雀・海岸線・象・体育・最大・木)


1「罠」「こと」

 高架下レンズ煌めく午前2時 君の眼鏡はわなだってこと?



2「楽譜」「日記」

 「楽譜ね?」と日記を手繰たぐる白い指 君の眼鏡は僕の手の中



3「白衣」

 顕微鏡をさらりと撫でる黒い髪 白衣の胸ポケットには眼鏡



4「カメラ」

 君の眼鏡とソビエト生まれのファインダーがかちりと触れて僕は幕の中

 


5「いびつ」「幻」

 青い火に君の眼鏡は融けてゆき いびつに笑う僕は幻



6「ゲーム」

 助手席の僕と賭けてよ眼鏡を取って時速何キロ出せるかゲーム



7「雀」

 眼鏡のまま眠りし君のまだ濡れた頬に夜明けと雀の歌を

 


8「海岸線」「象」

 波に消える砂の象形文字だから君の眼鏡の奥は読めない



9「体育」

 ゼロ秒後ジャージの君は宙を舞い赤い眼鏡が弾けて飛んだ



10「最大」「木」

 百八ひゃくやっつ響いて寒き東大寺 いもが眼鏡に篝火かがりびゆし

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