コワレバコ

 木之瀬蘭子の元に、届け物があった。差出人は不明。

小さな段ボールに入っていたのは、寄せ木細工のカラクリ箱。

しかし蘭子が、手に取ろうとすると破裂して、

中に入っていた液体で、蘭子は真っ赤になってしまった。


「またコワレバコですか」


蘭子の住むアパートに送られてくる触ろうとすると破壊される箱。

彼女は勝手に「コワレバコ」と名付けていて、この日で七個目であった。


 蘭子は慣れていて、住み込みのメイドに箱の片づけを頼んだ後、

シャワーを浴びて体を洗いつつ、服を着替えた。

その後は何事もなかった。


 そして数日後、学校に来ると蘭子の下駄箱に寄せ木細工のカラクリ箱があって、

蘭子が上靴を取ろうと、扉を開け箱に気づいた時、


「あっ……」


気づくとすぐに破裂して、飛び出した液体で蘭子は真っ赤になった。


「大丈夫ですか!蘭子さま!」


と彼女の取り巻き連中が声をかけてくる。


「ええ、またコワレバコですわ。まさか学校にまでおかれているとは」


蘭子が真っ赤になったので、ちょっとした騒ぎになるが、

それを聞きつけて、女教師がやってきた。


「なんの騒ぎなの……木之瀬さん大丈夫」

「心配いりませんわ」


と言って事情を説明する。


「悪質ないたずらね。とりあえず木之瀬さんに着替えを……」


と言いかけてコワレバコの残骸を見て血相を変える。


 その後、女教師は、他の教師を呼んできて、教員たちの様子がおかしくなった後、

事情の説明なく、その日、学校は突然の休校となった。

そして生徒が帰った後、チャラついていそうなイケメンがやってきた。

そのチャラ男は、教員から事情を聴いた後、

まだ片付けていない蘭子の下駄箱を見て印を組むと、


「特に問題はないね。片づけちゃってもいいよ」


チャラ男の様子を教員たちは見ていたが、その言葉に安堵しつつ、

教員たちは残骸を片付ける。

しかし女教師は心配そうで、不信感を抱いているように。


「本当に、大丈夫なの?」

「『箱』は自壊し、無力化されてる。

強力な呪い返しが起きて、自分で自分を呪ってしまったんだな」

「どうして」

「木之瀬蘭子が強力な呪殺耐性が、あるんだろう

無力化どころか跳ね返すくらいのな」


毎回箱が壊れていたのは、反された呪いによる自壊。


「あれは、『箱』の中でも最も強力なやつだ。

それを自壊させるとは恐れ入ったよ。

まあ彼女や学校には影響はないだろうが、強力な『箱』だから、

送った奴はただじゃ済まないだろうな」


以降、蘭子のもとにコワレバコは送られてくることはなかった。

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木之瀬蘭子の怪異譚 岡島 @okajima

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